インディアン「FTR ラリー」試乗インプレ&解説(宮崎敬一郎)
クラシカルなフォルムと力強い走りのハーモニー
FTRシリーズはインディアンがAMAのフラットトラックレースを制したワークスレーサー「FTR750」をオマージュして誕生したスポーツモデル。新たに加わったこの「ラリー」は、FTR1200のスタンダードグレードをベースに、レトロなトラッカーらしいテイストをブレンドしたモデルだ。
最大の特徴はクラシカルな雰囲気を醸し出す外装のリニューアル、スポークホイールの採用と、ピレリのスコーピオンSTRというヘビーデューティイメージの強いブロックパターンタイヤの採用。強烈なパンチ力を生む120馬力の水冷VツインやシャシーなどはベースのFTRと共通だ。
オフロード走破性のバロメーターとなる前後サスのトラベル量は、ベースのFTRと同じ150mm。ネオクラシックのスクランブラーモデルなどには200〜250mmもの長いストローク量を持つものもあるが、このFTRラリーはそうしたモデルとは対照的だ。
ただ、このラリー、もともとオフロードを飛んだり跳ねたりするような走りを目指しているのではない。あくまでもラリーイメージのトラッカースタイルを楽しむバイクだ。そのかわり、サスのストローク量を抑えているおかげで、取り回しや足着き性に優れ、大型バイクの割にふつうに扱える。
でも、見てくれだけでダート適性がない、と決めつけるのは早計だ。
スポークホイールの威力で、路面からの衝撃はタイヤの空気圧を少し下げたようなまろやかさ。ガレ石を斜めに踏んでも弾かれにくい。それに、ブロックパターンのピレリは、ダートでしっかりと路面を蹴って加速させてくれ、スタンダードやSよりずっと走りやすい。ブロックパターンなので、ウェット路面や、荷重のかかる高速コーナーはやや苦手ではあるが、このスコーピオンはドライの高速ワインディングなら想像以上のグリップ力も発揮してくれる。
ハンドリングはタイヤの特性もあり、非常に粘っこいタイプで、安定感ではSよりもさらにどっしりとしている。スリムなので荷物の積載をどうするかということもあるが、ツーリングユースにも相性がいいと思う。
エンジンもツーリング適性が高い。2500〜3200回転にはクルーザーっぽいパルス感が残っているし、トルクの立ち上がり方も強烈。この回転域からのダッシュでは、直4のビッグネイキッドたちの比ではなく、ダイレクトで強力な瞬発力を生む。
4400回転以上では振動が気になるが、100km/h・6速でのタコメーターは3600〜3700回転。法定速度くらいなら非常に滑らかで快適に走る。
FTRラリーは、アメリカのメーカーらしい、個性的なスポーツモデル。レトロなトラッカーのテイストを巧みに取り入れて魅力を高めている。そして、スロットルをひと捻りすれば、強烈なマッスルパワーも楽しめる。実に味の濃いバイクだ。
インディアン「FTR ラリー」主なスペックと価格
全長×全幅×全高:2287×850×1297㎜
ホイールベース:1524㎜
最低地上高:NA
シート高:840㎜
車両重量:230㎏
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒
総排気量:1203㏄
ボア×ストローク:102×73.6㎜
圧縮比:12.5
最高出力:123HP
最大トルク:12.23㎏-m/6000rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:13L
キャスター角/トレール量:26.3度/130㎜
変速機形式:6速リターン
ブレーキ形式 前・後:φ320㎜ダブルディスク・φ265㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後:120/70R19・150/70R18
メーカー希望小売価格:税込209万8000円~