「妖精作戦」シリーズ 著:笹本祐一 創元SF文庫
「現役最古のラノベ作家」と自称されている笹本祐一さん、近年もアニメ化、劇場映画化もされた「ミニスカ宇宙海賊」シリーズや、「放課後地球防衛軍」などを書かれて活躍されておられますが。私的にはやはり「妖精作戦」シリーズ(と「星のパイロット」シリーズ)かなぁ。
笹本さんのデビュー作である「妖精作戦」は、1984年にソノラマ文庫から第1作が発表され、翌年にかけて全4作が刊行されたSFアクション。主人公・榊裕の通っている高校に転校してきた小牧ノブが実は超能力者だった、というのがストーリーの発端。そんな彼女を謎の組織・SFCが狙い、特殊部隊による襲撃、原子力潜水艦、スペースシャトルまでを繰り出して手を伸ばしてくる。しかし、小牧ノブをその手から守ろうと、ちょっと癖のある高校生たちが立ち上がり、学校から宇宙空間までを舞台にして、SFCとの間で奇想天外な攻防戦を繰り広げる!
…と、そのストーリーはまさに80年代SF&アニメ的ノリが全開で、リアルタイムで直撃されたオヤジなオタク世代には今でも美味しく頂ける仕上がり。登場する実在・非実在のさまざまなメカの描写も、「そんなのアリかよ!」とツッコミを入れつつ楽しんでたんだけど、バイク好きでもある笹本さんらしく、バイクアクションのシーンは特にノリノリで書かれててとても印象的なのです。
ノブを連れ去って飛んでいくヘリコプターを、東京・国立から750SSやRZ350Rに飛び乗って、横須賀まであらゆる道を使って追跡したり…。
謎の私立探偵・平沢の乗る防弾装甲カウルを装備したCB1100R(ちなみに上の本の画像、創元SF文庫版の表紙イラストには、2007年東京モーターショーに出品されたCB1100Rコンセプトが描かれてる…なんて指摘は野暮?)が、GPZ900Rと首都高で銃撃戦しながらバトル…。
あとヤマハのトレイシーにDT200のエンジン乗せた化け物スクーターに乗って走り回る新聞部長の女子高生とか、もうやりたい放題。どのシーンも状況や場所、選択される車種やメカニズム、行動、キャラクターの背景なんかもしっかりと密度濃く描かれている。だから、単なる荒唐無稽なお話ではなくて、バイクアクションとして破綻を感じずに楽しめるというね。
「妖精作戦」以外の笹本作品にも、バイクはちょこちょこ登場。例えば、代表作ともいえる「ARIEL」シリーズは、主人公の美亜がエグリ・ターゲットに乗ってる(番外編ではCB250RS改だったかな)。隠れた傑作「裏山の宇宙船」では、SR500で謎の宇宙船に電源を供給しようとしたら、一瞬でバッテリーをカラにされるシーンが…作中でのバイクの扱いがいろんな意味で独特ね(とりあえず笹本さんがシングル好きなのは確か)。
バイク成分高いなと思ったのは第1作「妖精作戦」か第3作「カーニバル・ナイト」だけど、第2作「ハレーション・ゴースト」も第4作「ラスト・レター」もバイクは出てくるし、なにより面白いんで素直に最初から読むのが吉。このシリーズを最初に出したソノラマ文庫は版元ごと無くなっちゃいましたが、現在は東京創元社の創元SF文庫から再刊されてるんで、本屋さんでもWebでも普通に買えますよ。電子書籍版もね。
文:小松信夫