精悍さを増したスタイルと確実に進化した足回り
「ボバー」というスタイルはカスタムの1ジャンルだが、今では各メーカーが純正でそうしたカスタムスタイルのモデルを展開している。今回試乗する、トライアンフのボンネビル・ボバーもそんな1台だ。
このボンネビル・ボバーは見ての通り、かなり濃厚なカスタムルックを大きな魅力にしている。加えて、エンジンのテイストも濃厚で、走りも魅力のひとつ。
スタイルは1940年代のバイクのようなクラシカルな雰囲気。シンプルなサドルシートにむき出しのスイングアームで、まるでリジッドサスのように演出している。今回の「ブラック」は新たに加わった上級グレードで、メカ部分をブラックアウト、装備も充実させて、本来の魅力に磨きをかけている。
エンジンは270度クランクの1200㏄。基本的にはボンネビルT120系のものだが、マフラーのサウンドは荒々しさと深みを兼ね備えた歯切れのいい音質。T120より粘りのある低速域が特徴で、生き物のような表情で応答する低速パルスもある。
4速だと50㎞/h、5速なら55㎞/h、6速なら60㎞/hあたりから加速をすると、そんなパルスを味わいながら淀みない加速ができる。しかも瞬発力は強烈。車重の軽い1・2リッターのクルーザーだ。速さも想像できるだろう。Vツインよりも「ツインらしい」バーチカルツインなのだ。
このパワーフィールとルックスがキャラクターのメインとなるパートだ。だが、それだけを味わうためにヤセ我慢して走るバイクではなく、基本性能もしっかりとしている。
車高を落とすためにサストラベルが短い分、大きなギャップではフロントが突き上げられることもあるが、そうなるまでは十分に快適だし、リアは意外に衝撃を伝えない。コーナリング性能を云々するバイクではないが、安定感優先の素直な応答を見せる。
今回、フォークが6㎜ほど太くなって、フロントのブレーキローターもダブルになった。フォークの太さは大きな凸凹で突き上げられた時の落ち着き易さにも貢献していて、かなり節度も増している。ブレーキはいつでもロックできるほど力強くなった。ABSを備えているので安心だが、スタンダードより確実に、よく止まるようになっている。
精悍さを増したスタイル、そして確実に進化した足回り。今回の「ブラック」は、さらに粋で面白いバイクに進化している。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:NA×760×1025㎜
ホイールベース/最低地上高:1510㎜/NA
シート高/車両重量:690㎜/237.5㎏
エンジン形式:水冷4ストOHC4バルブ並列2気筒
総排気量/ボア×ストローク:1200㏄/97.6×80㎜
圧縮比/最高出力:10.0/77PS/6100rpm
最大トルク:10.8㎏-m/4000rpm
燃料供給方式/燃料タンク容量:FI/9L
キャスター角/トレール/変速機形式:25.8度/87.9㎜/6速リターン
ブレーキ形式 前・後:φ310㎜ダブルディスク・φ255㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後:130/90B16・150/80R16
DETAIL
PHOTO:南 孝幸