最強の名を欲しいままにした輸出仕様のパワー、197PSをそのまま国内仕様でも実現。ETCを標準装備するなど、専用装備を充実させながら、156万円という魅力的なプライスも実現していた。
余裕のパワーが生み出す扱いやすさが秀逸
ついに国内仕様のハヤブサが登場した。
以前紹介した輸出仕様との違いは、JRCのETCを標準装備したことと、180㎞/hで作動する速度リミッターが付いたこと。それと、驚く程「静か」なことだ。
他はエンジンから車体、足回りまで、すべてが輸出仕様と同じ。
197PSという強烈なパワーも魅力だ。300㎞/h出すことよりも、それが可能な「力の余裕」を手に入れたいと望むライダーが多かったことが「フルパワースペック」に拘った国内仕様を実現させたのだ。待ちこがれた「ホンモノの国内仕様」の登場である。
このクラスのビッグバイクは足回りのナラシがすごく重要だ。
しっかりとサスに当たりががついて、滑らかに動くかどうかで乗り心地だけでなく、ハンドリングにまで大きな影響が出る。
その点、今回の試乗車はスズキが十分なナラシを行なってくれていた。
DLCコートされたフォークは間違いなくこのクラスで最も滑らかに動くし、リアも低速域からかなりしなやかだ。
ハヤブサはこのタイプの足回りになって、走りの性格を少し変えた。
ダイレクトさより、乗り心地やハンドリングの落ち着きを優先するようなキャラクターになっている。
唯一のライバル、ZX-14Rより少しゴロリとした手応えのあるハンドリングだが、動き出すと素直で、そこそこ俊敏なフットワークをする。
峠でもリッターSSより身構えずに扱える。動きが軽いのだ。
エンジンもトルクがあるから回さなくていい。100㎞/h・6速ではたったの3400回転しか回ってない。
それでも、そこからスロットルひとつで、リッターSSがシフトダウンしたときより強烈なダッシュを開始する。これがトルクみなぎる「無敵パワー」の威力なのだ。
排気音もそうだが、車体から漏れ聞こえるエンジンの音を含め、国内仕様は明らかに輸出仕様より静かになっている。でも力はある。しかも従順な、まぎれもない怪物パワーだ。
それで十分だろう。
パワーモード切り替えのS-DMSは、フルパワーのAモードにしておいても大丈夫。
輸出仕様と同様に、エンジンのレスポンス特性が優秀で、街中から峠まで何不自由なく使える。
他のモードは路面状況で使い分ければいい。
ハヤブサは近年、その万能性がかなりフレンドリーになった。
今度は、それを日本でも満喫できるチャンスがやって来たのだ。
SPECIFCAITON
主要諸元
全長×全幅×全高 2190×735×1165mm
ホイールベース 1480㎜
シート高 805㎜
車両重量 266㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量 1339㏄
ボア×ストローク 81×65㎜
圧縮比 12.5
最高出力 197PS/9500rpm
最大トルク 15.8kg-m/7200rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 21ℓ
キャスター角/トレール 23°25′/93㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ320㎜ダブルディスク・φ260㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・190/50ZR17
RIDING POSITION ●身長:176㎝ ●体重:68㎏
SSほどではないが、前傾度はそこそこ強め。
いざとなれば超高速、超強力なダッシュに耐えられる姿勢になっている。
小柄なライダーでも着座位置を選ぶことでフィットできる自由度があるが、大柄なライダーにもゆったりと構えられるゆとりがある。
DETAILS
デビュー以来15年にわたって貫かれる、独創のフォルム。
このフロントデザインも2007年から継承されているものだ。
国産車初となる装備がこのETC。
シート下に日本無線製のアンテナ別体式ETCユニットを設置、メーター中央の液晶にその状況を表示する。
写真の「ETC」は電源ONを意味し、カード挿入が正しければ下の「ERR」表示が消え、使用可能となる仕組みだ。
フロント同様、リアサスもKYB製をチョイス。
スイングアーム、ショックユニットは輸出仕様と同一で、ホイールトラベルは140㎜を確保している。
●PHOTO:赤松 孝/南 孝幸