すべてにおいて圧倒的なPROJECT BIG-1
91年秋に開催された東京モーターショー、そのホンダブースに展示されていたオートバイの中で、訪れた人々から特に熱い視線を注がれていた1台こそがCB1000SFだった。
当時、次世代のロードスポーツの在り方を模索していたホンダが、性能だけでなく迫力や存在感まで含め、ライダーにとってナンバー1となるオートバイの実現を目指す「PROJECT BIG-1」コンセプトに基づいて開発したネイキッドスポーツのCB1000SF。
そのボディは脈々と続くCBシリーズの伝統を踏まえた様式美を感じさせると共に、実際の大きさ以上に堂々とした存在を感じさせ、さらに「その体躯はあくまでもセクシー&ワイルドであること」をコンセプトにデザインされた魅力的なボディラインでも、多くのライダーの目を釘付けにした。
CB1000SFの登場の背景には、もちろん90年代初頭に吹き荒れたネイキッドブームがある。
その初期において、いってしまえばレーサーレプリカブームの反動である懐古趣味として盛り上がっていたネイキッドブーム。
ホンダはそんな中でも単なる過去のオーソドックスなスタイルの再現という範囲に留まらない、現代的な新しい魅力も備えたモデルの開発に挑んで、その象徴としてCB1000SFという存在が生み出されたのだ。
モーターショーでの好評もあって、CB1000SFは翌92年に市販がスタートする。
いち早く手にした一般のライダーは、堂々たるルックスと大きな車格からは想像できない意外なほどの軽快さに驚くことになる。
それは高精度なサスペンションの採用や軽量化など車体設計上の配慮に加えて、CBR1000F用の水冷直4をベースに中低速域での力強さを増したエンジンが、乾燥重量260kgという巨体を物ともしない図太いパワーを発揮したことも大きい。
CB1000SFはスタイルも走りも魅力的な、ステイタスの高いフラッグシップモデルとしての地位を確立。
94年にはブラックボディにビキニカウルを装着したCB1000SF T2も追加、その他にも細かな改良を受けつつ後継モデルのCB1300SFがデビューするまで生産された。
98年に登場したCB1300SFはCB1000SF同様のコンセプトを受け継ぎながら、車名からも分かる通りにエンジンをX4ベースの1284cc水冷直4に変更。ホイールサイズも18インチから17インチになり、リアサスにダブルプロリンクサスを新採用するなど、スタイリングの基本イメージ以外、メカニズムに関しては完全刷新された。
04年に初のフルモデルチェンジで20 kgもの軽量化を受けた2代目に進化すると、05年にはハーフカウル装着で高速走行時の快適性をアップしたCB1300SBもデビュー、09年にはCB1300SBに大容量パニアケースやワイドスクリーンなどを装着、ポジションも見直したツーリング仕様のCB1300STも追加。
そして14年のモデルチェンジでは、ミッションの6速化、CB1300SBへのLEDヘッドライト装着などでアップデート。
初代から変わらないBIG-1スピリットと魅力的なスタイルに、ロングセラーならではの高い完成度と最新の装備による快適さまで備えたCB1300SF/SBの人気は揺らぐことを知らない。