抜群の乗り心地と力強い走りでライバル不在の魅力を放つ
278㏄になったMP3・ユアーバンはこれまでよりひとまわり小柄だ。
フロントのトレッド幅が狭くなったのに合わせ、デザインも一新。
随分と軽快なイメージになった。
走りもビックリするほど変わっていた。まず元気がいい。
このユアーバン採用されているクオーサーエンジンは、もともとピックアップがよくパワフルなのが魅力。その威力と、トレッド幅が狭まり、曲がることへの抵抗が少なくなったことで、身のこなしが格段に良くなっている。
感覚的で言うと、半分くらいの手応えで切り返しができ、リーンさせるときの特性が普通のバイクとあまり変わらなくなっていた。これにはビックリだ。
大柄な通常のMP3は、寝かす、切り返す、などの操作時にフロントの舵角が遅れたり、粘るような抵抗感を感じることが多かったが、ユアーバンにはそれがない。
またフルバンク時、ギャップを乗り越えた時に感じていた、左右の車輪がバラバラに動くような不安定感も相当減った。
フロントまわりのアライメントがかなり見直したのだろう。
このMP3のフロント懸架ユニットは、やはり横に平行に並んでシーソーのように動く2本のリンクが基本。トリシティと違うのは、サスペンションが片持ち式のリーディングリンク方式という点。
スクーターによく使われるリンクで、ストロークを大きく取ることは難しいが、強度と滑らかな動きを両立するシステムだ。
ただし、リンクの角度に合わせてホイールアクスルは弧を描いて動き、アライメントもかなり変わる。
これまでのMP3は、この方式のデメリットがギリギリの状況で顔を出していたように思うが、ユアーバンではそれが少なくなっているのが嬉しい。
もともと、乗り心地は並のスクーターなどよりはるかに良く、フロントの接地感もいい。
単なるコミューターとしてだけでなく、ツーリングにも使いたくなる乗り心地、ロードスポーツの250と遜色ない加速をする動力性能に素直なハンドリング。
これは特筆すべき魅力だ。
価格も85万3000円と、ビックリするほどは高くない。なかなか魅力的なスリーホイラーだと言える。
トリシティとは「守備範囲」が違うので直接は比較できない。
トリシティは100㎞/hくらいまで、MP3は140㎞/hくらいの速度レンジを想定した車体の造りになっている。
サスの動きや剛性バランスなど、決定的なパートのグレードが違う。
使われ方の想定が異なるので、単純に較べてみるのは、どちらに対しても失礼だと言えるだろう。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2040×760×1320㎜
ホイールベース 1440㎜
シート高 780㎜
車両重量 206㎏
エンジン形式 水冷4ストOHC4バルブ単気筒
総排気量 278㏄
ボア×ストローク 75×63㎜
圧縮比 11.1
最高出力 22.4HP/7500rpm
最大トルク 2.37㎏-m/6500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 10.8ℓ
キャスター角/トレール NA
変速機形式 Vベルト無段変速
ブレーキ形式 前・後 φ240㎜ダブルディスク・φ240㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 110/70-13・140/60-14
Riding Position
身長:176㎝ 体重:68㎏
着座時のヒザ周辺のスペースはミドルスクーターとしては少し狭め。
しかし、ヒザや上半身にはゆとりがあり、リラックスしたライポジだ。
シート高は高めだが、シート前部がスラントして低い形状なので、尻を少し前側にずらすことで足着き具合を調整可能。
長く乗っても疲れない。
DETAILS
フロントには独立懸架方式の「クアトロリンクサスペンション」を採用。
ボトムリンク式の2本のフロントサスペンションをシーソー状に動く2本の並行アームにジョイントし、素直なリーン特性と高い安定性を実現する。
エンジンは278㏄のクオーサーユニット。
高回転域での伸びに定評のあるエンジンだ。
インジェクションとの組み合わせで、最高出力は22.4HPを発揮する。
シート下のスペースは想像以上に容量が確保されている。
ヘルメットを1個置いても、この通り余裕がある。
開口部も大きいので、無造作に荷物を放り込めるから、通勤・通学にも便利だ。
コンパクトな車体幅に合わせ、フロントマスクも小型でスッキリしたものを採用、スポーティなムードに仕上げている。
ライトスモークのメーターバイザーも標準装備される。
●PHOTO:南 孝幸/森 浩輔 ●TEXT:宮崎敬一郎/太田安治/青木タカオ/本誌編集部