「ナナハンは大型バイクの象徴」と感じる意識は確かにある。そここからさらに掘り下げると、時代と共に変わっていき、別の形で存在感を発揮していったことが分かる。改めて感じる魅力だ。

撮影●鈴木広一郎 文●林 勝二 車両協力● UEMATSU /本種正和 衣装協力● KADOYA 情報提供● ミスター・バイクBG

近代化の中、明確に残された「らしさ」

画像1: 近代化の中、明確に残された「らしさ」

思い返せば、自分は限定解除を果たしてから、ナナハンばかりを所有してきている(といっても2台なのだが)。最初はそのルックスとスポーツ性に憧れ「いいな」と思った1985年式FZ750。このモデルの定番カスタム手法といえば、FZR1000のエンジンへの換装。

だが、足周りは変更したものの心臓部はそのままとした。続いて購入したのが、同じヤマハのGX750(1976年式)。こちらは「ゆっくり走りたい」という願望のもと、ほぼノーマルを目指して整備した。

昭和40年産まれの自分は、「ナナハンへの憧れ」を強烈に持っていた訳ではない。が、結果として選んでいる。なぜなのか。気付かぬ内に、良く言われる「ナナハンならではの楽しさ」に身体が呼応していたのではないかと、今思うのだ。リッターバイクにはリッターバイクとしての面白さがあり、強烈なトルクとパワーで車体を引っ張っていく。

それに対してナナハンは排気量差の分だけパワー&トルク値は下になる。それなりに速く走ろうと思えば、リッターバイクよりもアクセルワークとギアチェンジは多くなる……そこが楽しいと思ったのだろう。せわしないか? いや、違う。

いわば排気量と車体の絶妙なバランス。これはリッターバイクとはもちろん400とも違う、ナナハンでしか出せないものなのだ。それが顕著なのが、専用設計のナナハンモデルと言えるのではないだろうか。最初から排気量の上限を決めて設計する(もちろん許容範囲は設けるが)。

だから車体はリッターモデルよりもコンパクトになる。バイク市場でナナハンが市販車で最も大排気量とされた時代が終わった後「ナナハンの良さへの回帰」は、ますます強まっていったと思う。

画像2: 近代化の中、明確に残された「らしさ」

その一つが、エンジンベースを650とし発展させたモデル達だ。手法としての代表格は、カワサキのZ650から始まる「ザッパーシリーズ」といえる。クランクケース等の根幹部分は変えず、ナナハンとして見合った車体とする。

650と比べれば若干大きくはなっているが、従来のナナハンよりもコンパクトだった。Z650からZ750FX IIが産まれ、やがてIIIへ。そしてZ750GPとなった時に大幅なパワーアップを果たした。ザッパー系エンジンは充分な素地を持っていたのだ。

実はZ750GPに乗るのは初体験だ。自分自身は同じザッパー系の後のモデル・GPz750の素晴らしさを体感している。果たしそれと比べて少し古いGPはどうなのか。

跨って感じる操作位置は、やはりコンパクト。そしてクランクが横に長い直列4気筒エンジンによる重心を如実に感じる。エンジンの回り方は「ヒュンヒュン」ではなく「ズォォーッ」で、下から盛り上がって来る感触。

ゆっくりピストンが上下して低回転域からトルクを発揮する、他のクラスの空冷Zと相通じるフィーリングだ。この点GPz750は「もっと回る」仕様で、高回転域へ突き抜けていく感じなのだが……。

Z750GPも負けじとスポーティだった。若干の荒々しさを伴いながら高回転域に達し、車両を引っ張っていく。かつ、コーナーリングでは同年代同クラスの中では軽く、ホイールベースが短めの車体がポテンシャルを発揮する。

フロント19インチホイールならではの、寝かし込みが軽快で大きめのアールを描くアプローチを披露してくれるのだ。重厚感と運動性が、絶妙にバランスされていると感じさせた。リアサスがモノショックとなり、カウルも装備し車体がさらにスポーツ性へと特化していく前の、ツインショックモデルの一つの完成形といえるだろう。

Z750GP

画像: Z750GP

今回のZ750GP はビキニカウルを装着した北米仕様。そのデザインはZ1000R にとても良く似ているが、ホイールベースは65mm 短く、車重は5kg 軽い(ちなみにZ1100GPに対しては19kg 軽い)。

Z1000R1

画像: Z1000R1

Z1000R はリッタークラスの中でもかなり軽快だが、Z750GPはまた異なる小気味よさを持っている。

1982 KAWASKI Z750GP

画像: Z650 に対してボアは4mm 広く、カムプロフィールやポート形状まで変更。日本国内仕様(70PS)はデジタルフューエルインジェクションを装備したが、北米仕様はキャブレター仕様。80PS の最高出力は驚異的。

Z650 に対してボアは4mm 広く、カムプロフィールやポート形状まで変更。日本国内仕様(70PS)はデジタルフューエルインジェクションを装備したが、北米仕様はキャブレター仕様。80PS の最高出力は驚異的。

1982 KAWASKI Z750GP R1 SPECIFICATION

● エンジン種類:空冷4ストローク4 気筒DOHC2 バルブ● 総排気量(ボア×ストローク):738.0cc(66.0 × 54.0mm) ● 最高出力:80.0PS/9500rpm ● 最大トルク:6.7kg-m/7500rpm ● ミッション:5 速リターン● 全長×全幅×全高:2215 × 780 ×1220mm ● ホイールベース:1460mm ● シート高:800mm ●キャスター/トレール:°′/ ---mm ●タイヤ前・後:100/90V19・120/90V18 ●燃料タンク容量:21.7ℓ●乾燥重量:217kg ●発売当時価格:輸出車

KAWASKI Z750GP ディテール

画像: フロントディスクブレーキの有効径はφ 226 で、当時のナナハンとしては小径だが、メタルパッドを採用し制動力は充分。キャリパーは小型でディスクは穴あきタイプで、バネ下荷重の低減にも貢献している。

フロントディスクブレーキの有効径はφ 226 で、当時のナナハンとしては小径だが、メタルパッドを採用し制動力は充分。キャリパーは小型でディスクは穴あきタイプで、バネ下荷重の低減にも貢献している。

画像: ホイール径、タイヤサイズはZ1000J やZ1000R とほぼ同じとしつつ、コンパクトな車体ならではの軽快感を披露する。マフラーは左右2本出しで、北米仕様の開口部は日本仕様よりも大きい。リアショックは5段階式の可変ダンパーを装備。

ホイール径、タイヤサイズはZ1000J やZ1000R とほぼ同じとしつつ、コンパクトな車体ならではの軽快感を披露する。マフラーは左右2本出しで、北米仕様の開口部は日本仕様よりも大きい。リアショックは5段階式の可変ダンパーを装備。

画像: フューエルタンクの容量はZ1000R よりも何と0.3ℓ大きい。が、跨った時幅広な印象は受けない。

フューエルタンクの容量はZ1000R よりも何と0.3ℓ大きい。が、跨った時幅広な印象は受けない。

画像: 肉厚でクッション性が良好なシート。かつ高さは800mm で足着き性は良好。

肉厚でクッション性が良好なシート。かつ高さは800mm で足着き性は良好。

画像: マイコン制御液晶モニターを採用する。

マイコン制御液晶モニターを採用する。

画像: サイドスタンドを出したままスタートしようとするのを知らせるためのセンサーを装備。

サイドスタンドを出したままスタートしようとするのを知らせるためのセンサーを装備。

画像: リアショック付近には、フレームチューブ内に収まる形でワイヤーロックを装備。施錠の際は引き出してホイールに通す。

リアショック付近には、フレームチューブ内に収まる形でワイヤーロックを装備。施錠の際は引き出してホイールに通す。

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■ミスター・バイクBG 7月号絶賛発売中です。

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