70~80年代を受け継ぐ名車たち
全てを一からつくり上げたニューモデルもあれば、過去のモデルからイメージ、デザイン、技術を受け継いだオートバイもある。このページでは、70〜80年代のオートバイから「何かを」受け継いだオートバイの例を少しだけ紹介してみよう。
カフェテイストの走りを楽しめる1台
RSのカフェレーサーテイストを演出している「主役」は、前後17インチのキャストホイールとゴールドフィニッシュの前後サス。ボリューム感あるタイヤと足回りをアクセントにして、かなり勇ましく見える。跨がっても、少し硬めに感じるタックの入ってないシートや低めのハンドルなどが、乗り手のスポーツ心を刺激する。
このシリーズのコンセプトで柱になっているもののひとつに「気負わず使いこなせる等身大の性能」というのがある。RSは言わばスポーツバージョンだが、その「柱」は先代からずっと変わっていない。
ホイールはEXの18から17インチへと小径化され、タイヤも太い。ハンドリングに関しては大きな仕様変更だ。だが、だからといって不自然に強い舵角は付かない。峠道で腰をずらし、ハンドルにしがみつこうが、リーンウィズでダラリと走ろうが、クセは一切感じない。少しだけ旋回性が強くなり、ごく自然なハンドリングを維持している。ホンダはこういうセッティングがスゴく上手い。
スペック的にはフレームを前下がり、尻上がりとすることでキャスターを立てたりしている。これで応答性の良さを稼いでいるのだろう。サスのバネもいくらか強めものがチョイスされていて、奥までストロークすると、EXより強い反発力を発揮するようなタイプだ。だから、ちょっと飛ばし気味で走った場合、EXに比べればコシの強い、よく踏ん張る接地感になる。しかし、極低速域から高荷重を掛けないクルージング状態などでの乗り心地は非常にいい。EXと同等の快適さ、とまではいかないが、しっとりとしていて、上質な衝撃吸収力。スポーティな走りに対する適応力が強い。
ただ、本格的なスポーツモデルほど高速度域に対応していないし、深いリーンアングルも持っていない。でも「許容範囲」内で走っていれば挙動は穏やか。また、ブレーキは兄弟の中でもっともタフで、酷使に強く、ABS作動寸前での制御も容易だ。
そしてこのRSは、EXとはスペック的には全く変わらないのだが、エンジンに「細工」がある。RSはFIの制御プログラムで5000回転あたりからパワーの立ち上がり方を急激にしてあり、7000回転過ぎでの伸び感も強調してある。これも、扱い手が感じるスポーツマインドの演出だ。
表現が難しいが、パワーが立ち上がるポイントよりも低い回転域でのレスポンスタッチがEXほどダイレクトではない。それでパワーバンドが際立ち、元気なフィーリングを造っているが、計測すればトルクは同じだという。全回転域でダイレクトな方が素直にも思えるが、確かにスポーティな印象だ。
RSは肩肘張らずに乗れる、等身大のスタンダードスポーツ。それにこのルックスと、ちょっと楽しめる走りのスパイスを魅力にしている。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高:2180×800×1100㎜
ホイールベース:1485㎜
最低地上高:130㎜
シート高:785㎜
車両重量:252㎏
エンジン形式:空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量:1140㏄
ボア×ストローク:73.5×67.2㎜
圧縮比:9.5
最高出力:90PS/7500rpm
最大トルク:9.3㎏-m/5500rpm
燃料供給方式:PGM-FI
燃料タンク容量:16ℓ
キャスター角/トレール:26度/99㎜
変速機形式:6速リターン
ブレーキ形式(前・後):φ310㎜ダブルディスク・ディスク
タイヤサイズ(前・後):120/70ZR17・180/55ZR17