オートバイ編集部のパイセン・中村浩史と、コーハイ西野てっぺーが、なんか疑問を解消するのにひとまずバイク乗ってどっか遊びに行っちゃおうというツーリングです。
「ねぇ、パイセン」
てっぺーが言う。パイセンてのは「先輩」をひっくり返した言葉なんだけど、どーも「先輩」に込めるべきリスペクトのニュアンスが足りねぇなぁ、このやろ。
「そろそろまた行きましょうよ、パイセンツーリング」
――い、いつそんな名前ついたんだよ(笑)。
(※以下、会話文の「」部はコーハイてっぺー、――部はパイセン中村のパートです)
文:中村浩史/写真:伊勢 悟
軽二輪クラスに「150」と「250」をラインアップ。2台のジクサーの狙いとは?
――今回はなに乗ってくんだ?
「ジクサー乗りましょう。ぼく気になって気になって」
――おぉ、いいね。ジクサーはいいぞ。250ccクラスのライバルの中でも、ジクサーだけオリジナルの方向むいているバイクだ。
「でしょ。乗り比べしたいっす」
――うーん、比較はなぁ……。CBRとかニンジャと比べちゃうと、そこんとこが『オリジナルの方向』なんだよな。比べるべき対象じゃないんだよな。
「いや、CBRとかニンジャとは比べないっす。ジクサー150と250で行きましょう」
コーハイの狙いはなかなかの直球だ。154ccと249cc、1.5倍以上の排気量差があるとはいえ、どっちも軽二輪、ピンクナンバーじゃないし、車検もない、いわば同じ250ccクラス。なんでわざわざ同じようなクラスにモデルを投入するんだろう、って疑問がスタートみたいだ。
「あれですかね、KTMでいうDUKE200とDUKE250ですよね」
――お、それは分かりやすいな。同じ免許枠、近い排気量カテゴリーにいるんだけど、わざわざ別のモデルをラインアップする、って点では似てるかもな。
同じ免許枠、近い排気量カテゴリーに違うモデルを投入するっていうのは、日本のオートバイ史でもなかなか珍しいこと。今まで何があったっけ、スズキだと大型免許枠にGS550と750とか、GT550と750とか、200と250のΓとか、200と250のDJEBELなんてのがあったけれど、そもそも125ccの次は250ccで、150ccや200ccってモデルがなかなか定着していない。
その意味では国内発売していないモデルを入れると、これまたスズキが125と150のGSX-Rをラインアップしていたっけ。でもそれは、125ccだけ小型免許で乗れるから、同じ免許枠ではないかぁ。
用意された2台を前に、パイセンちょっと困惑。この2台、お、同じじゃないか……?
「いや、あちこち細かいところが違います。センタースタンド、アンダーカウル、オイルクーラーの有無、ディスクローター径とかマフラー出口のデザインも違いますよ」
――ホントだ。ホイールも250の方がゴージャスだな。ミッションも250だけ6速なんだよな。パワーも倍近いからフレームだって強化されてて、重量も250の方が15kg重い。
ジクサーはまず、2017年1月に150ccが登場。インド(スズキモーターサイクルインディア社)生産モデルで、現地で13ものバイクアワードを受賞した、という触れ込みでのデビューだった。
もちろん、海外生産ってこともあって。日本ではデビュー当初、少し引いた目で見られていたけれど、125ccにはないパワフルさ、250ccにはないコンパクトさが評価され、徐々に徐々に販売台数を伸ばしてきた。
日本での販売累計台数も、今では3000台を突破。押しも押されもせぬ人気モデルだ。
250ccは、2020年のニューモデル。カウル付きジクサーSF250が4月に、ネイキッドのジクサー250が6月に発売開始となった。150と250は、基本的に同じ車体に排気量の違うエンジンを積むバリエーションモデルで、250には新設計の「スズキ伝統」の油冷エンジンが搭載されているのだ。
「油冷ってのも新しいですよね」
――ばかもん。油冷エンジンってのは由緒正しきスズキのオリジナルな技術で、水冷エンジンが当たり前になりつつあった1985年に実用化して、イッキにスーパースポーツトップの座に上り詰めたんだぞ。あれから35年てことになるなぁ。
「85年すか! ぼく86年生まれです」
――うぐぐぐぐ……。なんたるジェネレーションギャップ……。
「そういうスゴいエンジンなんですね」
――いや、35年前の油冷エンジンって言うのは、確かに性能最重視で生まれた技術だったんだけど、その後にもいろんなエンジンに油冷技術が使われて、決して高性能ばっかりを狙わない、スタンダードな技術になったんだ。4気筒だけじゃなくて、250ccクラスの単気筒なんかにも使われたんだぞ。NZ250っていう、あれはいいバイクだったなぁ。
「それでオイルクーラーがついてるんですね。って、僕のトライアンフ・ボンネビルにもオイルクーラーついてるってことは……僕のも油冷なの?」
――ちがうわ! 油冷って言うのは、基本的に空冷で、オイルを冷却媒体にしているのは普通の空冷も油冷も同じなの。油冷は、ピストンジェットとか冷却経路も専用に設定して『積極的に』オイルでエンジンを冷やしてるエンジンのことなんだよ。
ジクサー150は、2017年に初期型がデビューして、20年3月にマイナーチェンジした2型が登場した。この2型も出足好調で、125にはないパワー、250にはない気軽さがウケている。そこに250が追加された、というわけなのだ。
<後編につづく>
文:中村浩史/写真:伊勢 悟
スズキ「ジクサー150」主なスペックと価格
全長×全幅×全高 | 2020×800×1035mm |
ホイールベース | 1335mm |
最低地上高 | 160mm |
シート高 | 795mm |
車両重量 | 139kg |
エンジン形式 | 空冷4ストSOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 154cc |
ボア×ストローク | 56.0×62.9mm |
圧縮比 | 9.8 |
最高出力 | 10kW(14PS)/8000rpm |
最大トルク | 14N・m(1.4kgf・m)/6000rpm |
燃料タンク容量 | 12L |
変速機形式 | 5速リターン |
キャスター角 | 24゜50’ |
トレール量 | 100mm |
タイヤサイズ(前・後) | 100/80-17M/C 52S・140/60R17M/C 63H |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 35万2000円(税込) |
スズキ「ジクサー250」主なスペックと価格
全長×全幅×全高 | 2010×805×1035mm |
ホイールベース | 1345mm |
最低地上高 | 165mm |
シート高 | 800mm |
車両重量 | 154kg |
エンジン形式 | 油冷4ストSOHC4バルブ単気筒 |
総排気量 | 249cc |
ボア×ストローク | 76.0×54.9mm |
圧縮比 | 10.7 |
最高出力 | 19kW(26PS)/9000rpm |
最大トルク | 22N・m(2.2kgf・m)/7300rpm |
燃料タンク容量 | 12L |
変速機形式 | 6速リターン |
キャスター角 | 24゜20’ |
トレール量 | 96mm |
タイヤサイズ(前・後) | 110/70R17M/C 54H / 150/60R17M/C 66H |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 44万8800円(税込) |