ホンダ新型「CBR250RR」試乗インプレ(太田安治)
乗りやすさと爽快感を向上させた充実進化!
2017年5月にCBR250RR(MC51型)が登場したときは大きな反響を呼んだ。38馬力の最高出力やクラス初の電子制御スロットル、ライディングモードに開発陣の本気度を感じるという意見もあれば、2000年まで生産された4気筒モデル(MC22型)と同じ車名に違和感がある、価格が高過ぎる、という声もあった。だが結果的に新時代のCBR250RRはレースでも速さを見せつけ、セールスも好調に推移。ホンダの狙い通りになっている。
しかし、3年間守り続けた「クラス最速モデル」の座は安泰ではなかった。4気筒45馬力エンジンを最大の武器とするカワサキのNinja ZX-25Rが登場したからだ。これに対抗する意味もあってか、新型CBR250RRは41馬力にパワーアップ。クイックシフターもオプション設定し、スポーツ性向上をアピールしている。
「3馬力アップ」と聞いて気になったのが出力特性の変化。CBR250RRの2気筒エンジンは高回転型ゆえにゼロ発進時はそれなりに丁寧なクラッチ操作が必要で、ライバル車と比べると低回転での反応は眠たげだ。そこからさらに3馬力アップとなれば、低回転域はかなりデリケートな特性になってしまうのでは? という疑問があったからだ。
まず交通量の多い市街地を走ったが、ゼロ発進、そこからの加速は前モデルより少し力強さが増している。新採用のアシスト&スリッパークラッチは実に軽く、繋がりが自然なことも扱いやすさに貢献している。8000回転あたりから勢いを増して回転が上昇する爽快さは前モデルと同様で、危惧していた市街地での扱いにくさはまったくない。新旧モデルを乗り比べてみたが、全域でパワーに厚みが増したことを体感できた。
最高出力は41馬力/13000回転。前モデルは38馬力/12500回転なので高回転・高出力化が進んでいるが、公道で走らせている限りは劇的な差は感じない。それよりも10000回転から14000回転までの高回転領域で前モデルより軽く回り、振動も少ないことが印象的。この回転域を使ってのコーナリング中にスロットルを開け閉めしても唐突な反応は出ず、サーキットでは安心して攻め込めるし、タイトターンの多い峠道でも高回転パワーを引き出しやすい。
3馬力というスペック差よりも、市街地で実感できる力強さと高回転域での軽やかで素直なフィーリングが新型の魅力。これは相当の時間とコストを掛けた結果だと思う。
もうひとつ感じたのが前後サスペンションのバランスが良くなったこと。フロントは小さなギャップも優しく吸収するようになり、乗り心地が向上。ストローク奥での踏ん張りも増し、フルブレーキング時や左右へ切り返したときの車体姿勢変化が抑えられた。
市街地、峠道、サーキットを走って感じたのは、3馬力アップは副産物ではないかということだ。主眼はあくまでも公道での乗りやすさと爽快感だと思う。