①パワーモードセレクター(PW)
新型『隼』のカラー液晶パネル部分に『PW』で表示されるのがパワーモードセレクター。
スロットルを開けた時のパワーの出方を3段階に調整できます。
資料にあるグラフによると、こういうイメージになってる様子。
モード1は問答無用で怒涛のフルパワーを発揮。モード2は猛然と加速するのをちょっと抑えてフラットで扱いやすく(でも190馬力はきっちり出る)。モード3は最高出力そのものを抑えて、とにかく優しく。
これらのモードが走る場所の路面の状態(路面が荒れてるとか、雨)や気温などに合わせて使い分けることができます。
その他、ライダー的に『今日はなんだか疲れててうまく乗れないな』と感じる時にも役立ちます。ツーリングで疲れを感じた時など、モード2あたりが大活躍するはずです。
②モーショントラック・トラクションコントロール(TC)
コーナーの立ち上がりなどで、スロットルを開けていく状況の中でリアタイヤが滑ってしまった時に、そのスライドを止めてくれるのが一般的なトラクションコントロールの認識でしょうか。
トラコンなんて略されたりします。
一般道の路面は環境がコロコロ変わるものです。砂や砂利が浮いていたり、マンホールや白線も滑りやすい。日陰や日向で路面温度が違うだけでもタイヤは急に滑ったりします。
あとは……気分が良くて調子に乗り過ぎてしまった時も、ですかね?
とにかく、そういうピンチを助けてくれる神システムです。
『TC』の表示がそれにあたります。10段階で介入度を調整可能。
しかもスズキのトラクションコントロールは『モーショントラック トラクションコントロールシステム』というもので、単純に後輪のスライドを止めるだけじゃなく、その時のエンジンの状態から車体の姿勢(バンク角など)までを加味して、最適にスライドをコントロールします。
ここで『スライドを止める』と言わないのは、このシステムが『後輪に最適な駆動力を伝えるため』のものだから。結果的にスライドは抑えられますが、それによってバイクが不安定な挙動を示しては意味がありません。
安定感を損なうことなく後輪のスライドを止める、もしくは最適レベルに調整する。
私(北岡)のように、腕前にそれほど自信が無いライダーには涙が出るほどありがたい……
③アンチリフトコントロール(LF)
先の優秀なトラクションコントロールが、後輪に最大限の駆動力を与えてくれると、困ったことに今度は前輪が路面から離陸しようとしてきます。いわゆるパワーリフト状態。しかもこれ、車体が立っている状態ならまだしも、バンク中にも起こり得るんです。
なので『安定した加速のために』前輪が離陸しないようにするシステムも必要になる。それがアンチリフトコントロールです。
これも10段階の介入度を設定(解除も可能)できます……が!
こいつのお世話になる人は、既に相当な腕前のライダーでしょう。
私の場合、このシステムが作動したら『いやぁ、スロットル開けすぎてアンチリフトが効いちゃってさぁ』と、友達に自慢したくなると思います。でも、その体験ができるかどうかは微妙です。
④エンジンブレーキコントロール(EB)
隼のような大排気量バイクの場合、スロットルを全閉にすると強めのエンジンブレーキが掛かります。
エンジンブレーキはコーナーで車体を安定させるのにも役立ちますが、それが強すぎるとコーナーの進入などでバイクの素直な動きを妨げることもあります。
なので『エンジンブレーキがもうちょっと弱ければ、コーナーのアプローチがスムーズになるのに』と感じた場合などに、電子制御でそれを調整します。3段階で設定、もしくはOFFも可能。
電子制御ってそんなことまでできるの!? って思えるシステムのひとつです。
⑤双方向クイックシフトシステム
発進時はクラッチを使いますが、走行中はクラッチを切らなくてもシフトアップ/シフトダウンができるのが双方向クイックシフトシステムです。
慣れないとついクラッチを握ってしまいますが、1日乗ると、あまりに便利&ラクすぎて大好きになる電子制御のひとつ。
シフトダウンの時の変速ショックもシステムがうまいこと発生させないようにしてくれます。私はGSX-R1000Rでこれを体感しましたが、ぶっちゃけ私より機械のほうがシフトダウンなど上手すぎて完全に白旗でした。
車体をフルバンクさせた状態でのシフトダウンも可能らしいのですが、私はビビッてやったことがありません。やってみたら大丈夫なんでしょうけどね……
①~⑤を『SDMS-α』が一括して管理!
先の5つの各電子制御をまとめているのが『SDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)』となります。
プリセットとしてスズキが設定した『A(アクティブ)モード』『B(ベーシック)モード』『C(コンフォート)モード』の3つは、はじめからインストール済み。
その他にもオーナーが自分だけのオリジナルセッティングを3パターン保存できるようになっていますので、『情熱的に走りたい時モード』とか『疲れている時モード』などなど、プリセットのA・B・Cの他に、自分好みの『隼』を作っておくことができます。
最初は面倒に感じるかもしれませんが、オーナーとして長く乗っていれば自然に答えが出るはずです。
SDMS-αには『スズキの想い』が詰まっている
このシステムは【電子制御スロットル編】の冒頭でお伝えした通り、私としては『速く走るためのものじゃない』と思っています。むしろ、オーナーとして『愛せる隼』を育てるためのシステム。
新型『隼』が、どういうバイクであって欲しいのか。その想いのひとつのカタチがSDMS-αなんです。
その『想い』に関して興味があれば、ぜひこちらの記事から開発ストーリーの動画をご覧ください。
スズキにとっての『隼』がいかなるものか、その片鱗を知ることができると思います!