選択肢も出そろった250㏄アドベンチャー。中でもスズキVストローム250は我が道を往く個性にあふれている。ロードスポーツ転用のアドベンチャーが手にした最大のメリット、「ロングツーリング」にスポットを当てたモデルなのだ。
※月刊オートバイ2019年7月号掲載「現行車再検証」より

スマッシュヒットのVストローム250/ABSはアドベンチャーモデルじゃなかった?

BMWのGSシリーズ、そして日本でのCRF1000Lアフリカツインのヒットを契機に「アドベンチャー」というカテゴリーが脚光を浴びて数年。

もともとビッグバイクのカテゴリーだったアドベンチャーが、身近なクラスである250㏄に飛び火することになる。

250ccクラスでは、ロードスポーツのラインアップが一巡したこともあり、次のカテゴリーとして、各社ともアドベンチャーモデルを開発、ラインアップを増やしたのだろう。

ホンダはCRF250ラリー、カワサキはヴェルシスX、そしてヤマハはセローをベースにツーリングセローというキットパーツ組み込みモデルを発売。そこにスズキが投入したのが、Vストローム250だった。

画像: Honda CRF250 RALLY(2020年現行モデル)/消費税10%込71万5,000円

Honda CRF250 RALLY(2020年現行モデル)/消費税10%込71万5,000円

画像: KAWASAKI VERSYS-X 250 TOURER(2020年はサイドケース標準装備の「TOURER」のみ展開)/消費税10%込70万4,000円(フォグランプはオプションパーツ)

KAWASAKI VERSYS-X 250 TOURER(2020年はサイドケース標準装備の「TOURER」のみ展開)/消費税10%込70万4,000円(フォグランプはオプションパーツ)

画像: YAMAHA TOURING SEROW(2020年現行モデル)/消費税10%込64万4,600円

YAMAHA TOURING SEROW(2020年現行モデル)/消費税10%込64万4,600円

画像: SUZUKI V-Storom250 ABS(2020年現行モデル)/消費税10%込61万3,800円(ABS非搭載車は58万800円)

SUZUKI V-Storom250 ABS(2020年現行モデル)/消費税10%込61万3,800円(ABS非搭載車は58万800円)

ロードスポーツGSR250Sをベースに、大変更をすることなく、主にスタイリングをアドベンチャーとしたVストローム250は、当のスズキも驚くビッグヒットとなったのだ。

2017年7月に発売されるや、月間販売ランキングの上位にをキープ、年間約2500台を販売。Vストローム250が発売されてからの12か月間で比較すると、ロードスポーツGSX250Rをしのぐ販売を見せたのだ。

画像: SUZUKI GSX250R(2020年現行モデル)/消費税10%込53万6,800円

SUZUKI GSX250R(2020年現行モデル)/消費税10%込53万6,800円

ファン層を選ぶオフロード的なモデルとして、これは大ヒットと言っていい数字。250㏄らしからぬどっしりとしたスタイリング、スズキVストロームファミリー感の強いクチバシ状ノーズ、さらにナックルガードやエンジンガードプレート、センタースタンドの標準装備など、見るからにタフなパッケージも魅力的だったのだろう。

画像1: スマッシュヒットのVストローム250/ABSはアドベンチャーモデルじゃなかった?

しかし、試乗してみると疑問がひとつ。それは、Vストローム250は「アドベンチャー」というカテゴリーに属さないんじゃないか——ということだった。

ロードスポーツGSR250Sをベースとしたことで、前後タイヤサイズもGSRと同じ、さらに189㎏もの車両重量は、同じく並列2気筒エンジンを積むヴェルシスXと比べて約15㎏、これが単気筒エンジン車CRFラリーと比べると30㎏以上も重い。オフロードを含めたタフツーリングバイク的なイメージのあるアドベンチャーとは、なかなかに遠いキャラクターだ。

画像2: スマッシュヒットのVストローム250/ABSはアドベンチャーモデルじゃなかった?

街乗りに、高速道路を含めたツーリングに乗りまわしてみると、新しい発見もあった。これは、スズキが「あること」に特化させたモデルなのだ。

街乗りでの不満がことごとく解消する

画像1: 街乗りでの不満がことごとく解消する

エンジンをかけると、Vストローム250は本当に静かだ。ストトトトト、という感じに穏やかで、アクセルのツキも決してシャープではない。ライダーを威圧する感じがまったくないのだ。

車重も、停止している時にはドッシリ感じるものの、これは走り出してしまえば全く問題ないレベル。実は、これがVストロームのキャラクターのひとつなんだけれど、それは後述。

画像2: 街乗りでの不満がことごとく解消する

そして走り出すと、やはり最初はエンジンの反応に物足りなさを感じる。アクセルを開けても、ワンテンポ遅れてついてくるタイプで、よく言うと穏やか、悪く言うとモッサリした特性。

けれど低回転からトルクはよく出ているエンジンで、発進はとにかくイージー。50㎞/hくらいまではスピードに乗せるのが簡単で、これは初めてオートバイに乗る層、リターンライダーたちに不安を一切抱かせないだろう。ただし、そのぶん経験のあるライダー、ベテラン層には物足りないかもしれない。

そしてVストローム250が良さを発揮するのは、やはりツーリングのシーンだ。ローギアのゼロ発進から加速して行って、6速6000回転でスピードは80㎞/hに届くセッティング。これが100㎞/hで走ろうとすると、エンジン回転数は7600回転まで上がってしまって、エンジンがうなり出す。

画像3: 街乗りでの不満がことごとく解消する

そう、Vストローム250はトップギア80㎞/hでずっと走り続けたいオートバイなのだ。止まっている時には重さを感じたボディも、このスピード域で頼もしい安定性を発揮する。そうか、これが狙いの車重だったのか!

簡単に考えても、センタースタンドを標準装備としないだけで簡単に車重が減るんだから、あえての重量189㎏。高速道路やバイパスで6速6000回転で走って初めて、この良さがわかるというわけだ。

画像4: 街乗りでの不満がことごとく解消する

シートは厚く、サスペンションも動きがソフト。これは、街乗りではもっさりした反応に感じるけれど、このスピード域で本当に快適になる。

アクセルへのツキがシャープでないことも、定速クルージングで快適だ。多少のスロットルの開閉で車速が変わらないのは、クルージングでよけいね気を使わなくて済むからね。

街乗りで不満だったいくつもの項目が、ことごとくツーリングシーンで解消していく。これがVストローム250の正体だった。

限られた休みにエコツーリングを極める

画像1: 限られた休みにエコツーリングを極める

今回は街乗りもしたし、渋滞路も走ったし、高速道路で距離を延ばすシーンでの試乗もしてみた。やはり、ツーリングに出ると、Vストローム250のよさを感じられて、なるほどスズキは、このオートバイを250㏄のツーリングキングに特化させたいのだな、と感じた。

高速道路を走っていると、ライダーは路面の継ぎ目の通過ショックや風圧との戦いを強いられることになる。不意の横風でバイクが左右に持って行かれたり、レーンチェンジでユラッと振れがあって不安になったり。そういうところが、まったく気にならない。

80㎞/hで走っていても、その時の安定感はひとクラス上のもので、400㏄や650㏄的とまで言っていいかも。スピードを出してひゅんひゅんと俊敏に動くより、一定速度でどこまでも距離を伸ばしたい——そういう用途に向いているのだ。

画像2: 限られた休みにエコツーリングを極める

その時の燃費も、さすがの数値だった。Vストロームは250㏄にしては大きめの17Lタンクを備えていて、デジタルディスプレイの燃費計が常時25㎞/L以上を越えていることから、満タンでどこまで行けるか、少しトライしてみたんだけれど、6速80㎞/hを守っていると、トリップメーターは300㎞を越え400㎞に届き、残り少なくなった燃料計の目盛りもほとんど動かなくなってしまって、心配になって入れると400㎞で12.5Lほど入った。

つまり、この時の燃費は32㎞/L。それでも計算上はあと5L近くガソリンが残っていて、このペースなら、あと140㎞は走るのだ。計算上は1タンク500㎞をクリアすることになる。これもVストローム250に与えられたツーリング性能なのだ。

画像3: 限られた休みにエコツーリングを極める

少しダート路面も走ったけれど、GSX250Rと同じサイズのホイール、前後タイヤのため、オフロードの走破性は高くはない。ただし、柔らか目のサスペンションと上体のたったポジションなら、不意のダートに躊躇することはないだろう。あくまでもペースは抑えめにね。

物足りないな、と感じた気持ちはどこへやら。一定スピードで距離を延ばす楽しさを教えてくれたVストローム250。

車両価格がライバルたちと比べてお手頃なのも魅力。エコツーリング好きの人は、もうVストローム250を選んでいる!

文:中村浩史/写真:島村栄二

This article is a sponsored article by
''.