硬派なルックスにスポーツ性も高い乗り味
89年にゼファー400が登場してネイキッドブームが起こったわけだが、その当初こそ懐古的なスタイルや雰囲気が重視されていたが、徐々に各メーカー間の開発競争は加熱。
ネイキッドスポーツでも、パワーやハンドリングといったスポーツバイクとしてのパフォーマンスの高さが求められる時代があっという間にやって来た。
しかしゼファーはといえば、400と750は70年代末に開発されたZ-FX系の空冷2バルブエンジンを搭載していたし、1100も新しいエンジンだったとはいえ、あえて2バルブが採用されていた。
いずれも高性能を追い求めるには限界があったため、カワサキはゼファーとは別にスポーティなモデルを開発する必要に迫られる。その結果、まず94年に登場したのが400cc版のZRXだ。
Z1000Rローソンレプリカを想わせるビキニカウルを装着した80年代風のネイキッドスタイルを採用したボディに、ZZR400用をベースに開発された水冷直4エンジンを搭載。
硬派さを感じさせるルックスと走りで注目を集めた。
そして96年には、400cc版と共通イメージのスタイルに、パワフルさでは定評のあるZZR1100ベースの水冷直4を搭載し、排気量を感じさせない軽快なハンドリングも備えたビッグネイキッドのZRX1100をデビューさせる。
このZRX1100、当時ネイキッド随一の高いスポーツ性で高く評価されたが、01年にはエンジンの排気量を1164ccにまでアップして力強さを増し、車体も剛性バランスなどを見直してさらに素直な操縦性を得たZRX1200へとモデルチェンジ。
そして08年には、日本国内専用モデルとして開発され、FI化されたエンジンや細かな車体周りのリファインで日本の道に最適なパワー特性とハンドリングを磨いたZRX1200ダエグへと進化。
国内外のスーパーネイキッドたちに負けないパフォーマンスと扱いやすさを両立した王道のネイキッドとしてZRXは今も輝きを見せる。
重厚な大排気量車の造りが現代へと受け継がれる
カワサキWシリーズの歴史を語る上で、目黒製作所に触れない訳にはいかないだろう。
25年に創業し、自動車の修理や部品製作を手始めに37年には初のオートバイとしてメグロ号を開発。
戦後も500ccのメグロZシリーズなどを生産する、当時の日本では珍しい大排気量車専業メーカーとして知られていた。
しかしホンダ、ヤマハなど戦後に創業した小排気量車を得意とする新興メーカーが力を付けるのにしたがって業績が下降。
60年にはカワサキと業務提携をするものの、結局64年にカワサキへ吸収されてしまった。
しかし、目黒製作所が積み重ねていた大排気量車に関するノウハウはカワサキで再び花開く。
66年には目黒製作所がその末期に開発していたスポーツモデルのメグロK1をベースに、それまで2スト車を主力としていたカワサキ初の4ストスポーツモデル・W1がデビューする。
W1はメグロK1から排気量を拡大した624cc空冷OHV並列2気筒エンジンと、英国車風の車体設計がもたらす重厚な乗り味やサウンドなど、メグロの子孫らしい独特な魅力で多くのライダーから人気を集める。
68年にはツインキャブ化でパワーアップしたW1S、71年には英車式の右シフトを現代的な左シフトに改めたW1SA、73年にはディスクブレーキ装備のW3と進化していったが、69年のホンダCB750Four、72年にカワサキ自身が開発したZ1といった新時代の4気筒スポーツたちの前には旧式化は隠せず、その役割を終えていった。
そして時は流れて98年、戦前からの伝統を受け継いできた「W」ブランドが、ニューモデル・W650の登場で奇跡の復活を果たす。
W650は、92年に登場しそのクラシカルなスタイルで一躍レトロスポーツというムーブメントを作り出した250ccモデル・エストレヤのコンセプトを大排気量車に取り入れたモデル。
かつてのWと同じく空冷並列2気筒エンジンだが、排気量は675cc、ベベルギヤ駆動OHC4バルブと主要メカニズムは現代の技術を採用。
しかしWの持っていたクラシカルで上質なスタイルを受け継ぐと共に、乗り味の面でもWの名に相応しい重厚さを巧みに再現し、かつてを知るベテランから若者まで幅広い人気を集めた。
W650は排出ガス規制強化によって08年に生産を終了するが、11年には後継モデルのW800がデビュー。
エンジンをFI化すると同時に排気量を773ccにまでアップすることで、排ガス規制対応と十分なパワーの確保を両立。
独特な美しいスタイルはW650から受け継がれ、今なお個性的レトロスポーツとしての高い人気をキープしている。
まとめ:オートバイ編集部