2ストの楽しさを新車で体験できるラストモデル!
ニンジャ150RRはタイカワサキで生産されていたKRR150系がルーツだが、タイ市場の急速な4スト化に伴ってインドネシア生産となり、モデルチェンジを受けて『ニンジャ』の車名が与えられた。しかしインドネシアでも4スト化の流れは速く、この15年型がカワサキ最後の2ストロードスポーツとなりそうだ。
4スト単気筒の最新モデルであるニンジャ250SLと比べると車格はほとんど変わらず、車重は15㎏軽い。そして最高出力は149㏄ながらSLと同じ29馬力。改めて2ストのメリットを感じさせる数値が並んでいる。最新モデルとは違い、走り出すまでにはひと手間かかる。燃料コックを開いてスターターを引き、キックでエンジンを始動。様子を見ながらスターターを戻し、キャブレターが暖まるまで暖気運転。寒い時期だと最低でも5分は必要だが、こうした一連の「儀式」は僕を含めたベテランにとっては懐かしい、若いライダーには新鮮な操作だろう。
スポーツモデル用の2ストエンジンと聞けば高回転域の狭い範囲でパワーを絞り出すピーキーな特性を想像する。98年に試乗したKRR150SEに搭載されていたエンジンは40PS/11000回転というスペックで、しっかり回し込めば呆れるほど速かった反面、発進や加速ではレーシングマシン的なデリケートな操作が要求された。これに比べるとニンジャ150は格段に乗りやすい。生産国であるインドネシアでは混雑した都市部の移動に使われることが多いだけに、4000〜7000回転あたりでのスムーズさも重要なのだろう。1速のギア比がショート(加速型)に設定されているのでゼロ発進が力強く、渋滞路のノロノロ走りもストレスなし。大きめに設定されているスロットル開度もエンジンの反応を穏やかにしている。
だが、7500回転を超えれば「さすが2スト!」と嬉しくなるパワーフィール。排気音が乾いた感じに変わり、レッドゾーンの始まる1万500回転まで過給が効いたかのように一気に吹け上がる。この3000回転ほどが本来のパワーバンドだが、さらに1万2000回転付近までストレスなく回るから、実質的なパワーバンドは約4500回転。コーナーの連続区間やギア比の合わないコーナーでは大きな武器だ。加えて車重が軽いため立ち上がり加速が鋭く、コーナリングスピードも速い。2〜4速を多用するミニサーキットなら、ニンジャSLや2気筒のニンジャよりも速いタイムを記録するはずだ。
回転域で変わるエンジンパワーを織り込んで操る楽しさと難しさ、パワーバンドに入っているときのエキサイティングさという、2ストエンジンらしい特性がニンジャ150RR最大のセールスポイント。絶滅へのカウントダウンが始まっている2スト車を新車で買える最後のチャンスとなりそうだから、ベテランだけではなく、2ストを知らない若い世代にもぜひ乗ってほしい。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 1930×720×1095㎜
ホイールベース 1305㎜
シート高 NA
車両重量/総排気量 134㎏/149㏄
エンジン形式 水冷2ストクランクケースリードバルブ単気筒
ボア×ストローク/圧縮比 59×54.4㎜/6.9
最高出力 29PS/11000rpm
最大トルク 2.04㎏-m/9000rpm
燃料供給方式 ミクニVM28キャブレター
燃料タンク容量 10.8ℓ
キャスター角/トレール NA
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 ディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 90/90-17・110/80-17
PHOTO:南 孝幸、森 浩輔