排気量850cc、空冷縦置OHV2バルブV型2気筒エンジンと聞くとV9系がベースと思われそうだが、V85TT用のエンジンはシリンダーヘッドからクランクケースまで完全なる新設計。レーシングマシンに使われるチタンなどの素材も使用して最高出力80HPという強力なパワーを発揮。クランクケースはフレームの強度メンバーとして利用することを前提にデザインされ、潤滑系も信頼性を高める贅沢な造りを採用。
TFTカラー液晶ディスプレイを採用したデジタルメーターは速度をはじめとするメーターとしての多彩な表示が可能な上に、さまざまな機能を操作することにも使用される。背景と色は、外部の環境が変化しても内蔵センサーの働きによって最適に調整。マルチメディアプラットフォームであるMIAは、オプションのECUを介してスマートフォンを接続し、機能を拡張することができる。
パリダカを戦っていた往年のモト・グッツィ製ラリーマシンを想わせる、容量21Lという大きなサイズの燃料タンクを装備していて、約400kmの航続距離を想定している。ライダーとの一体感を重視した人間工学的なデザインに、フロントフォークとの干渉を避ける逃げや、シリンダーヘッドをクリアする凹みなどが加わった複雑な形状となっている。
テールランプには印象的な二眼デザインを採用していて、光源はウインカーも合わせて全てLED。頑丈なスチールパイプ製のタンデムグリップは、リアキャリアも兼ねたもの。さらにオプションのパニアケースやトップケースを装着するためのマウントも備えていて、積載能力を拡張可能。
インナーチューブ径Φ41㎜の倒立フロントフォークは、プリロードとリバウンドダンパーの調整が可能。フロントのブレーキは320㎜ステンレス製ローターと、Brembo製対向4ピストンラジアルマウントキャリパーをダブルで装備し、マルチマップタイプのコンチネンタル製ABSシステムでコントロールされる。
ライダーを走行風による疲労から守る優れたウインドプロテクション性能を実現するために、風洞実験を繰り返して形状を決定したスモーク仕上げの大型ウインドスクリーン。 往年のラリーマシンを想わせる大径の丸型ヘッドライトをデュアルで装備するが、中身は最新スペックのLEDヘッドライト。フロントフェンダーもパリダカ風味だ。
このクラスのアドベンチャーツアラーとしては唯一シャフトドライブを採用する。右側スイングアーム内には、ドライブシャフトとミッションが収められていてる。車体右側にオフセットしてマウントされているモノショックのリアサスは、プリロードと減衰力の調整が可能。ホイールトラベルは前後共に約170mmを確保。
着座時の快適性に加えて、オフロード走行時のスタンディング姿勢での動きやすさも両立させるために、ライダーとシートの接触範囲について幅広い研究を行って開発されたシート。シート高は830mmに抑えられ、車体の形状にも配慮することで優れた足着き性を実現。シートの下には実用的な収納スペースも用意されている。
無理なくグリップを握れる適切な腕の曲がり具合を得れるように、調整式のハンドルバーを装備。悪天候や寒さから手を保護するためにグリップガードも備えている。ハンドル左スイッチボックスには標準装備のクルーズコントロールのスイッチ、右スイッチボックスにはライディングモードの切り替えスイッチが配置されている。
全長×全幅×全高 : 2240×950×1300mm
ホイールベース : 1530mm
シート高 : 830mm
車両重量 : 229kg
総排気量 : 853cc
ボア×ストローク : 84×77mm
最高出力 : 80HP/7750rpm
最大トルク : 8.1kgm/5000rpm
燃料供給方式 : FI
燃料タンク容量 : 21L
変速機形式 : 6速リターン
タイヤサイズ前・後 : 110/80-19・150/70-17
価格 : 142万4500円~145万2000円(税込
撮影:柴田直行 モデル:ちぱる 文:ちぱる/小松信夫/編集部
動画:葉月美優さんのインプレッションはコチラから!
協力:MOTO GUZZI