2018年に新シリーズとして発足し、3シーズンが経過した「WESS=ワールドエンデューロスーパーシリーズ」が、2021年から、世界的な2輪スポーツの統括団体であるFIM(国際モーターサイクリズム連盟)の世界選手権として開催されることが決定した。
世界選手権からの離反
WESSは、KTMグループ(Husqvarna Motorcyclesを含む)がFIMエンデューロ世界選手権から離脱する形で、自ら肝いりで立ち上げた新団体だ。世界の頂点を競うエンデューロ世界選手権から、トップチームであるKTMとHusqvarnaのファクトリーチームが撤退したことは、ファンを落胆させるものであると同時に、統括団体としてのFIMにとっても大きな痛手だった。一方のWESS側は、エルズベルグロデオやルーマニアクスなど、Red Bullのメディア力を背景に持つ著名なイベントをシリーズ戦に擁し、エンデューロの実質的な世界一決定戦の構築に邁進する。FIM対WESSの構図は、幾分かWESSを優勢として溝を深めていた。
空白の2020シーズン
これまで、歩み寄りの姿勢を見せていたのは主にFIM側だった。2018年のWESS設立後、まもなくFIM新会長に就任したディエゴ・ヴィエガス氏は、自らも選手、オーガナイザーとして活躍した経験のあるエンデューロ畑の人物。すぐさまKTMグループとの交渉に入っていたが、芳しい結果は得られていなかった。膠着状態が続いたまま、2020年、WESSはCOVID-19の影響でシリーズ不成立、一方のFIMエンデューロ世界選手権(ENDURO GP)は9月まで開幕がずれ込んだものの、全8ラウンドを消化し、KTMグループ不在のまま各クラスで世界チャンピオンを決定した。
一筋の光
しかし事態は急展開。12月になってWESSは、シリーズがFIM傘下に入ることを発表した。WESS代表のウィンフリード氏は次のよう話す。「FIMシリーズとなることで、すべてのライダーは、メーカーによらず中立的な規則とその運用によって平等な環境で競技に参加することができる。同時に、世界で最も高い評価を受けるFIMのタイトルを獲得するチャンスを得る」。KTMグループとRed Bullの支援を背景にした最も人気のあるシリーズ戦に、世界最高峰のタイトルが加わることで、WESSはスポーツ、プロモーションの両面でより大きな存在になる。FIMとしては、業界として最大手で、スポーツの分野でも、KTM、HusqvarnaそしてGASGASと3つのトップチームを擁するオーストリア企業を傘下に呼び戻すことができたという意味で成果と言えるだろう。だが、これによってもっとも救われるのは、WESSに参加してきたトップライダーたちだろう。個々のイベントは著名で、注目も集めているが、チャンピオンの知名度はそれほど大きくないというのがWESSの実情だった。FIMのタイトルは、それを補完するものになると期待される。
2021は8ラウンドを開催
WESSはこれまで、ハードエンデューロを中心にしていながら、オンタイム方式のクラシックエンデューロ、ビーチレースなど、いろいろなレース形態のミクスチュアのシリーズ戦だったが「FIMハードエンデューロ世界選手権」になることで、純粋なハードエンデューロだけで競われることになる。2021年の暫定カレンダーには、ヨーロッパだけではなく、アメリカのTKO(テネシーノックアウト)も含まれている。
FIM Hard Enduro World Championship 2021
暫定カレンダー
R1,5/7-9, Extreme XL Lagares - Portugal
R2, 6/3-6, Red Bull Erzbergrodeo - Austria
R3, 7/10-11, TBD - Italy
R4, 7/27-31, Red Bull Romaniacs - Romania
R5, 8/14-15, Red Bull TKO - USA
R6, 9/18-19, TBD - Poland
R7, 10/1-3, Hixpania Hard Enduro - Spain
R8, 10/29-30, GetzenRodeo - Germany
*TBDの記載はレース名未定