ポイントリーダー高橋巧の接触→オーバーラン→再スタート→スリップダウン→追い上げ→16位フィニッシュ、という誰も考えていなかったような展開で迎えたレース2、つまり今年の最終レース。
「僕にはもう、やることはひとつだけ」という高橋がスタートから飛ばしに飛ばして、ホールショットから逃げまくります。もう1周目から3秒もつけるような独走劇が始まりました。
スタートで2番手につけたのは水野。しかしオープニングラップのうちに秋吉耕佑(auテルルMotoUP)が2番手に浮上。3番手にこの時点のポイントリーダー中須賀克行、4番手以下に水野、野左根、渡辺一樹(ヨシムラスズキMOTUL)が続きます。
3周目には、高橋と2番手秋吉との差は6秒。5周目あたりには、秋吉の背後に中須賀&野左根デュオがつけ、秋吉の後退とともに後方から追い上げてきた渡辺が2番手争いに加わります。この高橋独走と野左根vs渡辺vs中須賀の2番手争いという時間帯がかなり長かったように思います。
高橋は後続を20秒ほども引き離し、3人の2番手争いも、一時は順位を2番手まで上げた渡辺のオーバーランで終了することになります。
結局、高橋が2番手以下を15秒引き離す圧勝で2019年シーズンは終了。2位中須賀、3位野佐根という結果となり、ポイントランキングでは、高橋が優勝で28ポイント加算して258P、中須賀が2位で25ポイントを加算して264ポイント。高橋、わずか6ポイント及ばず2年ぶり2回目のタイトル獲得ならず、中須賀が2年連続9回目のチャンピオンを獲得しました。
「レース1で転んで、もう終わったなぁ、と。最初は何を勘違いしたか、中須賀さんに30ポイントとか離されて終了したんだ、と思いましたけど、よく計算したらまだ9ポイント差だ、と思い直してレース2は頑張りました。レース2では勝ちましたが、気持ちを言葉にできないというか、素直に喜べないというか。レース2、僕がやるべきことは強さを見せて勝つことだけでした。チャンピオンを狙える位置で最終戦を迎えるという、めったにないチャンスではありましたが、それを取り逃がして本当に悔しいです。レース1の転倒が余計でしたね……とにかく僕の実力不足です」(高橋)
「レース1がああいうことになって、ランキングを逆転して、かえってプレッシャーがかかったレース2でした。鈴鹿はとにかく(高橋)巧くんが速いのはわかっていたし、なんとか一矢報いたいと。春の2&4で巧くんに速さを見せられて、それを追いかけて転んでしまうという失敗をやって、それをチーム一丸となって挽回できたのが本当にうれしい。レース2は、巧くんが逃げて、チャンピオンがかかっていないシーズン序盤とかだったら追っかけて行ったと思いますが、レース2はもう、チャンピオンがかかっていたし、チャンピオンを獲るっていうのはそれほど重いこと」(中須賀)
順当にいけばとか、なにごともなければ、11ポイントリードで最終戦を迎えた高橋のチャンピオン獲得の可能性が高い、とだれもが考えていたであろうレースでした。けれど、勝負の女神は時々いたずらをします。あの時、つまりレース1でもう少しだけ高橋がスタートで前に出られたら、レース2のように高橋の逃げ切りでレースが終わっていたかもしれません。あの時、1コーナーで3台が重なったとき、もう少しだけ高橋が引いていたら、3番手で2コーナーをクリアして、じっくり勝負すれば高橋の優勝だったかもしれません。それほど高橋は速かった!
それでも、11ポイントビハインドで迎えた中須賀のあきらめない心が、大逆転を呼び込んだ。
「諦めたら負けだもん。いいレースをして勝つつもりだったし、それでチャンピンを取り逃がしたら、その時はその時だって思ってた。本当に、最後の最後まで諦めんかったけんね」(中須賀)
中須賀、2年連続9回目のチャンピオンおめでとう! 高橋、2年ぶり2度目のチャンピオン取れずに残念! いい勝負でした、いいシーズンでした!
写真・文責/中村浩史