かつての「栄光の味」を堪能できるオトナの1台
1970年前後のこと、モトグッツィはかつて、トライアンフ、ドゥカティなどと耐久レースでトップの座を競っていた時代がある。
その先鋒を担ったのが「V7スポーツ」というモデル。
これの大活躍で、モトグッツィは本格的に耐久レースの顔役となった。
この頃、圧倒的にパワフルな、CB750Fourを筆頭とする日本製直4モデル群はすでにデビューしていた。
その戦いの中で、V7スポーツはVツイン最後の意地を見せつけていたのだ。
「V7スポーツ」は、迫り来る日本製直4スポーツの脅威に最後まで牙を剥き、善戦したモトグッツィの名車なのだ。
そしてすばらしく美しいバイクでもあった。
そのスピリットは、現行の「V7スペシャル」や「V7クラシック」が継承している。
少し小振りだが、かつての名車の雰囲気を忠実に醸し出す、綺麗なバイクだ。
そして、この「V7レーサー」は、それをカフェレーサーにカスタムしたモデル。
カスタムの手法もかつての手法をイメージした。
このシリーズは最近、新エンジンの採用で50馬力にパワーアップされた。
750で? と耳を疑いたくなるスペックだが、これで随分活発に走れるようになった。
少々イジったSRよりは元気がいいが、W800ほどパワフルではない。
ただ、中域以上で盛り上がるパワーフィールには、勇ましいツインのテイストがにじみ出ていて、かなり楽しい。
また、ビンテージ・グッツィの特徴のひとつに高速安定性がある。かつて世界が驚異に感じた性能だ。
その秘密は、縦置きVツインエンジンの独特な配置にあり、フロントに大きな荷重を、しかも低く搭載し、フロントを元にした安定性を発揮していたのだ。
その独特の感触は現代のV7にも生きている。
このシリーズは、160㎞/h以上でのフルバンクコーナリングであっても、レールの上を走っているような感覚(ちょっと誇張し過ぎだが…)でやってのける。
かつて栄光を勝ち取った、グッツィらしいテイストだ。
しかしながら、かつてのモデルからウィークポイントとされていた、リアの軽さから来る制動時の早期ロックも面影が残っている。
まぁ、でも、そんなことをとやかく言うような走りは元から狙っていない。
V7シリーズは、オトナの心で、様々な「かつての味」を楽しむことができるライダーのためのモデルなのだ。
SPECIFICATION
●全長×全幅×全高:2185×740×1180㎜
●ホイールベース:1435㎜
●シート高:805㎜
●車両重量:198㎏
●エンジン形式:空冷4ストOHV2バルブV型2気筒
●総排気量:744㏄
●ボア×ストローク:80×74㎜
●圧縮比:NA
●最高出力:50HP/6200rpm
●最大トルク:6.12㎏-m/2800rpm
●燃料供給方式:FI
●燃料タンク容量:22ℓ
●キャスター角/トレール:NA
●変速機形式:5速リターン
●ブレーキ形式 前・後:φ320㎜ディスク・φ260㎜ディスク
●タイヤサイズ 前・後:100/90-18・130/80-17
RIDING POSITION 身長:176㎝ 体重:68㎏
車格は小さく、感覚的に400NKかそれ以下に感じる。
重心が低いせいで取り回しも軽く、小柄な女性でも扱いやすい。
ハンドルの低い弱前傾の姿勢だが、ヒザは意外にラク。
リラックスしたライディングができる。
ただ、ボクの体格だとスネがFIに当たりそうだ。
DETAILS
V7スペシャル同様、スタイリングは基本的に従来型のものを引き継いだもの。
セパレート風のハンドル、バイザー付きのゼッケンプレート、ゼッケンプレート付きシングルシートカウルでカフェレーサースタイルとしており、2014モデルではシート表皮がブラウンになった。
50HPを発揮する新エンジンを、スペシャル、ストーンに続いて採用。
昨年には構成パーツの70%以上、パーツ点数にして200点以上がリニューアルされ、より元気になった。
メーターユニットはシリーズ共通となる、クラシカルな丸型の2眼式。
左右の液晶は、左がオド/トリップ、右が外気温/時計を表示する。
フロントホイールは前後ともスポーク。
フォークはインナーチューブ40㎜の正立で、ブレーキは320㎜ディスクにブレンボキャリパーの組み合わせ。駆動方式は他のモデルと同様のシャフトドライブ。
リアショックはビチューボ製のものを標準装備として、豪華な仕上げとなっている。
--●PHOTO:南 孝幸