昨年、南米ペルーで行われた2019年のダカールラリーは、砂丘ステージが全体の70%を占め、例年以上に混戦のレースとなった。ダカール復帰7年目、運営を更に強化したホンダが、30年ぶりの優勝を目指し奮闘するも、絶対王者の壁を打ち破る事が出来ず、KTMは前人未到の18連覇を達成したのだった。2020年のダカールはレースの舞台を南米ペルーから中東サウジアラビアに移しての開催となる。「2020年ダカールラリー」の開幕前に、昨年の「ダカールラリー2019」を振り返ってみたい。

「後半戦は総合順位は常に入れ替わる混戦レース」

砂丘ステージが続くダカールらしいコース

画像: ステージ5が終了すると翌日はレースが行なわれないレストディとなるが、メカニック達はマシンの整備に余念がない。

ステージ5が終了すると翌日はレースが行なわれないレストディとなるが、メカニック達はマシンの整備に余念がない。

レストディを挟み、後半戦のステージ6は838kmを走る、今回で最も長いコース。

スペシャルステージは70%以上がサンド路面であり、太平洋沿いに広がるタナカ砂丘を含む4つの砂丘エリアを通過しなければならないという、今大会、最もタフなルートとなった。

画像: 前半戦を走り終えたライダー達にとっては束の間の休息となるレストディ。マッサージやストレッチなどを行いながら、後半のレースに備える。もちろん翌日からのルートチェックも欠かせない。

前半戦を走り終えたライダー達にとっては束の間の休息となるレストディ。マッサージやストレッチなどを行いながら、後半のレースに備える。もちろん翌日からのルートチェックも欠かせない。

このステージはペルー独特の非常に柔らかい砂が強風によって舞い上がり、視界を遮ることでライダーにとっては厳しい闘いに。

画像: このステージは一人ずつ2〜3分おきにスタートするラリー方式ではなく、10台数が一列に並びでスタートするモトクロススタイルのステージ。より白熱した競い合いが見物となる。

このステージは一人ずつ2〜3分おきにスタートするラリー方式ではなく、10台数が一列に並びでスタートするモトクロススタイルのステージ。より白熱した競い合いが見物となる。

更に、ライダーが必ず通過しなければならない「ウェイポイント(ルート上に設定されたGPSの通過ポイント)」が7つ設定され、ライダーたちは、そのウェイポイント探しに苦労するという、トリッキーなナビゲーションルートとなった。

画像: 転倒して負傷したシェルコのライダーを救済するA.ファン・ビファレン(ヤマハ)。ダカールラリーではライバル同士でも助け合いが行なわれ、フェアプレイでタイムロスしたライダーにはタイムが加算されないように救済措置がとられることもある。

転倒して負傷したシェルコのライダーを救済するA.ファン・ビファレン(ヤマハ)。ダカールラリーではライバル同士でも助け合いが行なわれ、フェアプレイでタイムロスしたライダーにはタイムが加算されないように救済措置がとられることもある。

ダカールラリーがおこなれている1月は、日本では真冬であるが、地球の反対側に位置する南米ペルーは真夏。気温40℃に達するとも言われる暑さが更にライダーたちを苦しめた。

画像: ステージ6を見事1位でクリアした、ハスクバーナのパブロ•クインタニラ。この時点で総合順位トップまで躍り出た。

ステージ6を見事1位でクリアした、ハスクバーナのパブロ•クインタニラ。この時点で総合順位トップまで躍り出た。

ホンダワークスチームに再び訪れた「不運」

ダカールラリーも終盤に差し掛かったステージ8で、ホンダワークスチームに更なる不運が襲いかかる。

順調にレースを続けていたケビン•ベナバイズが、コマ図以外の「指示書」をレース中に所有していたというルール違反で、3時間ものペナルティが課せられてしまう。

画像: これまで順調なレース展開で総合1位をキープしていたリッキー•ブラベック(ホンダ)が、エンジントラブルで走行不能となり、無念のリタイア。ステージ8で姿を消す事になってしまう。

これまで順調なレース展開で総合1位をキープしていたリッキー•ブラベック(ホンダ)が、エンジントラブルで走行不能となり、無念のリタイア。ステージ8で姿を消す事になってしまう。

ホンダチームは主催者に協議を行なったが、最終結果として、このタイムロスが覆ることはなかった。この時点で優勝候補のひとりだったベナバイズは、順位を大幅に落としてしまう。

更に、これまで総合1位をキープしていたホンダのエース、リッキー•ブラベックがステージ8の難コースを走行中に、予期せぬエンジントラブルに見舞われ、レース続行が不可能となり、無念のリタイアとなってしまったのだ。

画像: #ゼッケン10 若手ラリーストのホセ•イグナシオ•コルネホ。

#ゼッケン10 若手ラリーストのホセ•イグナシオ•コルネホ。

ホンダのトップランカーがリタイアするという不運によって、残されたホンダワークスチームの期待は、若手ラリーストのホセ•イグナシオ•コルネホに委ねられた。

高順位だったライダー達も次々とリタイヤしてしまう…

画像: 安定したライディングテクニックで総合順位トップ5内にキープし続け、ステージ8まで総合4位だったヤマハのエイドリアン•ファン•ビファレンが不運のマシントラブルで走行不能となり、まさかのリタイア。ダカールラリーは最後まで何が起こるか分からない。

安定したライディングテクニックで総合順位トップ5内にキープし続け、ステージ8まで総合4位だったヤマハのエイドリアン•ファン•ビファレンが不運のマシントラブルで走行不能となり、まさかのリタイア。ダカールラリーは最後まで何が起こるか分からない。

終盤ステージでKTMが追い上げをかける

画像: 終盤ステージでKTMが追い上げをかける

やはり最後で強かったのはKTMだった。

レース終盤で徐々に順位を上げていったトビープライスは、左手を負傷していたにも関わらず、ラストステージで首位に立ち、33時間57分という素晴らしいタイムで総合優勝に輝き、KTMをダカールラリー18連覇に導いたのだ。

KTMがワン•ツー•スリー フィニッシュ! 前人未踏の18連覇達成!

KMTのチームメートで昨年のダカール覇者であるマティアス•ウォークナーも、後半のステージで王者の強さをみせ、総合2位でフィニッシュ。

更に、2017年の優勝者サム・サンダーランドが3位でゴールしたことで、KTMは、これまで誰も成し遂げていないダカールラリーをワン•ツー•スリー フィニッシュするという偉業を成し遂げたのだった。

画像: 左手を骨折しながらも見事総合優勝を果たしたトビー•プライス(左)と、総合2位のマティアス•ウォークナー(右)。共にダカールラリーの常勝ライダーだ。

左手を骨折しながらも見事総合優勝を果たしたトビー•プライス(左)と、総合2位のマティアス•ウォークナー(右)。共にダカールラリーの常勝ライダーだ。

画像: 3位にもKTMのサム•サンダーランドが入賞し、KTMファクトリーライダーがワン•ツー•スリーフィニッシュを決めると言う快挙を成し遂げた。

3位にもKTMのサム•サンダーランドが入賞し、KTMファクトリーライダーがワン•ツー•スリーフィニッシュを決めると言う快挙を成し遂げた。

画像: KTM450Rallyを操る女性ライダー、ライア•サンツは、男性陣に混じって総合11位という驚異の成績を残した。表彰台に立てる日も近いだろう。

KTM450Rallyを操る女性ライダー、ライア•サンツは、男性陣に混じって総合11位という驚異の成績を残した。表彰台に立てる日も近いだろう。

HONDA 復活7年目 惜しくも7位

画像: ファクトリーライダー5名の内、3人が惜しくもリタイアとなってしまったホンダだが、24歳の若手ラリースト、ホセ・イグナシオ・コルネホが、ステージ10を2位で突破し、総合7位でダカールラリー2019を終えることができた。

ファクトリーライダー5名の内、3人が惜しくもリタイアとなってしまったホンダだが、24歳の若手ラリースト、ホセ・イグナシオ・コルネホが、ステージ10を2位で突破し、総合7位でダカールラリー2019を終えることができた。

10日間、5500kmを走りきって74人のライダーが完走‼

画像: 10日間、5500kmを走りきって74人のライダーが完走‼

「ラリー」と言う言葉には「再び戻って来る」と言う意味が込められている。

ペルーのリマからスタートした「世界一過酷なレース」に挑んだライダーたちは、計11日間、5500kmを超す旅を終え、74名のライダーがゴール地のリマ海岸へ戻ってきた。

ダカールラリーは完走者全てが勝者である。彼らは来年もこの舞台に戻って来るだろう。

ダカールラリー2019 総合ランキング

1位 トビー.プライス(KTM) 33:57'16
2位 マティアス.ウォークナー(KTM)34:06'29 +00:09'13
3位 サム.サンダーランド(KTM) 34:10'50 +00:13'34
4位 P.クインタニラ(ハスクバーナ)34:18'02 +00:20'46
5位 A.ショート(ハスクバーナ)34:41'26 +00:44'10
6位 X.ド・スルトレ(ヤマハ)34:51'16 +00:54'00
7位 ホセ・イグナシオ・コルネホ(ホンダ)35:05'22 +01:08'06
8位 L.ベナバイズ(KTM)35:06'26 + 01:09'10
9位 オリオール.メナ(HERO)36:05'57 + 02:08'41
10位 ダニエル・ノジリア(ホンダ)36:29'09 +02:31'53

PHOTO:ASO、KTM、HRC TEXT:岩瀬孝昌

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