ストレスなく移動できコーナリングで悦に入る
走り出しても、とにかくストレスがない。エンジンは、ビッグツインにありがちなゴツゴツ感とは無縁で、極低回転域でもスムーズに回っている。粘りも良く、6速、50㎞/hで走ることもできる。
怒涛のトルクをひけらかすことはなく、必要なだけのトルクを忠実に取り出すことができ、扱いやすい。
パワーモードは、"レイン"はもちろん"ロード"でも、至ってフレンドリーで、従順そのもの。
"ダイナミック"ではファイターらしいキャラに一変するが、それさえも右手のコントロール次第で従順になる。
オートシフターはスムーズかつイージーなシフトを可能とし、これはシフトダウンでも働いてくれる。
クラッチもスロットルも必要なく、小気味良い空吹かしを自動的に挟んでギヤを落とせるから、ミスもなくマシンは安定し、疲れもない。
そして、コーナリングがまた気持ちいい。
ゆったりとしたリズムでコントロールを実感しながらコーナーに入ると、荷重感覚や手応えが如実に四肢とお尻に伝わってくる。コーナリングに酔える感覚だ。
それに、豊かなストロークの前後サスペンションは路面を舐めるように追従。何とも心地良い。
多くの人が、バイクの魅力であるコーナリングの醍醐味に気付くことになるんじゃないかと思う。
縦置きクランクのジャイロ効果は、このエンジンでは他の軸と打ち消し合い、かつてほどのアクの強さはない。が、その個性までもが去勢されたわけではない。
ボクサーを一つの個性として、縦置きクランクによる安定感を走りに生かし、気負わずに楽しむことができるのだ。
DETAILS
シリンダヘッドを水冷としDOHC化した新エンジンは、すでにR1200GSやRTにも積まれているが、R1200Rではエアボックスやサイレンサーの変更で低中回転域が強化されている。
エンジンをフレームの剛性部材として利用して、軽量コンパクト化を図っている。
パラレバーは、シャフトドライブのリヤギヤケースをフローティング支持し、特有のリフトアップをなくすためのメカ。
04年型R1200GSからは、EVOに進化している。
LEDテールライトは、左右二つのC型グラブバーと呼応するようにダブルC型に点灯する。
スレンダーなテールまわりは、フォルムのみならず、跨りやすさにも貢献している。
アナログ速度計の右側に置かれた多機能TFT液晶パネルは、左ハンドルスイッチで表示内容を変更できる。
また周囲の明るさや昼夜によって、明るさや色が自動的に調節される。
文/和歌山利宏