歴史的イノベーションとも言える程のフルモデルチェンジを受けた!
メインフレームを含むシャシーを新設計としていて、ハーレーの完全なる新作フレームは1991年のダイナワイドグライドフレーム以来、じつに27年ぶり。ソフテイルフレームに関しては登場が1984年だから、34年を経ての大改革となる。両フレームとももちろん改良を繰り返してきたが、ハーレーは一度プラットホームを作り直すと、長い間それを使い続けて熟成させていく。だからもう納得していただけただろう、今回の新型は将来ハーレー史を振り返ったときも確実にトピックスとなる技術革新である。
新型フレームはどう進化したのか…⁉ まず、これまでネックや後端のスイングアームマウント部が鋳造で見るからに旧車然としてきたが、これを刷新しネックからバックボーンにかけてをプレス成形。強度を65%上げ、重さも車両重量で最大2割減。
そしてリアサスペンションはリンクレスのカンチレバー式のモノショックに刷新され、ショックユニットはシート下に隠れるように配置されている。
さらに搭載する空冷Vツインエンジンも、最新の4バルブ・ツインスパーク式の「ミルウォーキーエイト」に変更。1689㏄だった排気量は1745㏄(107キュービックインチ)に拡大され、ファットボーイでは1868㏄(114キュービックインチ)エンジン搭載モデルも選ぶこともできるようになった。
SPECIFICATION
全長×全幅:2370㎜×985㎜
ホイールベース:1665㎜
最低地上高:115㎜
シート高:675㎜
車両重量:317㎏
エンジン形式:4ストOHV4バルブV型2気筒[Milwaukee-Eight 107]
総排気量:1745㏄
ボア×ストローク:100㎜×111.1㎜
圧縮比:10.0:1
最大トルク:14.78kg-m/3000rpm[145Nm/3000rpm]
燃料タンク容量:18.9L
レーク角/トレール:30°/104㎜
変速機形式:6速リターン
ブレーキ形式:前後ディスク(ABS)
タイヤサイズ 前:160/60R18 後:240/40R18
燃費:5.5L/100㎞
1868㏄搭載車はH-D創業115周年記念車からも2タイプ選べる!
旧ソフテイルより乗り心地が良く快適!そしてダイナよりスポーティに駆け抜けられる!
ファットボーイは1990年に初代が登場して以来、ハーレーのラインアップに欠かせぬロングセラーモデルとなっている。エンジンこそ1340㏄のエボリューションから1450㏄のツインカム88B、1584㏄のツインカム96B、そして1689㏄のツインカム103Bと、四半世紀以上をかけて少しずつ進化を果たしてきたが、マッチョなボディにディッシュホイール、ワイドフェンダー、右2本出しのマフラー、力強さを演出するフォークガードという装備は変わっていない。また、骨格はソフテイルフレームを継承し、エンジンをラバーを介さず直付け=リジッドマウントし、不快な微振動を抑制するために、2000年以降のツインカムエンジンにはカウンターバランサーを内蔵している。
そうした伝統をすべて受け継ぎつつ、新型ではフレームとエンジンをはじめ、フロントマスク、フロントフォーク、前後ホイール、メーター、ハンドルクランプまで、すべてを一新した。にも関わらずファットボーイだとすぐ分かるのだから、じつによくできたニュースタイルだと言える。
さて、跨ってまず感動したのはリアサスがフワッと沈む感触。普通のバイクなら当たり前のことだが、旧ソフテイルでは初期荷重での沈み込みがほとんど感じられなかったから、これは特筆すべき点。
そして走り出してからも感動が続く。路面の段差を見つけてわざと速度を上げて乗り越えてみると、衝撃をしっかり吸収してくれるのである。1957年以前のリアサスを持たないリジッドフレーム=ハードテイルのフレームワークの美しさを再現した旧ソフテイルは、フレームの底に隠すようにしてショックアブソーバーを2本、路面と水平配置してきたが、これだと初期荷重での沈み込みはほとんど感じられないし、大きな段差を乗り越える度に突き上げをくらってきた。それが新型では、乗り心地が向上していることがすぐわかるほどの飛躍的進歩を果たしている。
そして快適性やスタビリティだけではなく、スポーティさも増して走りがエキサイティングなことにも驚く。絶版となったダイナフレーム(ダイナファミリー)はオーソドックスな2本ショックを持ち、ハーレーのビッグツインエンジン搭載車の中でスポーツ路線を担ってきたが、新型ソフテイルはダイナの運動性能を凌ぐ。車体にしっかりとした剛性感があって、高速コーナーでも安心してアクセルを開けられる。ドッシリとした乗り味を重視するクラシック路線一辺倒だった旧ソフテイルだが、それを改め、“スポーティな脚まわり”を手に入れているのだ。
新搭載のミルウォーキーエイトエンジンは、暖機が終わると850回転という低いアイドリングに落ち着き、耳触りもいい。アクセルを開けるとグイッとリアが沈み、押し出される感覚が強くあって良好なトラクションを得ている。
16㎏も軽くなった車体に、排気量を56㏄上げ2→4バルブ化したエンジンは低速からますます力強く、わずか2200回転で6速100㎞/h巡航をこなしてしまう。クランク軸の前後に配置したデュアルカウンターバランサーで雑味に感じる微振動だけを上手く取り除き、Vツインらしい鼓動感だけを心地良く乗り手に伝える。そんな旨味を堪能しつつ、まさに余裕のクルージングが楽しめるのだ。
四半世紀以上続く伝統のスタイルを継承しつつ各部を進化させ、精悍なスタイルへ昇華
歴代の太くマッチョなスタイルを継承しつつ、新しさに満ちあふれるスタイルとなったファットボーイ。前後17インチはそのままにタイヤはより太くなり、異径ヘッドライトナセルから成る面構えも新鮮だ。
240㎜タイヤを装着してテールランプをウインカーと一体式にし、幅の広いフェンダーをスッキリ見せたことでリアビューの迫力が増している。
フルカバードのフロントフォークはφ49㎜正立式はそのままに、路面追従性の高いショーワ製デュアルベンディングバルブにグレードアップされ、モノサス化されたリアサスと相まって乗り心地が良くなったが、ハンドリングはヘビーで、直線番長らしい乗り味を演出しているのもまた面白い。1745㏄のスタンダードエンジンでも加速は強烈だが、1868㏄を選べばさらにダッシュ力は猛烈でサウンドも図太くなる。エンド部を真っ直ぐ切り落としたクローム仕上げのマフラーもファットボーイ専用だ。
シャシーとエンジンが新しくなっても、たくましいスタイル、豪快な乗り味といったファットボーイの持ち味は変わらずという点がとても嬉しい。