革製品のメンテナンスは意外なほど簡単!
「革はデリケートな天然素材なので、汚れ落としや保革、保管方法が難しい」というイメージが蔓延している。
ライディングウエアの主流になっているナイロン素材なら水濡れや紫外線による素材の変質がなく、洗濯も家庭用洗濯機で行える。扱いやすさという点で見れば、ナイロン生地は優れた特性を備えているのだ。それだけに革素材の高い質感や安全性に魅力を感じても、扱いの難しさが気になって買う決心が付かない人も多いだろう。
だが、ライディングウエアとして作られている革製品は、そのほとんどが原皮の選定からなめし加工、染色加工までライディング用途に適した方法で行われている。扱いにことさら神経質になる必要はなく、普通に着ているならほぼノーメンテナンスでいい。
今回は革製品のプロ中のプロであるクシタニの広報・櫛谷信夫さんに『自分で行えるメンテナンス』についてお話を伺ったが、櫛谷さんが15年近く着ている革ジャケットは「表面に汚れが付いたときに固く絞ったタオルで拭く程度で、特別なケアはしたことがありません」とのこと。
同社の革ジャケット/パンツなどに採用している『エグザリートレザー』なら、「撥水性が高いので汚れが付きにくく、カビの発生もほとんどない」という。
ここからは革製品のDIYメンテナンス方法を紹介するが、特別な技術や道具は不要。革製品は意外に扱いやすいことが判るはずだ。
Q.1 乾燥している気がしたら?
「少しカサ付いているかな?」というレベルならローションタイプのレザニングやミンクオイルスプレーを拭き伸ばせば充分。ベタベタになるまで付けるとカビの原因にもなる。
Q.2 一日着たあとも何もしなくていいの?
雨や汗で濡れた場合は風通しのいい場所で陰干し。乾いたらブラシで表面の埃を払う程度で充分。起毛部分が潰れたり寝てしまったら、ブラシを使って逆立てればOKだ。
Q.3 虫などの汚れがついた時は?
固く絞ったタオルで拭けばほとんどの虫汚れは落とせる。マイクロファイバークロスを使えばより効果的だが、摩擦力が強いので色落ちしないよう、力加減に注意すること。
Q.4 水拭きで汚れが落ちない場合は?
虫汚れや油汚れを浮かして落とす「レザークリーン」の使用がお薦め。頑固な汚れは一気に落とそうとせず、何回かに分けて徐々に落とすと革の表面にダメージを与えにくい。
Q.5 黒ズミを落とす裏技とかありますか?
襟や袖の黒ずみ落としに有効なのが消しゴム。柔らかめの消しゴムで軽く擦り、消しゴム掛けした部分をぼかすように仕上げる。
虫汚れ、油汚れにも有効だ。砂消しゴムは革表面の色まで削り落としてしまうので使用しないこと。
Q.6 ブーツの傷が気になります
靴墨を塗り込んでもいいが、テカテカに仕上がって質感が変わることがある。黒のブーツやグローブなら染料入りのレザークリームがお薦め。
傷部分に重点的に塗り込んでから全体に伸ばせば自然な仕上がりになる。
Q.7 グローブに適したお手入れは?
マスタングペーストやラナパーが使いやすい。ウエスかスポンジに付けて軽く擦りながら全体に伸ばせば艶が蘇り、防水性も得られる。操作性を悪くするので付け過ぎないように。
Q.8 革ジャンの保管方法は?
革製品の保管時に心配になるのがカビの発生。カビは水分(湿度)と高めの温度という二つの条件が揃うと発生する。
ビニール袋に密閉保管する人もいるが、革の中は水分が残っているので、逆に袋の中で蒸れてカビの発生を誘発する。強い日差しを浴び続けると変色することもあるから、室内の風通しのいい場所に吊しておくといい。太めのハンガーを使うと肩回りの型崩れも防げる。
取材協力:クシタニプロショップ世田谷店
各種クシタニ製品の販売、オーダースーツの受付や修理、メンテナンスまで行うのがクシタニのプロショップ。
北は仙台から南は福岡まで、20店舗以上のネットワークでユーザーの要望に応えてくれる。今回は国道246号と環状八号線の瀬田交差点にほど近い世田谷店にお邪魔してお話を伺った。
文:太田安治/モデル:梅本まどか/写真:南 孝幸