エアロダイナミックに優れたスタイリング
180㎞/hリミッターの入っている国内仕様だと、その恩恵を受ける事は少ないだろうが、新しい形状の魅力は空気の乱流に対する強さ。かつて、強風の吹く超高速コースとして有名なフィリップアイランドで試乗した際、280㎞/h以上から身体を低く構えたまま減速しつつ突っ込んでいく1コーナーで、横風の影響が最小限なのに驚いた。アタマやヒザ、上体をカウルから出して動かているのだが、身体で感じとれる明らかな風の乱流が生まれる。しかしその乱れに車体外面からの外乱を受け難い。もちろん車体のスタビリティの良さもあるが、楽だった。
また、そんな速度域でのライン変更のしやすさも空力がかなり関わっているはずだ。その1コーナーでカモメを避けたことがあるが、たぶん、旧型ならあたっていた。
派手さは無いが、このカタチと表面形状の処理はすばらしいモノ。ただし、街中と峠道ではシート、股間あたりに排熱が集中することになるだろう。
感覚的にスリムになって小さくなっている
ポジション的には旧タイプとほぼ同じなんだが、シート座面のタンク側への傾斜がいくらか強くなっているように感じるのと、ハンドルを低く感じる事にも気付く。なのにホールドがしやすいために過剰にハンドルへ体重が載らないことが大きな変化だ。
この感触を生んでいる最大の要素はフレームだと思う。エンジンハンガーの部分でもスリムになっているが、スイングアームピボットの上側でもスリムに絞られており、シート、タンク、車体サイドの繋がりが程よくフラットで、適度な引っかかりもある。
これによって、両腿でのニーグリップはもちろんの事、片腿でのフック、カカトでの車体のホールドともにしやすくなっており、何よりスリムなので力を入れやすくなっている。
シート高は825㎜と操作点を高くして車体を安定させたいSSらしく高め。だが、欧州メーカーのSSよりはいくらか低め。車体が軽いので、普段街乗りに使っていてもつま先さえ届けばあまり苦痛ではない。
多くの魔法で調教された200馬力エンジン!
パワーバンドを見ると驚くほど広く、6000〜14000回転強。これだけ回していればサーキットでも実用的なパワーが得られる。そして力の核のある回転域は8500〜14000回転。真剣なバトルモードで威力を発揮する回転域で、たぶん、このクラスのSSの中でもっとも強力な瞬発力を発揮する。そんな回転域をこのバイクは、使おうと思えば日本の峠道でも使える。
まずスロットルに滑らかに反応しつつ、忠実にレスポンスだ。それにトラコンなどの制御系が最高レベルのアシストをしてくれる。
SーDMSというパワーモード切り換えをもっとも敏感な「A」にしていても、何不自由なく街で使える。ただ路面が滑りやすかったりすると「B」以下に切り替えた方が楽、というくらいの違いしかない。
吸気の整流バランスを合わせるために吸気ファンネルの長さを切り替えるDSiは吸気音が6000回転ほどで変るのでわかるが、カム送角のVVTが切り替わるのはまるで体感できない滑らかさだ。
トラコンを介入の少ない2や1に設定するとローギヤやセカンドギヤでのパワーセーブが無くなるが、それでも力に慣れたライダーなら峠道で使える従順さがある。
比較的低振動なエンジンだが4000回転ほどでハンドルに硬い振動が出る。6速で100㎞/hだと4500回転ほど。コイツのカテゴリーはSSだ。過剰な快適さを求めるものではない。
有名リプレースショックに勝るとも劣らない性能
前後ともバランスフリーショックという名を持つショックで、非常に滑らかに、強力な減衰力を発生できるショックを採用している。
その構造のシステムだけを説明すると……ショックの中で、減衰力を生むために動かすピストンや抵抗器が、減衰力発生媒体として充填されているオイルの反発を受けすぎないようにバイパスを組み込み、オイル粘度と減衰力を生む「オリフィス」の間だけのやりとりで、スムーズな減衰力を発生できるようにしているもの。そのために無駄な反発力を生むオイルを逃がす通路やパルブが必要で、構造が複雑でコストも掛かっているが、その作動はスムーズそのもの。
内部の褶動抵抗を含めたフリクションロスもSHOWAのこれまでのショックの中で最低レベルに抑えられている。
フロントフォークは特に強力なバネとそれに見合った強い減衰力が標準で設定されているが、その動きが滑らかで、初期作動は非常に軽く、滑らかに動く。
前後とも波状に荒れた路面でのスタビリティや大きなウネリを高速で通過した時の接地能力がすばらしい。このバイクの走りを支えるカナメのひとつだ。サーキットはもとより、路面の荒れたコースでの扱いやすさに貢献している。