ホンダは2020年11月25日にニューモデル「レブル1100」を欧米で発表した。大型クルーザー市場では、いまも昔もハーレーダビッドソンが圧倒的な存在となっている。満を持して登場したレブル1100は成功を手にすることができるのか? 月刊『オートバイ』のメインテスター太田安治氏がレブル1100の特徴とその狙いを考察する。

ブランドの威信をかけ登場した「レブル1100」は、シリーズの長兄として伝統に立ち向かう

画像: ホンダ「レブル1100」 総排気量:1084cc エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒 シート高:700mm 車両重量:223kg(DCT仕様車は233kg) ※写真・スペックは欧州仕様車

ホンダ「レブル1100」

総排気量:1084cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:700mm
車両重量:223kg(DCT仕様車は233kg)

※写真・スペックは欧州仕様車

オーバー1000ccのアメリカン(クルーザー)モデルの多くは、重厚長大な車体にV型2気筒エンジンというパッケージング。それはハーレーダビットソンというブランドが約100年もこのスタイルを守り、いつしかアメリカの豊かさと自由を象徴する存在としてライダーの憧憬を集めたからだ。さらに1980年代からの円高で輸入車価格が下がり、国内のハーレーユーザー層は大きく広がった。

日本の4メーカーもクルーザージャンルに参入しているが、多くはハーレーを下敷きにしたような構成。価格的優位性も少なく、本家ともいえるハーレーの牙城を崩すことはできていない。

しかし時代は変わり、今までのスタイルに囚われないユーザーが増えている。レブル1100の登場に対するネット上の反応も肯定的意見が多く、今までのように「ハーレーもどき」と揶揄する者はほぼいない。

画像: レブル1100のエンジン。MT車とともに、クラッチ操作不要でギアチェンジが行なえる写真のDCT仕様車も発表された。

レブル1100のエンジン。MT車とともに、クラッチ操作不要でギアチェンジが行なえる写真のDCT仕様車も発表された。

エンジンはお約束のV型ではなく、シリンダーを左右に並べた並列2気筒。V型より部品点数が少なくて済み、重量的にもコスト的にも、整備性に関しても有利なレイアウトだ。

ベースとなっているのはCRF1100Lアフリカツイン用だが、注目すべきは最大トルクの発生回転数。アフリカツインの6000回転に対してレブルは4750回転で、フライホイールマスの34%増量と合わせ、発進加速時の路面を蹴り飛ばすような力強さ、低回転域での粘り強さが強化されている。270度クランクが生むクルージング中の鼓動感と併せ、大排気量ツインエンジンのテイストを濃厚に感じさせてくれるだろう。

車体構成もこれまでのクルーザーとは大きく異なる。既存クルーザーは大きく寝かせたフロントフォーク、長いホイールベース、低い重心位置の車体で高い直進安定性を備えている反面、低速域でハンドルが内側に切れ込んだり、ライダーの操作に対する反応が鈍く、市街地や峠道でストレスを感じる場面もある。

画像1: ブランドの威信をかけ登場した「レブル1100」は、シリーズの長兄として伝統に立ち向かう

対してレブル1100はキャスター角やトレール量といったディメンション数値、エンジン搭載位置、223kgという車両重量から、素直なハンドリングを追求していることが見て取れる。レブル250/500と同様、混雑した市街地からタイトターンの続く山道まで、意のままに走れることを重視したということだ。

となるとレブル1100を既存のクルーザーと同じジャンルに入れるには違和感がある。スポーツツアラーやスポーツネイキッドという呼び方になぞらえ、スポーツクルーザーという呼称がしっくりくるのではないだろうか。

画像2: ブランドの威信をかけ登場した「レブル1100」は、シリーズの長兄として伝統に立ち向かう

ともあれ日本で大ヒット中のレブル250、ヨーロッパに支持者が多いレブル500に加え、世界的に注目を集めるレブル1100が登場したことでレブルのブランドは確立した。

ずばり、ライバルはハーレーの屋台骨を支えるスポーツスター1200。アメリカ本土での価格はレブルのほうが安いというから、ゲームチェンジャーとなる可能性あり。伝統と革新、市場に受け入れられるのはどちらか、実に興味深い。

文:太田安治

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