カワサキ「Z400」インプレ・解説(太田安治)
あらゆる層のライダーが楽しめる優れたパッケージ
1975年の免許制度改定以降、国内市場の花形だった400㏄クラス。レーサーレプリカからアメリカン、オフロードモデルまで百花繚乱の様相だったが、1996年に大型二輪免許の取得が容易になると販売台数は急降下。
ここ10年は250㏄、125㏄が見直され「ヨンヒャク」の存在感は薄れていた。だが、免許制度の異なる東南アジアや欧米で300~650㏄程度のミドルクラス人気が上昇、その影響が国内にも波及し始めた。
このZ400も、かつてのような国内専用モデルではなく、各国で販売される世界戦略車。先代モデルまではER-6nをベースに排気量を縮小した「弟分」だったが、新型はZ250と同時開発で、立ち位置としては250の兄貴分にあたる。
Z250と同じ車体だけに、装備重量は166㎏と、レプリカブームの頃のモデルよりも軽量。これが取り回しやすさとシャープなハンドリング、充分な動力性能の核となり、大型車的な乗り味を持たせたライバル車との決定的な違いを生んでいる。
当然ながら、Z250との差を最も感じるのは動力性能。ゼロ発進、高いギアのままでの追い越し加速、そして全開加速のどれでもプラス150㏄の威力を見せつけ、5000回転からグッと力強さが増して、トルク感を伴ったまま12000回転以上まで伸びていく。
有効パワーバンドが広いので、市街地走行から高速道路、峠道まで、エンジン回転やギア位置に気を使う必要もない。
Z250のエンジンはミッションを駆使し、パワーバンドを保って走らせる面白さがあるが、400はとにかく気楽で快適。それでいて250を寄せ付けない速さと余裕も秘めている。
ハンドリングは250と同様に軽快で、渋滞路だろうがタイトターンの連続する峠道だろうが意のままに操れる。
レプリカ時代の400はサーキット走行を前提に高い車体剛性を持たせていたが、Z400は現実的な速度域での荷重に合わせた設定で、公道で扱いやすく、乗り心地もいい。
前後ラジアルタイヤで接地感がリニアに伝わり、リアタイヤの踏ん張りが効くから旋回中の安定性も高い。
車体もエンジンも最新技術をふんだんに採り入れてはいるが、一歩ひいて見ればごくオーソドックスなネイキッドスポーツ。
ビギナーなら間違いなく250より乗りやすいし、ベテランが大型モデルからの乗り換えても不満は感じないはずだ。