2019年4月21日、特別な〈レン耐〉が開催されました。
あたしは、青木拓磨さんのレースにお手伝いとして、ときどき参加しています。
〈レン耐〉とは、レンタルの「レン」と耐久レースの「耐」。目を吊り上げず、みんなでワイワイがやがや楽しむレースです。
先日は、熊本県のHSR九州で行なわれた〈レン耐〉に参加してきました。
拓磨さんから「熊本では、レースの前に車いすマラソンを開催するんだよ。同じコースで、お父さんがバイクでレースして、息子さんは車いすで走るっていう親子もいるよ」
そんなことを事前に聞いていたので、とても楽しみでした。おふたりにお会いしたいという気持ちも持って、いざ現地へ。
初めて見た車いすマラソンは、びっくりするほどかっこよくて、眩い太陽の下、みなさん光って見えました。
マラソン用の車いすの価格はなんと200万円。外車のいいバイクが買えちゃいますね! どんな乗り心地なんだろう……あたしも気になります。
そんなあたしに気づいてくれたのか、拓磨さんが「理子も乗ってみる?」と、声をかけてくれたのは本当に嬉しかった!
実際に乗ってみると、運転がかなり難しい……。
「理子、腕が太ももなんだよ」
拓磨さんのアドバイスでなんとか走ることができました。そして、とても楽しい!
調べてみたら、この車いすマラソンは、健常者でも参加できるようです。あたしみたいに、楽しさにハマる人、そりゃいるよねと思いました。
車いすマラソンのあと〈レン耐〉のレースが始まり、親子で参加されていた、息子さん(清田慎也さん)とお話しすることができました。
「いま、お父様が走られていますよね。同じコースを走られて、いかがでしたか?」
「安全なサーキットで思いっきり走れて楽しかったです」
その後に続いたのは、車いすマラソンの練習環境の厳しさでした。
「実は練習場を確保するのも大変で普段は河川敷や普通の道路。車いすは低いのでカードレールの陰に隠れてしまうことも多くて……。転んだらお散歩してるおばあちゃんに助けてくださいとお願いすることもあります。サーキットを走るのは初めてで、今日をメンバー全員が楽しみにしていました。父とも一緒に走れてよかったです」
「おふたりが同じコースを走ると聞き、あたし感動しちゃって……。みなさんは、あたしたちに、知らないこと、元気、優しさまで教えてくれます。感謝しています」
「僕らも同じように感じています。僕らは障がいを言い訳にしたくないというのが強くあるんです。できないこともあるけれど、工夫すればできることもたくさんある。障がいがあっても自分の人生を狭めたくないんです」
レースを終えたお父さんにも同じ質問をしてみました。
「みんなで一緒に走れたのが嬉しいです。障害物がなく心配なく走れ楽しかったとみんないってくれたけんね。なかなか練習も安全なところで、走れることがないんで」
お父さんも息子さんどうのというより、こういった機会に感謝されていたようです。
「青木さんは真正面から来てくれるけん、真正面にこたえたい。今回、前向きな連帯感も生まれました。サーキットで走るきっかけを作ってくれました。これからが始まりです」
こういう気持ちのいい親子だからこそ、いまこうして一緒のコースにいるんだろうなと思いました。
親子間のことだけじゃなく、力を合わせて、支え合うという大切なことをたくさん知っているのでしょうね。
あたしは、熊本から帰って、拓磨さんに連絡をしました。
「失礼なコメントすいません。先に謝りますが、一緒に車いすで走れて幸せでした。楽しかったです。うまく言えませんが……いつも、優しくなれる気持ちを、ありがとうございます」
車いすマラソンに出られたみなさんと、車いすのまま同じ目線で、話ができたことが嬉しかった。
健常者って車いすに乗ってみたくても、申し訳ないと思ってしまいますよね。でも実際に乗って、走って、分かったことがたくさんあった。
こんなふうに、健常者でも車いすに乗れる機会がもっとあれば、と思いました。互いがもっと近づくことで、アイデアが生まれていく気がします。
健常者・障がい者の垣根を作ってるのは、あたしらなのかもしれません。壊したい。そんなの。
すべての人が過ごしやすい道。いつか絶対できますように。絶対に絶対に、できますように。