写真：柴田直行／文：ゴーグル編集部／モデル：葉月美優
新感覚のロードスターは、シンプルかつスポーティー！
リッタークラスに迫る排気量モデルにも関わらず、そのパッケージサイズはミドルクラスといって良いだろう。フロントセクションの、特にヘッドライトは薄く、スラントし意匠に凝ったデザインにより、前傾斜の強めな戦闘的フォルムを形成するので、よりコンパクトな印象が強いのかもしれない。
乗車姿勢は、アップライトで幅の広いハンドルにより、戦闘的なフォルムとは打って変わって、ゆったりと自由度の高いものとなっている。ちょっとした街乗りも気軽に出来る、馴染みやすさがある。
現在主流となっているショートテールデザインと、カウル類の装飾を排除したネイキッドスタイルのボディは、少し試乗するだけで贅肉のない引き締まったアスリート体質であることが伺える。さらに、きっちり締まった足腰もアスリート体質で、スポーツモデルであることを再意識させてくれる。
もちろん、足回りに硬くゴワついた感じは一切なく、余分な反動を即座に収束させる高い衝撃吸収能力を持ちつつ、ロードノイズが無かったかの様なきめ細やかな仕事をもこなしてくれる。
上質な乗り心地に拘る仕上がりは、新エンジンのフィーリングを楽しむためにも活きている様に感じた。ブランニューとなったF850のエンジンをベースに排気量を上げて搭載するF900Rは、大らかに太いトルクを発生させつつ確かな鼓動感を演出する。
ただしこの鼓動感は、2つのバランサーによって乗り手にダイレクトに伝わる振動はスポイルされており、実際にリアタイヤが路面を掻き上げる際に伝わるものとなっている。
これは、路面との相性やグリップ感を把握するためや、高い運動性能を追求する車体造りがされているからこそ味わえるフィーリングだろう。また、不等間隔爆発による不整脈動が、よりテイスティなフィーリングを生むのだ。
ハイレベルなロードスポーツモデルの車体に、2気筒ならではの大らかで太いトルクを生むテイスティなエンジンのマッチングにより、フィーリングを堪能するのも悪くはない。しかし、F900Rの魅力の一端として、100馬力強の最高出力を、身構えなくても気軽に味わえるパッケージが秀逸と言える。
現在では目を見張るほどの最高出力ではないものの、エンジン高回転域まで途絶えることのない太いトルクにより、車重を忘れさせるほど、高速レンジに於いても物足りなさを感じることはないはずだ。
最高出力を自在に操れる感覚は、ミニバイクを扱いきる感覚に近いかもしれない。それだけ、エンジンに見合ったバランスの良い車体造りがされている証拠だろう。
