2019年プレシーズンテストの第1回目、3日間のセパンテストが終わりました。初日はマルク・マルケス(レプソルホンダ)、2日目はマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジーヤマハ)がトップを引いて、この3日間の最速タイムが出るであろう最終日、果たしてトップタイムをマークしたのは、なんとなんとのダニロ・ペトルッチ(ミッションウィナウドゥカティ)でした! 
しかも!しかもですよ? 2番手にはMotoGPルーキーのフランチェスコ・バニャイア(プラマックドゥカティ)! 3番手にはジャック・ミラー(プラマックドゥカティ)でドゥカティ1-2-3! さらに4番手はアンドレア・ドビツィオーゾ(ミッションウィナウドゥカティ)という、ドゥカティまさかの1-2-3-4! 5番手にかろうじてビニャーレス、6番手にカル・クラッチロー(LCRホンダCASTROL)が入りました!

画像: 総合トップはペトルッチ! 1ラップアタックだったみたいですが、セパン絶対レコード樹立です

総合トップはペトルッチ! 1ラップアタックだったみたいですが、セパン絶対レコード樹立です

画像: 3日間の総合順位はこのとおり トップ6人が58秒台に入りました! 3日間、雨降らなかったのかな?

3日間の総合順位はこのとおり トップ6人が58秒台に入りました! 3日間、雨降らなかったのかな?

もちろん、新シーズン1発目のテストなんだから、結果として残ったタイムにはいろんな意味があります。
ペトルッチは32周回しかせずに10周目にベストタイムが出ていて、それもニュータイヤを履いた2周目にタイム出しして、次の周にはピットイン。2分を切ったのは3ラップだけで、ピットインが7回。アベレージでいうと2分00秒台が多いから、これはいわゆる「イッパツタイム」の疑いが強いですね(笑)。
バニャイアも21周回しかせずに11周目にベストラップ。これもニュータイヤ履いた3周目にタイム出ししていますし、ほかの20周も、前半は2分切りが多く、後半は0秒後半や01秒、まだまだ出入りが多いですね。
3番手ミラーは47周回中の12周目がベストタイム。これも気温が上がりすぎない午前中にタイム出しした感じで、テストの締めくくりで17周回のロングランで0秒から01秒くらいで周回していますね。このへん、本気でテストしてるなぁ、って感じ。
さらに4番手のドビツィオーゾは、36周回しての11周目がベストラップ。ドビツィオーゾにしてはピットイン多めでロングランはなく、黙々とテストをこなしていた印象ですね。これもまだテスト1回目だしね、がんばってタイム出すよりテスト項目をたくさんこなす方が正義でしょ、ってドビツィオーゾの声が聞こえてきそうです。

その意味で、がっちりテストをこなしていたのは、最終日に最多周回数をまわってタイムも4番手だったビニャーレス! ロングランも20周をこなして、0秒前半と59秒後半というレースペースで走っています。ビニャーレスは初日と2日目に63周、最終日に79周と、3日間合計205周を走りました! これ、文句なしの最多周回数! セパンは1周5.543kmですから、1100kmも走ってことになります。

画像: 最多周回賞はビニャーレスへ もちろんそんな賞はございません

最多周回賞はビニャーレスへ もちろんそんな賞はございません

もちろん、数多く走ればいいってもんじゃありませんが、全チームのファクトリーライダーの3日間の周回数を見てみると、こんなかんじになります。

1:マーベリック・ビニャーレス ヤマハ   205周
2:アレックス・リンス     スズキ   197周
3:ジョアン・ミル       スズキ   172周
4:バレンティーノ・ロッシ   ヤマハ   169周
5:ダニロ・ペトルッチ     ドゥカティ 151周
6:アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ 145周
7:マルク・マルケス      ホンダ   105周

画像: 様子見で走行したマルケス ピットインしてるこんな写真でも痛そうに見えるなぁ…

様子見で走行したマルケス ピットインしてるこんな写真でも痛そうに見えるなぁ… 

マルケスはね、手術明けの左肩の様子見で、最終日こそ61周を走ったものの、初日と2日目は30周くらいで早々と走行を終了。2日目に「ちょっと肩痛くてさ…」って言っていたのが気になりますね。あとは、ドゥカティ勢の3日目の周回数の少なさが奇妙に共通しています。早よ帰りたかったのかな、それとも3日目の午後という、いちばん気温と路面温度が高い時間帯に走りたくなかったのか、走れなかったのか……なんて考えると楽しいですね。

セパンの第1回目のテストを終えては、ビニャーレスに注目すべきでしょうね。3日間を通して誰に注目する?って聞かれたら、僕はビニャーレスだと答えます。ホルヘ・ロレンソがテストを欠席しちゃったホンダは除外されちゃいますが、最多周回数争いは、ヤマハ374周vsスズキ369周vsドゥカティ296周で、ここはヤマハが勝利! この2年、マシンがうまく仕上がらなくてライダーにも文句を言われ、メーカーもライダーに対して公式の場で謝罪するという事態に陥っているヤマハですから、2019年は巻き返さないとなー、って気持ちがいちばん強いんじゃないでしょうか。

さらに、今シーズンからMotoGPに乗るルーキー勢は、こんなかんじ。

1:ファビオ・クアルタラロ   ヤマハ   200周
2:ジョアン・ミル       スズキ   172周
3:ミゲル・オリベイラ      KTM    158周
4:フランチェスコ・バニャイア ドゥカティ 122周

画像: 「神の子」ファビオ お尻にニックネームの「エル・ディアブロ」って入ってます

「神の子」ファビオ お尻にニックネームの「エル・ディアブロ」って入ってます

画像: 3日目にドンとタイムを上げたジョアン・ミル 「あと0秒3は縮まったはずだったんだ」って言ってました

3日目にドンとタイムを上げたジョアン・ミル 「あと0秒3は縮まったはずだったんだ」って言ってました

これは、クアルタラロがダントツですね。Moto2からの乗り換え組は、とにかく乗り込んでいるんでしょう。ここはもう、マシンの車重も違うし、パワーも違うし、タイヤもカーボンブレーキも、そして電子制御も初めて経験することばかりですから、まずは乗り込まないと! ちなみにわれらが中上貴晶(LCRホンダIDEMITSU)は176周、僕が勝手にタカのライバルだとみているフランコ・モルビデリ(ペトロナスヤマハSRT)は184周、ハフィズ・シャーリン(レッドブルKTMテック3)は123周。タカ、フランコに負けてんぞ!(笑)
セパンテストが終わってすぐに、実はアレックス・リンスとジョアン・ミルが来日し、さっそくインタビューさせていただきました。この模様はのちほど――。

画像: テスト項目をこなし、タカらしくジリジリとタイムを上げてきました ついにタカにも羽根つき213V

テスト項目をこなし、タカらしくジリジリとタイムを上げてきました ついにタカにも羽根つき213V

テストってのはおかしなもんで、今はシーズン中のエンジン開発が禁止されていますから、開幕までにシーズンを通して使うエンジンスペックを決めておかなきゃいけないとはいえ、セパンでよかったからといってシーズン中も大丈夫、ってわけにはいかないものだし、シーズンオフの結果がそのまま仕上がりにつながらないのが怖いところ。
まずエンジンスペックを決めておいて、シーズン中のパワー特性のモディファイは、排気系や電子制御で決めていくしかないしとなると、いかにこのシーズンオフテストが重要か。こういうレギュレーションもどうかと思うんだけどねぇ……。

次回のテストは今月末のカタールテスト。今シーズンはオフィシャルテスト日数もまたも制限が激しく、今年はこのセパンとカタールの2回でオシマイ。去年は初コースってことでタイ・ブリラムもあったんですけどね。
そーすっともう、その2週間後には開幕です! 

写真/motogp.com 文責/中村浩史

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