従来のF800シリーズの後継モデルとして登場したF900シリーズのアドベンチャーバージョン。ベーシックなロードスターモデルのF900Rに対し、F900XRはフレームや水冷並列2気筒エンジンといった主要なメカニズムは共通だが、スーパースポーツ譲りの強力な4気筒エンジンを搭載したアドベンチャースポーツ・S1000XRのコンセプトを取り入れて開発。

写真:柴田直行 文:編集部 モデル:葉月美優

軽やかな身のこなしに活きるマスの集中化

画像1: 軽やかな身のこなしに活きるマスの集中化

前後サスペンションの基本構成などF900Rと共通な部分が多いが、ストロークはアドベンチャースポーツらしく長目の設定。燃料タンクも大容量化され航続距離も伸ばされている。

スタイリングはアドベンチャースポーツの最高峰・GSシリーズのエッセンスも取り入れ、長距離走行での快適性や機能性を追求した。

画像2: 軽やかな身のこなしに活きるマスの集中化

ライダーをサポートする電子制御システムもF900R同様の最新のもので、バンク角に応じて照射範囲を自動的に変えるアダプティブコーナーリングライトまで装備する。

画像3: 軽やかな身のこなしに活きるマスの集中化

ハイスピードレンジにも対応する長脚化!

F900XRは、兄貴分であるS1000XRと酷似したフェイスマスクを装備し、F900Rと同一のベース車体にクロスオーバーモデルとしてのパフォーマンスが与えられる。最初に言えることは、F900R同様のエンジン設定や車体構成なので、S1000XRとは酷似してはいるものの、まるで異なる性格や世界観を持ち、単に同じXRとして兄貴分のダウンサイズモデルではないのだ。

画像1: ハイスピードレンジにも対応する長脚化!

F900Rの紹介頁でも触れたようにF900シリーズは、味わい深い太いトルクをエンジン回転全域にて堪能できる並列2気筒エンジンを採用し、インライン4エンジンとは異なるフィーリングを演出してくれる。また、S1000XRと排気量でいえば約100cc程の差しかないのだが、F900R同様にミドルクラスサイズ並みにコンパクトな車体であることは特筆すべきポイントだろう。

フロントフェアリングを装備することによって、超低速域で感じることの出来る軽快さはネイキッドモデルに劣るが、乗り比べない限り認識できないレベルの存在感となっている。カウル装備類は車体にセットされているので、車体との一体感を生むことはもちろんのこと、ハンドリングに影響を及ぼすことはない。

画像2: ハイスピードレンジにも対応する長脚化!

また、コンパクトかつ軽快さを生むベース車両の利点を欠くことがなく、とてもスマートな印象を受けるフィッティングとなっている。

クロスオーバーモデルの性質上、ラフロードの走破性を高める設定が定説なのかもしれないが、S1000XR同様にツアラー要素が強いキャラクター設定となっている。

画像3: ハイスピードレンジにも対応する長脚化!

さらに、特徴的なポイントとしてフロントフェアリング装備の他に、フロント170mm、リア172mmに及ぶショックストローク量を確保する足回りが挙げられる。ソフトな初期ストローク領域は、しっとりした乗り心地を提供してくれる。

ロングストロークの長脚化は、ハイスピードレンジの高負荷が掛かる状況ではどうなのか? と、少々不安に思っていたが、初期ストローク領域こそソフトで良く動くが、通常の街乗りレベルの速度レンジからでもハッキリ分かるほど、グッと踏ん張る強靭なセッティングとなっている。

また、許容量のあるダンピング機能のお陰で、あらゆる衝撃を即座に収束させ、ラグジュアリーな乗車空間を生む能力を併せ持っている。

もちろん、最大の特徴となるフロントフェアリングの効果を忘れてはならない。当然のことながらハイスピードレンジに於いてもイメージ通りの高い防風効果を発揮し、上質な足回りとバランスの良い車体との組み合わせにより、クラスを超えた快適性を生んでいる。

リーズナブルな本体価格とトータルバランスと高いパフォーマンスを鑑みると、1ランクも2ランクも上を行く仕上がりで、確実にスペシャルな1台となっていると断言しよう。

画像4: ハイスピードレンジにも対応する長脚化!

SPECIFICATIONS F900XR
全長×全幅×全高 2150×860×1320-1420㎜
ホイールベース 1530㎜
シート高 825㎜
車両重量 219㎏
エンジン形式 水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ
総排気量 894㏄
ボア×ストローク 86×77㎜
最高出力 105hp/8500rpm
最大トルク 9.3㎏m/6500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 15.5L
変速機形式 6速リターン
タイヤサイズ前・後 120/70ZR17・180/55ZR17
価格 114万8000円〜(税込)

BMW「F900XR」(2020)ディテール

画像: 水冷並列2気筒エンジンは270度クランクを採用したF850GS用をベースに、排気量を853㏄から895㏄まで拡大するなど各部に改良を加えたもの。不等間隔爆発ならではの鼓動感はそのままに、最高出力は105㎰までパワーアップし、トルクバンドもよりワイドに。カウンターバランサーも備えていてスムーズなフィーリングで振動も少ない。

水冷並列2気筒エンジンは270度クランクを採用したF850GS用をベースに、排気量を853㏄から895㏄まで拡大するなど各部に改良を加えたもの。不等間隔爆発ならではの鼓動感はそのままに、最高出力は105㎰までパワーアップし、トルクバンドもよりワイドに。カウンターバランサーも備えていてスムーズなフィーリングで振動も少ない。

画像: ボディの下部にチャンバーを備える排気システムを採用し、コンパクトなサイレンサーと合わせマス集中化を図ることで軽快なハンドリングを実現。リアブレーキはØ 265㎜ローターにシングルピストンキャリパーを組み合わせる。タイヤはミシュランのオールラウンドタイヤ・ROAD5が標準装着される。

ボディの下部にチャンバーを備える排気システムを採用し、コンパクトなサイレンサーと合わせマス集中化を図ることで軽快なハンドリングを実現。リアブレーキはØ 265㎜ローターにシングルピストンキャリパーを組み合わせる。タイヤはミシュランのオールラウンドタイヤ・ROAD5が標準装着される。

画像: 機能性の中にS1000XRとも共通したアグレッシブな雰囲気も漂わせた、デュアルヘッドライトが目立つフロントマスク。ハイービーム、ロービーム、アダプティブ・コーナリングライトが一体になったヘッドライトはフルLEDで、コンパクトなウインカーもLEDだ。

機能性の中にS1000XRとも共通したアグレッシブな雰囲気も漂わせた、デュアルヘッドライトが目立つフロントマスク。ハイービーム、ロービーム、アダプティブ・コーナリングライトが一体になったヘッドライトはフルLEDで、コンパクトなウインカーもLEDだ。

長距離・高速でのツーリングで高い防風効果をもたらす、快適な走りには欠かせないスクリーン。片手だけでできるレバーの操作によって高さと角度を2段階に調整可能という機能的デザインだ。乗り手によって異なる好みや、季節・天候といった状況に合わせることが可能。

倒立フォークはアドベンチャーモデルらしく、双子モデルでベーシックなロードスポーツであるF900Rよりも35㎜長いストローク量を与えられている。フロントブレーキはΦ320㎜ローターにブレンボ製4ポットラジアルマウントキャリパーの組み合わせ。ベースグレード以外にはABSプロが標準装備される。

画像: シフトアシスト・プロはオプション装備で、そのユニット本体はペダルとリンケージの間に見える。クイックシフター機能を実現するもので、クラッチを操作することなく、シフトペダルの操作のみでアップ&ダウンの変速操作を可能とする。スポーティな走りにも欠かせないが、ツーリングなどの快適性も高まる。

シフトアシスト・プロはオプション装備で、そのユニット本体はペダルとリンケージの間に見える。クイックシフター機能を実現するもので、クラッチを操作することなく、シフトペダルの操作のみでアップ&ダウンの変速操作を可能とする。スポーティな走りにも欠かせないが、ツーリングなどの快適性も高まる。

画像: リンクレス構造のリアサスもフロントフォークと同様、F900Rよりも30㎜長いストローク量となっている。写真の車両はプレミアムラインのため、電子制御サスペンションのダイナミックESAが装備されていて、ライディングモードとの連動でセッティングが自動的に最適化される。

リンクレス構造のリアサスもフロントフォークと同様、F900Rよりも30㎜長いストローク量となっている。写真の車両はプレミアムラインのため、電子制御サスペンションのダイナミックESAが装備されていて、ライディングモードとの連動でセッティングが自動的に最適化される。

画像: スチール製ブリッジフレームとアルミ製の両持ちスイングアームを組み合わせた、優れたバランスを備える軽量コンパクトな車体の根幹を成す部分はF900Rと共通だ。荷物の搭載やメンテナンスに役立つセンタースタンドを装着しているのはF900XRの特徴。

スチール製ブリッジフレームとアルミ製の両持ちスイングアームを組み合わせた、優れたバランスを備える軽量コンパクトな車体の根幹を成す部分はF900Rと共通だ。荷物の搭載やメンテナンスに役立つセンタースタンドを装着しているのはF900XRの特徴。

画像: 前後長が長く余裕のあるサイズで、しっかりしたグリップバーと合わせてタンデムでも快適な造りの一体型シート。タンクにつながる前部が絞り込まれたシェイプになっていて、ライダーがマシンとの一体感を感じやすく足着きにも配慮。シート高はスタンダードでは825㎜で、オプションとしてローシートやハイシートも用意。

前後長が長く余裕のあるサイズで、しっかりしたグリップバーと合わせてタンデムでも快適な造りの一体型シート。タンクにつながる前部が絞り込まれたシェイプになっていて、ライダーがマシンとの一体感を感じやすく足着きにも配慮。シート高はスタンダードでは825㎜で、オプションとしてローシートやハイシートも用意。

画像: ワイドで手前に引かれたハンドルバーによって、アップライトで快適なポジションを得ている。容量15.5Lの燃料タンクは従来モデルではシート下に配置していたが、モデルチェンジで通常のオートバイと同じライダー前に戻された。量産2輪車初の樹脂製タンクを採用することで軽量化にも貢献。

ワイドで手前に引かれたハンドルバーによって、アップライトで快適なポジションを得ている。容量15.5Lの燃料タンクは従来モデルではシート下に配置していたが、モデルチェンジで通常のオートバイと同じライダー前に戻された。量産2輪車初の樹脂製タンクを採用することで軽量化にも貢献。

画像: 6.5インチという大きなサイズで優れた視認性も確保した、TFTフルカラー多機能液晶メーター。スポーツ走行向け表示など、盤面デザインを様々に選択可能。スマートフォンとBluetooth接続し、メーターとしての機能に加えてナビ、音楽、通話などの機能をメーター側で利用することもできる。手前に見えているのはオプションの専用ナビ。

6.5インチという大きなサイズで優れた視認性も確保した、TFTフルカラー多機能液晶メーター。スポーツ走行向け表示など、盤面デザインを様々に選択可能。スマートフォンとBluetooth接続し、メーターとしての機能に加えてナビ、音楽、通話などの機能をメーター側で利用することもできる。手前に見えているのはオプションの専用ナビ。

画像: 軽快感を感じさせるショートな形状のシート後端から伸びた、ナンバープレートステーも兼ねたステーに装着されたコンパクトなテールランプやウインカーにもLEDが使用されている。

軽快感を感じさせるショートな形状のシート後端から伸びた、ナンバープレートステーも兼ねたステーに装着されたコンパクトなテールランプやウインカーにもLEDが使用されている。

画像3: 【試乗インプレ】BMW「F900XR」新生F900の剛健&スタイリッシュさがクロスオーバー「扱いやすさに秘めた底力!」<GOGGLE 2020年8月号>(2020)

葉月美優

動画投稿サイト「マイスタ」と、生動画配信サイト「マシェバラ」を舞台に行われている、“動画映えする”次世代アイドル発掘プロジェクト『ミスジェニック2020』オーディションにエントリー中! 2020年は、スーパーGTやスーパー耐久レースに参戦するADVICS muta Racingの『ADVICS muta Racing fairies』の一員としてレースクイーンデビュー。また、千葉TV「週刊バイクTV」では、レギュラーコーナーにてナビゲーターを務める。生動画配信サービスSHOWROOMでは、『みんな大好き♡みうみう調査兵団』というルーム名にて配信中! ワンエイトプロモーション所属のモデル。

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