各部の上質な造りに感じるファンティックの「本気」
1968年にイタリア北部で創業し、70年代から80年代までエンデューロ界やトライアル競技で世界に名を馳せたファンティック。
その性能と品質は高く評価されていたが、90年代中盤から経営破綻→再建を繰り返したこともあり、日本国内ではこれまであまりなじみがなかった。
だが、今回新たにサインハウスが日本代理店となって新生ファンティックの取り扱いを開始。中でも売れ筋となりそうなのが、この「スクランブラー250」だ。
ルックスは最近流行のレトロスクランブラーだが、車体をじっくり観察するほどにファンティックの「本気度」が伝わってくる。
クロモリ鋼管にアルミ削り出しプレートのスイングアームピボットプレートを組み合わせたセンターチューブ型フレームに、倒立フロントフォークとリアのリンク式モノショックが奢られ、前19・後17インチのアルミリムを採用。
アロー製のステンレスマフラーなど、車体構成はロードモデルをベースに外装を変えた「スクランブラー風」ではなく、本物のスクランブラーとして仕上げられている。
車体は兄貴分の500㏄モデルとほぼ共通のため250㏄としては大柄で、140㎏という乾燥重量もオフロードモデルとしては重い部類だが、細身の車体に体を寄せやすく、取り回しは想像以上に軽い。
ライディングポジションは幅広ハンドルと前後に長いフラットなシートで積極的な荷重移動がスムーズに行なえ、車体が暴れても抑え込みやすいように設定されているが、アイポイント、着座位置の自由度ともに高いので、ストリートライディングにも合っている。
イタリアで設計されたオリジナルエンジンは高回転まで回してパワーを稼ぐタイプではなく、中回転域での鋭いピックアップと粘り強さが持ち味。
ダートも走ってみたが、高回転をキープするよりも、早めにシフトアップしてトルク変動を抑えながら走るとトラクションを得やすい。この特性もストリートライドやのんびりツーリングに適したものだ。
フロントに走破性の高い19インチホイールを採用しているが、バネ下重量が軽いためかハンドリングは素直で、クイックな寝かし込みでフロントの追従が遅れることもなく、曲がりくねった峠道もタイヤのグリップを感じながらスイスイ駆け回れた。
レトロなルックスはストリートにも似合うが、実力は生粋のスクランブラー。オフロードも存分に楽しめる一台だ。
文:太田安治/写真:森 浩輔・南 孝幸