ダートトラックレーサー直系の力強くスポーティな走りとスタイリングで注目されたビッグサイズのトラッカー・FTR1200をベースに、2020年モデルで追加された新たなバリエーションモデルがFTRラリーだ。
撮影/柴田直行 文/小松信夫、編集部 協力/IndianMotorcycle (https:www.indianmotorcycle.co.jp/) 衣装協力/KADOYA(https:ekadoya.com/)
一見ラフロード仕様車だが、その実態は?
「アドベンチャースピリットでストリートを往く爽快感」
FTRシリーズに新たに加わったFTRラリーは、ラフロードを疾駆するイメージを抱かせるフィニッシュをみせる。ラリーレイドに誘うかの様な前後共に150mmのストロークトラベルを持つショックや、大径のホイールサイズは意外にもシリーズ共通となっている。
大きく変化をみせたのは、軽快なワイヤースポークホイールとブロックパターンタイヤの装備だろう。また、雰囲気を盛り上げるウインドスクリーンとシートパターン、約2インチアップしたバーハンドルが専用装備となり、キャラクターの明確な差別化を図っている。
軽快なフォルムで、1203ccの水冷Vツインという巨大なパワーユニットを抱えているとは想像し難く、実際に跨ってみてもそのコンパクトさに驚かされてしまう。FTRラリーは、シリーズの中でも最もアップライトな乗車姿勢となるので、尚のこと巨大なパワーユニットの存在感は薄くなっているのだ。
また、強固な車体と絶妙な重量バランスによって、操縦安定性を阻害するようなこともないので、パワフル且つ味わい深いVツインテイストを満喫できるのもシリーズ共通と言える。
もともとアップライトな乗車姿勢のFTRシリーズだったが、2インチ分ハイト化されたハンドルを装備することで生まれるビューポイントの変化と、取り回しのしやすさに、キャラクターの違いが明確となったといえる。スペック上よりサスペンションストロークも伸びて「足長化」されたのでは? と、勘違いするほど、しっかりとオフロードマシンとしてのテイストが備わっている。
当然のことながら、ブロックパターンのタイヤのグリップ力はロードタイヤに劣り限界値も低い。それでも、FTRラリーに装備されたピレリ製タイヤは、舗装路での走行も想定したグリップ力と、ビッグバイクを支える強靭さを併せ持ち、通常の流れはもちろん高速でのクルージングにおいても不安になることは一切なかった。
さらに、ブレーキシステムとサスペンションが絶妙で、全てが常にバランス良く仕上がっているというのも好印象だった。
このFTRシリーズのターゲットとするメインステージはストリートであることは明確で、FTRラリーもブロックタイヤを装備し本格の雰囲気を醸し出すが、ストリートでこそ純粋に楽しめるパッケージとなっている。
強烈なエンジンのパフォーマンスをフルに発揮せずとも、ブレイクするブロックパターンのグリップ力を見越し、楽しめる範疇で贅沢なチカラを堪能するといった、紳士的な遊び心を持つお洒落なライダーにこそ駆ってもらいたい。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高:2287×850×1297mm
ホイールベース:1524mm
シート高:805/840mm
車両重量:230kg
エンジン形式:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ
総排気量:1203cc
ボア×ストローク:102×73.6mm
最高出力:NA
最大トルク:12.2kgm/6000rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:13L
変速機形式: 6速リターン
タイヤサイズ前・後:120/70R19・150/70R18
価格:209万8000円(税込)〜
インディアン「FTR Rally」ディテール