現行モデルの登場時、レース仕様の印象は…市販車とは真逆だったかな(伊藤)

今回の試乗車は、勝手知ったるCBR1000RR。レーサーとしてずっと乗ってきたし、JSB仕様車や8耐仕様車の開発にも関わってきました。各メーカーのスーパースポーツの中でも、特に「乗りやすい」と言われていますが、今回改めて乗って「確かに乗りやすい」。街乗りから高速道路まで、一般公道の速度域での乗り味が本当にいいんです。よく曲がるし、反応もいい。ハンドリングも走行安定性も、とても優れています。これならツーリングにも行けるだろうし、もちろん、ハイグリップタイヤを履かせてサーキットを…なんてのも楽しいだろうし。

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ところが信じられないことに、これのJSB仕様(全日本ロードレース・JSB1000クラス参戦マシン)を最初に乗った時は、正直「なんて乗りづらいバイクなんだ」と思ったんですよ(笑)。自分がJSB仕様車に携わるようになったのは08年ですけど、「コレがJSB仕様のキット車です」と言われて乗ってみると、全然曲がらないしタイムも出ない。あの街乗りで乗ったCBRはどこに行ったんだ?って思うくらい、印象に差がありました。今でこそ、JSB仕様もいいオートバイになりましたけど。

レーサーは設定する速度域もコンセプトも全く違う。レースでの曲げやすさと公道での曲げやすさは別なんです。だから各部品の作りもマテリアルも全然違う。サスペンションは構造も違うし、レーサーのタイヤはスリックになるから剛性が全然違う。トリプルクランプに要求される剛性も違います。他にも、フォーククランプやアクスルシャフトクランプのピンチボルトの材質が何か、ボルトの座にワッシャーが入ってるか、いないか…なんてことから、エンジンハンガーボルトの締め付けトルクの0・1〜0・2N.mの違いなどでも、オートバイの運動性能は大きく変わってしまうんです。そういう細かな変更・調整を繰り返して作っています。

画像: ※写真は2013年の鈴鹿8耐より

※写真は2013年の鈴鹿8耐より

でも、それはサーキットでの話。公道を走るなら、市販車の状態がいちばんバランスよく出来ている。ある意味、完成形です。レース仕様車のマネをした改造をするほど、峠でも速くなるイメージがあるようですけど、むしろ反対です。レーサーみたいにガチガチなセッティングで峠を頑張ったら、たぶん、すぐ転んじゃいますよ。峠くらいの速度域で走るには、この市販車のセッティングはすごく高評価なんです。当然、広いトラックを走るならJSB仕様の方が断然速いけど、ミニバイクコースだったらわからないかも。車重差があるので、一概には言えないですけどね。以前にCBRの市販車で『スピードパーク新潟』という全長1㎞ちょっとのコースを全開で走ったことがあるんです。1速…2速くらいまでしか使わなかったけど、タイヤが滑るのもコントロールしやすかったですし、やはり良く出来てるなって思いましたね。

画像2: 現行モデルの登場時、レース仕様の印象は…市販車とは真逆だったかな(伊藤)

SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2075×720×1135㎜
ホイールベース 1410㎜
シート高 820㎜
車両重量 202㎏ (ABS=212㎏)
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量 999㏄
ボア×ストローク 76.0×55.1㎜
圧縮比 12.3
最高出力 123PS/9500rpm
最大トルク 9.9㎏-m/8500rpm
燃料タンク容量 17ℓ
変速機形式 6速リターン
キャスター角 23°30
トレール量 96㎜
タイヤサイズ(前・後) 120/70ZR17・190/50ZR17
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・ディスク
カラーバリエーション ロスホワイト(写真)
パールグレアホワイト マットバリスティックブラックメタリック
価格 146万8800円 150万1200円(ロスホワイト)167万4000円(ロスホワイト・ABS)※写真

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