〈インタビュー〉福島応援おんもしぇ祭りの発起人 五十嵐雅哉さん／復興支援で困っている人を助けたい【二輪車新聞より】

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ヤングオート 店長 五十嵐雅哉さん

その人が東京都多摩市の二輪車販売店「ヤングオート」の店長・五十嵐雅哉さん。同店は1982年に設立された店舗で、父親が代表を務め五十嵐さんと二人三脚で運営している地元密着型の販売店だ。

多摩市で生まれ育ち、今では店長として活躍している五十嵐さんが、足かけ10年もの長きにわたり「福島応援おんもしぇ祭り」を始めたきっかけを聞くと「大震災が起きて福島では原発による風評被害に見舞われていると聞いて、いてもたってもいられず何か力になりたい、と思ったのがはじまりです。私自身もお客さん相手の商売をやっているので、経営者の気持ちが痛いほどわかっていました。なので、そうした被害で悩んでいる現地へ足を運んで応援をしたいという気持ちがありました。それと……じっとしているのが苦手で、おせっかい焼きだというのもあると思います」と、はにかみながら話す。

始めるにあたり自前で、イベントで使う小旗やステッカーなどを製作。当時は仕事を終えた後にその作業に取り掛かっていたそうで、それらに関する費用も「8年くらいは自分の小遣いで、昼食代も削って賄っていました」という。

当時は自分のお店も販売車両が届かず大変な状況

しかも、当時は自分の店舗も大変な状況だったそうで「商品が全く入荷しなかったというのが一番痛手でした。お店で扱う一番売れ筋の原付一種が震災の影響で入荷がストップして、売るものがない状況で、しかも当時は多摩市には計画停電があり、その上街中のガソリンの供給も途絶えており、給油もままならない状況でした」と振り返る。

そうした厳しい事情のなかで、知人や関係者に声をかけてイベントを開催。70人ほどの参加だった初回のイベントから、直近の2019年には260人もの参加者が来場し、北は北海道から南は広島県まで全国各地からライダーが集まる大きな催しになった。今でもそうだが、応援が目的なので地域の方々に負担や迷惑をかけないことを最優先にして、開催しているという。

また、イベントは2つの大きな趣旨を掲げており〝現地に出向いて現地で消費し、直接支援すること〟と〝メディアを使ってイベントを周知していくこと〟というテーマで続けている。「応援には義援金や寄付という形もありますが、やっぱり現地で消費することが、直接の支援に繋がります」と話す。

イベントの開催場所にも恵まれており、当初は現地の施設担当者も最初の1～2回で終わると思っていたそうで、毎年イベントを開催し、規模も大きくなっていくことで、先方も積極的に支援してくれるようになったという。

催しが続けられるのはみんなの協力のおかげ

今では地元の自治体はもちろん、警察までも協力してくれる。五十嵐さんは目を細めながら言う。「地元の警察署長が初回のイベントから注目してくれて『県外の人がここまでやっているのに、ウチもやらないワケにはいかない』と協力してくれたのです」。

イベントの目玉でもある3町村22㎞もの距離を走るツーリングパレードは白バイが先導を務めている。ちなみにイベントに初めて参加した人が声を揃えて感動したというのが、そのツーリングパレード。沿道で町の人が小旗を振ってパレードを歓迎してくれるのだが、その様子に参加者みんなが喜んでくれるという。

昨年は人気アイドルグループの参加も予定していたが、想定外の来場者数が予想されたため、イベント告知寸前で取りやめたほど規模も大きなものに。一方で「ここまで継続して開催できたのはまわりのみんなが協力してくれたおかげ。助けてくれて本当にありがたい」と、周囲の協力者に感謝しているという。今年は新型コロナウイルスの影響でイベント開催決定の案内が出せない状況で見送りになったが、すでに来年開催に向け準備しているという。

五十嵐さんは今年から実行委員長という立場から退かせてもらったというが、今後も引き続き応援していくことを表明。五十嵐さん一人で始めたイベントが、今では全国のライダーが楽しみにしている行事にまで拡大。五十嵐さんの復興支援はこれからも続く。

ヤングオート
▽所在地＝東京都多摩市乞田1216▽営業時間＝平日10時～20時／土日祝日10時～19時
▽定休日＝水曜日・第三日曜日▽℡042・375・1261
http://www.young-auto.co.jp/

文：二輪車新聞 野里卓也

※この記事は、『二輪車新聞』の公式ウェブサイトで2020年9月4日に公開されたものを転載しております。