豪華なBMWのフラッグシップツアラーをベースにトライク化を施したこのマシンは、一体どのような乗り味に仕上がっているのだろう?
卓越した乗り味を生み出す絶妙な車体セッティング
さすがに側車やトライクに造詣の深い、サクマエンジニアリングのトライクだ。このK1600ベースのトライクは非常に完成度が高く、びっくりするほどよくできている。
バイクを改造して仕上げる、後2輪型のトライクは、操作系がバイクと同じというだけで、操縦方法や操縦特性は大きく違う。
バイクをリーンさせる代わりに、極低速ではハンドルを切って曲がり、車体に勢いがついた中高速では左右への荷重移動を利用する。
車体やタイヤのしなり、たわみを使って、俊敏に向きを変えるレーシングカートのような特性に近いが、重心はレーシングカートよりずっと高い。
だから、荷重移動を巧みに使えば、高速道路の車線変更などでフォーミュラカーのような俊敏な機動まで行なえる。
大らかでゆったりしているように見えて、実は4輪車などより繊細な動きもできる乗り物だ。
そのため、左右の後輪ユニットとバイクフレームとの剛性バランスや、各部のアライメントといった車体のセッティングが極めて重要になるのだ。乗りやすさや安定性などを大きく左右する。
サクマエンジニアリングのK1600GTLトライクは、この車体セッティングがすこぶるいいのだ。
極低速だと、車体の左右への揺れがハンドルに伝わる。
トライクなら多かれ少なかれそうなるのだが、このマシンはその揺れる力がマイルド。しかも、ある程度速度が乗ればまったく影響を受けなくなる。
さらに、後2輪の衝撃吸収力とコーナリング時のスタビリティが優秀で、クイックな機動をしてもなかなかインリフトしない。
このトライクの車体造りのポイントである、フロントのトレールを減らして車高も抑えたアライメント変更が効いているのだ。
左右輪のアンチスウェーバーとショックのバランスもよく吟味されている。これまで乗ったことのあるトライクで感じた印象とは大きく違った。こんなに安定していて扱いやすいトライクは初めてだ。
3輪車であるトライクは、バイクとも4輪とも違う、ちょっと変わった乗り物、と思う人も多いことだろう。でも、このK1600GTLトライクは気分よく、安心してツーリングできる快適なモデル。
トライクならではの操縦特性を知って「慣れ」を習得すれば、上質な乗り味のこのトライクをますます楽しめることだろう。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 3030×1500×1610㎜
ホイールベース 1900㎜
後輪トレッド幅 1250㎜
車両重量 670㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列6気筒
総排気量 1648㏄
ボア×ストローク/圧縮比 72×67.5㎜/12.2
最高出力 160PS/7750rpm
最大トルク 17.8㎏-m/5250rpm
燃料供給方式/燃料タンク容量 FI/26L
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 ディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・215/45R17
税込価格:330万円〜(改造費、予備検渡し)
ライディングポジションをチェック!
身長:176㎝ 体重:68㎏
ソファに座っているようにリラックスして長時間走れる。
1名乗車時ではオリジナルのK1600GTLより乗り心地はリアが硬いように感じられるが、タンデムユースや積載を考えると、これくらいが丁度いい感じになる。
木川田ステラの「タンデムCHECK!」
2輪のパワフルさと、4輪の安定感を兼ね備えた乗り味で、タンデムを最高に楽しむことができました!
基本的にシートの形状はベースのK1600GTLと同じだから座り心地は申し分ないし、トライクならではの安定感で、バイクに身を預けて存分に楽しむことができます。
一番走りを楽しめたのは高速道路のクルーズで、風を感じながら、絶大な安心感と、快適なシートのおかげで、まるで王様のような気分で楽しめました!
DETAILS
TEXT:宮崎 敬一郎、木川田ステラ、本誌編集部/PHOTO:南 孝幸