BMW GSという「名門」の高いハードルをクリア! このボディとパワーは日本の道でこそ楽しい!
BMW「G310GS」は普通自動二輪免許で乗れるBMWの第2弾。ネイキッドスポーツG310Rをベースにしたアドベンチャー仕様だ。
もし他社なら、ネイキッドの次はフルカウルスポーツ、となったかもしれない。しかしBMWにはGSシリーズという看板モデルがあり、それは大型自動二輪免許を持たない人にとっては憧れの存在。
第2弾にSSルックではなく、GSを選んだのも納得がいく。
アドベンチャーというカテゴリーのモデルたちは、高速道路で一気に距離を稼いで移動し、ダートも気にせず山あいに奥深く入っていく、という使い方を得意としている。
だから、高速巡航が得意で、オフロード性能もある程度持ち合わせる必要があり、クルージング力、快適性が非常に大事。そのジャンルを長年牽引してきたGSシリーズの末弟だけに、注目度はおのずと高くなる。
そんなことを考えて、ハードルをうんと上げてから走り出した。市街地はシングルスポーツらしく軽快。
アップライトなポジションと足の長い前後サスペンションのおかげで視線が高く、街乗りもキビキビこなす。柔らかく動くサスが扱いやすさを生み、ハンドル切れ角も広くとられ気負わず乗れる。
車格もクラスを超えたもので、何よりタンクカバーに貼られたBMWのエンブレムが誇らしい。これは同排気量帯のライバル勢にはない優越感だ。
市街地での軽快さは予想通り。問題はココからと、高速道路でスピードを上げてみる。トップ6速・100㎞/h巡航は6000回転と余裕で、そこから10500回転でレブリミッターが効くまでフラットに吹け上がり、力強さは充分。
単気筒ながら振動も気にならず、ウインドプロテクションもいい。
スクリーンはコンパクトながらもしっかり効いていて、タンクから張り出したシュラウドカバーが下半身を走行風から守ってくれるから、追い越し車線を何事もなく流していける。
街乗りで感じたように、足まわりにもエンジンにも神経質さがないから、ワインディングでも思い通り。
フロント19インチならではの穏やかなハンドリングと、よく動くサスが同調して、山岳路もリラックスした気持ちで駆け抜けられる。
そしてダートだが、さすがにオフ車ばりのペースでギャップを飛び越え……となると、フルストローク付近での踏ん張りが効かずにドカーンと衝撃をくらうことになるが、サスの路面追従性は高く、フラットダートをノンビリ流すなら破綻はしない。
兄貴分たちにはない身のこなしの軽さで、Uターンのできないシングルトラックも進む気にさせる。
どこにも弱点のない、オールラウンダーとしての完成度の高さがあり、GSブランドへの期待を裏切らないG310GS。
スタイルも堂々たるものだし、優等生な走りで、ライトアドベンチャーという急成長中のカテゴリーを引っ張っていきそうだ。
文:青木タカオ/写真:南 孝幸