オーリンズは車体の落ち着きが純正サスペンションとは全く違う
こういったチューニングパッケージというのは、狙い所が問題になる。カギになるのは姿勢を安定させたり、乗り心地、低中速域での接地性に影響するバネのチョイスで、イザとなれば草レースで威力を発揮する余力を持たせるか、スポーツ走行までにしておくかでかなり違う。
CBRで草レースとなると超高速域での戦闘力まで考えなくてはならない。その辺りの戦闘力まで欲を出すと、街中や峠道などで大方は硬い動きをすることになる。
特にCBRのようなシンプルなサスシステムでフルカバーするのは難しいのだ。
でもこのSPが狙っているのは「峠道からサーキットでのスポーツ走行」。
そこではSTDのCBR1000RRより上質なスタビリティで、より高次元なスポーツライディングを楽しめるようにスポーツ性能をグレードアップしたものだ。
内容はシングルシートにオーリンズのフォークとTTXショック。
それにスポーツABSを連動させたプレンボのキャリパー。超軽量ホイールの採用。
まずは完全なノーマルセッティングで走ってみる。
減衰を滑らかに生み出すオーリンズだ。立ち上がりでローギヤを使い切って2速でさらに加速するような場所だったんだが、やはり車体の落ち着きがSTDとは違う。
顕著なのは複合コーナーからタイトなコーナーへの切り返しといった、フロント側に荷重が乗り、さらに反対側に曲がって行く時だ。
どうラフに扱っても一発で車体が安定する。
切り返しポイントも思いどおり。STDのように…えーっと、こんな感じで荷重すればサスはあの辺りで落ち着くから…なんて操作のリズムを慎重に調整する必要がない。
それに、凸凹でも跳ね難く、接地感は極めてしなやかだ。よく動いてくれる。
もし、もてぎなどの高速コースでスポーツ走行するならバネにプリロードくらい掛けた方がいいが、何もしなくても感激するほどの接地感と車体の落ち着きは感じられる…いい落とし所だと思う。
いたって普通に使え、極めて上質なスポーツ性能を楽しめる。狙い所のはっきりとしたスポーツパッケージなのだ。
SPECIFICATION
■全長×全幅×全高 2075×720×1135㎜
■ホイールベース 1410㎜
■シート高 820㎜
■車両重量 211㎏
■エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
■総排気量 999㏄
■ボア×ストローク 76.0×55.1㎜
■圧縮比 12.3
■最高出力 123PS/9500rpm
■最大トルク 9.9kg-m/8500rpm
■燃料供給方式 FI
■燃料タンク容量 17ℓ
■変速機 6速リターン
■ブレーキ形式 前・後 ダブルディスク・シングルディスク
■タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・190/50ZR17
RIDING POSITION 身長:176㎝ 体重:68㎏
ステップが少し後退しているが、バンク角は同程度。
ストリートではSTDよりウデに体重が乗りやすいが加速中の踏ん張りは格段に良くなってる。
DETAILS
NIX30フォークは減衰力調整機構が左右独立しているのが特徴。
ステアリングステム、鍛造トップブリッジもNIX30の特性に合わせた専用品となっている。
リアショックは伸び側と圧側の減衰力機構が完全に独立したTTX36タイプで、フロントと同様に本国からエンジニアを招へいして開発。
その結果、専用のクッションロッドを採用してトラクション性能が最適化されている。
インナーチューブ径φ43mmのオーリンズNIX30倒立フォークと、ブレーキパッドとピストンサイズを専用としたブレンボ4ピストンモノブロックキャリパー。
ともに本国のエンジニアを呼んで開発が進められた逸品だ。
吸排気ポートの形状変更によって5PSのパワーアップを果たした2014年型CBR1000RRのエンジン。
SPではさらに各気筒間のピストンとコンロッドの重量バランスをより精密に選定し、高回転域のスムーズさを向上させている。