※この記事は2013年に取材を行なったものです。また、この記事は不要不急の外出やツーリングを推奨するものではありません。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、皆様もどうか不要不急の外出はお控えくださいますよう、ご協力よろしくお願いいたします。
東京から800km先の島根県、深夜の出発で宍道湖の夕日を狙う!
平成の名車について写真とともに語るはずのこのコラムだが、今回も調子に乗って弾丸ツーリング第3弾の話を書く。
九州佐多岬、北海道宗谷岬への24時間チャレンジは2012年に発行されたゴーグル誌での記事。今回のツーリングはその翌年で、目的地は島根県の出雲大社だ。東京からバイクで行こうと思う人はあまりいないだろう。
もしもこれを読んでる人で自分も遠方からバイクで出雲に訪れた事のある人は、webオートバイのtwitterに「俺も行ったぞ」と書き込んでいただきたい。
旅の相棒は6気筒のツアラー、BMW K1600GT。九州佐多岬への弾丸ツーリングではK1600GTLだった。「何が違うの?」と言ったあなたへ。
BMWオフィシャルサイトの言葉を借りるとGTLは「唯一無二のバイクのファーストクラス」。GTは「リラックスしながらダイナミック」。自分的にはゴージャス+スポーティなGTがよりフォトジェニックだと思う。
K1600は別の仕事で長距離を乗せてもらった。驚いたのは60kmと100kmが同じくらいの快適さ。でもスロットルを捻ると160馬力のBMW6気筒のエンジンが吠えて、一気にアドレナリンが沸騰。気持ち良すぎる排気音に、トンネルの度についつい右手がカチッというところまで回ってしまう。さらに攻めやすいのに安定感がある。大柄なのに細かいワインディングでも操作感が楽しめた。
そんなK1600GTでまず目指したのは出雲市の隣の松江市。ここには「日本一きれいな夕日スポット」と呼び声も高い宍道湖がある。
松江市の観光ウェブサイトには毎日「宍道湖の夕日指数」が掲載されるほど。この宍道湖でK1600GTと夕日の写真を撮るのが今回の第一目標。
東京から800km。出発は午前1時。車両撮影等の時間を考慮しても、夕方には余裕で間に合う。「たったの800km」と思えるのは、2度の24時間1600kmの旅の経験から来るもの。
首都高を抜けてやがて新東名に。まずは新清水JCTにある道路脇LEDライトの前で並走撮影。サポートカーで追い越しながらの一発勝負。上手く撮れて気分良く西へ向かう。
無事に吹田JCTも通過し、一気に中国地方へ。津山を過ぎて米子自動車道を選んで日本海へ。初めて見る大山は翌日のお楽しみにとっておいて先を急ぐ。
早めに高速を降りて腹ごしらえしつつ「夕日を見るならここだ」という宍道湖の岸辺を見つけてスタンバイ。ところがあいにくの曇天。太陽が出なければ夕日もない。困った。明日の昼前には松江を離れてしまうので、撮影できるのはこの日の夕方1度だけ。
しかしここでも晴れ男ぶりを発揮し、雲間から太陽が出た。まさに「今だー!」と連写。この後に雨が降り出し、本当のワンチャンスをものにした。
雨降り直前とは思えない夕日カット。「どんなもんだ」と俺の鼻の穴はかなり広がっていたことだろう。
驚いたことに雨にも関わらず地元のアマチュアカメラマンの方々が、この撮影スポットの東屋に集まってくるではないか。聞けば晴れでも雨でも毎日、カメラや三脚持参で訪れるのだとか。いやいや頭が下がります。
そんな地元のカメラマンおじさんに褒めて欲しくて「これ雨が降る前に撮ったんですよ」と、さっき撮った写真を見せる俺。「よく撮れてますねぇ」と褒めてくれるおじさん。さらに鼻の穴が広がる俺。
ライダー担当の編集者が「普段はどんな感じの夕日なんですか?」と尋ねると、おじさんはカメラバッグからアルバムを取り出し、傑作集を見せてくれた。
これが本当に綺麗。西の空に沈む夕日と雲、それが映る宍道湖の湖面。まさに日本一の情景。そして沈んで行くに従ってオレンジから紫や青へと変わっていく。
広がっていた鼻の穴が急激に縮まる俺。毎日来ているカメラマンさんにはかないません。素直にリスペクトです。いつかバイクで訪れて最高の夕日を撮ってみたい。こんな夢があってもいいよな。
写真・文:柴田直行
柴田直行/プロフィール
柴田直行 しばたなおゆき
1963年3月生まれ
横浜市在住
オートバイとライダーをカッコ良く撮るのを生業にしているカメラマンです。
ホンダVT250Fが発売になった1982年(19歳の頃)にオートバイブームに乗じて雑誌編集部にバイトで潜入。
スズキGSX-R750発売の翌年1986年に取材のため渡米。
デイトナでヤマハFZ750+ローソンの優勝に痺れてアメリカ大好きに。
ホンダCRM250R発売の1994年に仲間とモトクロス専門誌を創刊して、米国系オフロードにどっぷり。
カワサキニンジャ250が発表された2007年から、ゴーグル誌でも撮影を担当し現在に至る。
オンでもオフでも、レースでもツーリングでもオートバイライフが全部好き。