全日本ロードレース・オートポリス大会は、きのう土曜にひきつづき好天にめぐまれ、全クラスドライコンディションのまま終了することができました。
きょう日曜日はJ-GP3/ST600/ST1000の決勝レースと、JSB1000の決勝レース2、それにラストレースにはMFJカップのJP250も決勝レース。どのクラスも、びっくりするくらい接戦混戦ばかりで、やっぱりこれは事前テストなし、金曜のフリー走行も濃霧で中止になったことでの走り込み不足で、どのライダーもセッティングを仕上げきれていなかったことも要因のひとつでしょう。
見ているほうはサイコーに面白かったけれど、やっているほうは「もう少し走り込みがあれば……」って気持ちでしょうね。
オープニングレースのJ-GP3は、徳留真紀(マルマエMTR)、小室旭(サニーmotoプランニングAKR)のベテラン勢と村瀬健琉(TeamTKR)、成田彬人(Team P.mu 7C MIKUNI)が激しいトップ争いののち、村瀬が小室を0秒3差で抑えきって開幕2連勝、小室は2戦連続の2位になりました。
ST600のレースの模様はRacingAUTOYのFacebookに速報を掲載しましたので、申し訳ないコチラ<https://www.facebook.com/racingautoby>をご参照ください。ここでもトップと2位の差はなんと0秒024! いったんはリーダーボードに岡本のゼッケンが一番上に表示されたんですが、正式判定は小山の優勝。この接戦にサーキットはザワザワしていましたね。0秒1以下なんてタイム差だと、見ているほうは同着にしか見えませんからね。
お昼休みを挟んでのST1000は、開幕戦Vを飾った高橋裕紀(日本郵便HondaDream TP)が2戦連続ポールtoウィンの完勝! レースは高橋に、この大会にスポット参戦した岩戸亮介(Vamos Racing with A-TECH)、名越哲平(MuSAHi RT ハルクプロHONDA)がからんで3台のトップ争いが続きましたが、周回数を重ねるにつれて高橋が2番手以下をジリジリ引き離し、レース中盤に岩戸をかわして2番手に浮上した名越を7秒近く引き離して勝ちました。
高橋といえば全日本GP125から世界選手権MotoGPまで走ったライダーですから、やはり地力が飛びぬけていますね。ここに、もしカワサキがJSB1000クラスに参戦していたら、まちがいなくエース格だった岩戸も絡んだんですが、岩戸は本来、今シーズンに参戦予定だったアジア選手権が、新型コロナウィルス感染拡大の影響でシリーズが中止されてしまったため、急遽このレースに出場したもので、やっぱり準備不足は否めませんでした。それでもパッと出てトップ争いを繰り広げるなんてやっぱりすごい! その岩戸をかわして2位に入った名越も、次期ホンダのエース格のライダーですから、このクラスは「僅差決着」でなかったとはいえ、やはりヒリヒリした戦いでしたね。
そしてJSB1000クラスレース2では、とうとうアクシデントが起こってしまいました。
きのう土曜のレポートでもあげたように、今シーズンはヤマハだけがファクトリーチーム参戦で、チャンピオン候補はもはや中須賀克行と野左根航汰のふたり。その中須賀が、開幕戦レース1で転倒して負傷、レース2も欠場してしまったことで、野左根が開幕2連勝のあと、このオートポリスのレース1でも「さぁ最後の勝負」って時にレースは赤旗中断→レース成立となってしまい、レース成立周のゴールラインで0秒014だけ前にいた野左根が優勝して3連勝を達成。さぁレース2は中須賀がまき返すぞ、ってテーマのレースだったんです。
決勝レースは中須賀、野左根を抑えて昨日に引き続き清成龍一(ケーヒンHonda Dream SIR)がホールショット。ホンダ勢はニューCBR1000RR-Rに標準装備の「ローンチコントロール」を、フィーリング差で使ったり使わなかったり、って事情があるようで、清成のクラッチミートの抜群のうまさは、これ電子制御を超えていますね。きっと清成はローンチ使っていない派でしょう。
レースは序盤から清成が逃げたい、でもヤマハファクトリーデュオのふたりが逃がさない、という3台によるトップ争いで、レースが折り返しを過ぎたころに野左根、中須賀が清成をパス。
「10周くらいまでキヨがレースを引っ張ってくれましたね。まだマシンは仕上がっていないのに、あの走りはキヨの能力。まだまだマシンを仕上げないとね」とは伊藤真一監督。
レースは土曜に引き続き、中須賀と野左根の一騎打ちになりますが、昨日と違うのは中須賀がずっと先行しているところ。これは、きのうのレースで自分の速いところ、野左根が速いところをしっかり見極めたためでしょう、最後まで後ろについて、という戦術をとりませんでしたね。
中須賀先行、野左根はずっとピタリと後方、という展開が最終ラップまで続き、オートポリスの後半セクションまで中須賀が先行のまま。あ、これは中須賀が抑えたか、と思われた瞬間、場内に悲鳴が響きました。
オートポリス終盤セクションの登り勾配を終えて、残すはあとコーナーふたつと長いストレート、という右高速コーナーで、先行する中須賀のインにマシンを差し込んだ野左根は、勢い余って中須賀と接触! 中須賀はそのままはじき出されて転倒、野左根が4連勝!となったのですが、やはり後味は悪く、レースは暫定表彰こそ終わったものの、野左根は暗い表情で落ち込んだまま笑顔はなし。どうしよう、レーシングアクシデントとはいえ中須賀さん転ばせちゃった……と顔に書いてありましたね。
レースの正式結果が出たのはレースが終了して2時間もたったころ。ちょっと中須賀のインに入りすぎちゃったように見えたから、野左根はレース後にコントロールタワー呼び出しを受けていたようで、あらら野左根失格?または降格?なんてムードも漂っていましたが、ここは中須賀が大人の度量を見せたか、野左根は始末書提出(笑)で正式順位が決定。野左根が4連勝、中須賀が4戦3レースノーポイントという厳しい結果に終わりました。
「レース後にふたりで話して、航汰からは謝罪もあったし『アンフェアな走り、やりすぎはダメだぞ』ってきちんとクギを刺したのでこの件はおしまい!」(中須賀)
いやいや、きっとあの状況で逆の立場ならオレも行ってたって!という中須賀の声が聞こえてくるようなチャンピオン裁きでした。
結局レースは野左根→清成に続いて前田惠助(ヤマルーブレーシング)が3着に入り、JSB1000クラス初表彰台を飾りました。ヤマハはファクトリーチームがチャンピオン争い、ヤマルーブが若手育成と、きちんと系列立ててレース活動をしているのが素晴らしいですね!
これでレースは、次戦10/17-18のツインリンクもてぎ大会へ。もてぎが第4戦、次の10/31~11/1の鈴鹿大会がもう最終戦です!!
ラストレースのJP250はまたあらてめて!
写真/柴田直行 後藤 純 中村浩史 文責/中村浩史