IRC「PRO TECH RM810」の特徴
「高耐久性能」と「高グリップ性能」は、相反する性能として両立させるの困難であるが、RMC810はこれに「操縦安定性」「乗り心地」などの要求を高次元でバランスさせることに成功した。ラジアル構造のベースには極太のナイロンコードを採用し、0度ベルト構造のアラミドコードは強靭かつ軽量で、剛性感を維持しつつしなやかな乗り心地を実現しているという。
前後共に、穏やかなラウンドを描く断面形状を採用することで、素直なハンドリングと安定感を生む。ワイドかつスポーティなグルーブは、ウエット走行時にセンターからショルダーに至るまで安定した排水性能を発揮する。
公道インプレ/装着車両:カワサキ「ニンジャ250」(山口銀次郎)
軽くて芯がある接地感、そして懐が深い
IRCタイヤといえば、ミドルクラスを中心としたバイアスタイヤに注力し、モデルごとに明確な性格付けがされており、それぞれのキャッチコピーそのままの性能を正確に表現しているイメージが強かった。個人的なバイクとの付き合い方になるが、ミドルクラス車両の使用頻度は、週末や休日のビッグバイクと違い、日常的に普段のアシとして利用することが多く、またなにかと遠出も強いることもあり、過酷な状況に晒されているように思える。
そんなミドルクラス、主に250ccクラスの車両を数台所有し付き合っていく中で、自然とタイヤはタフでロングライフなモノを選びがちなっていた。出力とグリップ性能のバランスを鑑みて、正直なところバイアスタイヤで一切の不満はなく、むしろ大満足のバイクライフを送っていた。わかりやすい、性格付けがされているIRCタイヤのラインアップも嬉しい限りである。
バイアスタイヤを永らく愛用してきて、以前より気になっていたのが、IRCタイヤのラジアルタイヤRMC810。モデルコンセプトが「マイルドツーリングラジアル」とあり、それまで聞いたことのない、IRCタイヤによる新たな提案だという。ある性能に特化したタイヤとは対照的なモノであるという事が伝わってくる、ストレートなキャッチコピーだ。
メインターゲットは中排気量以上の大型車となるが、250スポーツモデルに合うサイズも用意されていたので、それまでのバイアスタイヤと比較するためにカワサキ「ニンジャ250」に装着しテストすることに。
「マイルド」というのは、どういったフィーリングなのか想像がつかなかったものの、慣らし後の接地感の印象は、「軽くて芯がある」といった具合。高めの空気圧設定による硬質な感じとはまるで異なる、ハンドリングに忠実で確かな応答性を見せつつも、足回りの軽快さが際立つ感じだ。
低速走行時のフィーリングこそスポーツモデルの様な軽快感溢れる硬質なものだったが、速度が増すにつれ、またバンク角が増してくるにつれ、接地感が増し安定したグリップ力を発揮する。寝かし込みもクセがない大らかなシングルラウンド断面形状により、路面状況とバンク角が把握しやすくなっているので、高い安心感が得られる。
250ccのエンジンパワーと軽量な車体との組み合わせでは、グリップ力が音を上げることはなく、また熱ダレによる影響も感じなく、それこそこのままサーキットでのスポーツライディングにも対応してしまうのでは? と思うほどの安定した高いグリップ力を発揮していた。
先にも述べたように、寝かしこみの把握しやすさは、ツーリングモデルの親しみやすさがあるものの、フルバンクに近い状況になればなるほど、ラジアルタイヤならではのグッと路面に押し付けられる、はたまた路面を掴む様な感覚でコントロールすることができる。
また、バンキング中の衝撃吸収性も富んでおり、ワンランク上の上質な乗り心地を提供してくれる。それは正しく、上等なショックアブソーバー以上の効果をもたらしてくれるのでは? と思うほどの衝撃だった。
ワインディングでのスポーティな走行をサポートしつつ、タイヤに甘えるようなラフな乗り方をしてもビクともせず、その上ツーリングタイヤに迫るライフを実現しているというのだから、どこまで懐が深いタイヤなのかと感心することしきりである。
IRC「PROTECH RMC810」サイズ表
(※価格はオープンプライス)
FRONT
110/70R17
120/60ZR17
120/70ZR17
REAR
140/70R17
150/60R17
160/60ZR17
180/55ZR17
190/50ZR17
撮影協力:SP忠男 浅草店
文:山口銀次郎/写真:松川 忍