ドゥカティ「ストリートファイター V4S」試乗インプレ&解説(宮崎敬一郎)
漲るパワーを電子制御、条件によらず楽しめる
ストリートファイターV4は、パニガーレV4をベースにフレーム、エンジンから外観まで、そのすべてを一新されている。今回試乗したのはそのハイグレードバージョンになる「V4S」だ。
V4SとV4との違いは主に足回り。主要なライディングアシスト機構は共通だが、オーリンズ製電子制御サスの採用や軽いマルケジーニのホイールを装備している。
この電子制御サスは、より幅広い走行条件下で快適に、そして高いスタビリティをボタン操作ひとつで発揮できる。しかも、ただスポーツポテンシャルを向上させるのではなく、扱いやすさもアップさせる。あらゆる道でのスポーティな機動、使い勝手に対応する「鬼に金棒」とも言える優れたアイテムだ。
そもそもこのバイク、208PSという、スポーツネイキッドとしては飛び抜けたスペックを持っている。電子制御のライディングアシストがなければ、スロットルひとひねりでフロントがリフトしたり、リアが滑ってドリフト状態になったりするはずだが、素晴らしいライダーエイド機構のおかげで、決してそんなことは起きない。
ライディングモードを最もレスポンスがダイレクトな「レース」にしても、乱暴に全開にするような愚行さえしなければ、いたって平和。街中や峠道で普通に操れる。このモデル、1〜2速の低いギアではある程度トルクの立ち上がり方を制御しているようで、1〜2速で走れるちょっとした峠道なら、高回転まで回すのはさして難しくないのだ。
圧倒的な力量を見せつけるのは3速から。パワーバンドの下端はおおむね8000回転。そこから13500回転あたりまでリニアに力を増す。さらに減速比はパニガーレよりショートな加速型だ。息の長い、猛烈な加速はパニガーレ以上と思っていい。
12000回転あたりのトルクの密度は凄まじく強力だが、場所と乗り手のスキル(この手のビッグパワーに慣れているかどうか)によってはすこぶる使いやすいと感じるだろう。右手のスロットル操作に対し、その感覚を裏切らない、ダイレクトで猛烈なパワーを優しく発揮するのだ。
もうひとつ。このバイクのハンドリングは非常に素直で、巨大なリアタイヤに見合わない機敏な機動が可能だ。ライポジがアップライトになっているせいもあるが、クイックな峠道での動きの良さはパニガーレより格段にいい。強力なスーパーバイク・パニガーレV4のカウルを剥いだだけではなく、しっかり使えるスポーツネイキッドに仕上がっている。そのスタイルやスペックに憧れて買ったはいいが、どこを走ってもストレスが溜まるようなデキではないのだ。
その名の通り、ストリートファイターV4が目指すステージはストリート。その強烈なスペックを「絵に描いた餅」にしない工夫が満載されている。