イタリアのオフロード界の雄、ファンティック社がリリースする「エンデューロ125」は、このクラスでは非常にレアな本格トレールモデル。高級パーツをふんだんに使った、エンデューロレーサーそのものとも言えるクオリティが光る1台だ。
文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸

ファンティック「エンデューロ125」インプレ・解説(太田安治)

FANTIC ENDURO125

総排気量:124.45cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ単気筒
シート高:935mm
車両重量:96kg
メーカー希望小売価格:81万円(税込)

乗るほどに魅入られる、通も唸らす本格派

ファンティックのエンデューロ125の実車を見て、まず感心した。サスペンション、ブレーキをはじめとする足回りからペダルやレバー、グリップといった細かいパーツに至るまで、使われているパーツ全てがハイグレード。コストダウンに配慮した部分がなく、本格エンデューロマシンとして作り込まれていることが強烈に伝わってくる。

125cc単気筒エンジンのパワースペックは発表されていないが、おそらくヨーロッパのA1免許に合わせた15馬力程度。ただ、絞り出した15馬力ではなく、低中回転域パワー重視の特性に仕上げた結果、ピークパワーが15馬力に収まっている印象。低回転域で粘る特性ではないが、車重が96kgと圧倒的に軽いため発進加速は思いのほか鋭く、非力さは全く感じない。

パワー感が濃いのは6000回転から9000回転で、この範囲内でのレスポンスは150~200cc級のエンジンにもひけを取らない鋭さ。適切にギアを選択すれば、ストリートでも小気味よく楽しめる。

フレームはクロモリ鋼のペリメター。見るからにコンペマシン然としたいでたちだが、ハンドルロックやキー付きフューエルキャップなど、実用装備もしっかり備えている。

250ccエンジン搭載車とフレームや足回りを共有するだけに、車体剛性は充分。125cc版には前後17インチタイヤを履いた「モタード」もラインアップされるが、この車体ならハイグリップタイヤを履かせてサーキットを攻め立てても何ら不足はないだろう。

それだけに、ダートを走り始めたときには車体が硬質に感じた。特に20km/h以下のトレッキング的なペースだと、小さなギャップにも敏感に反応する印象だった。しかし、速度が上がって車体に掛かる荷重が高まるにつれ、加減速でのトラクション性能がぐんぐん上がって安定性が増す。

画像: オフロードの名門メーカーが本気で造っただけあって、トレールモデルとは思えぬ迫力。ボディカラーは このホワイトとブラックの2色をラインアップする。

オフロードの名門メーカーが本気で造っただけあって、トレールモデルとは思えぬ迫力。ボディカラーは
このホワイトとブラックの2色をラインアップする。

タンクからシートまでのフラット形状により着座位置も自由自在だ。この足回りの設定は、大きなギャップ越えやジャンプに対応したエンデューロマシンそのもの。僕のスキルでは弱点は見つけられないし、上級ライダーも唸らせるデキだと思う。

ちなみに、今回試走した林道で使ったギアは2~4速だが、林道レベルだと15馬力でも何ら不足はない。アクセルの開け始めにテールがズバッとスライドするようなことはないので安心でき、1万回転以上まで軽く回るから、ギアレシオが合わない状況でのごまかしも効く。このエンデューロ125は、乗れば乗るほど魅入られる1台。税込81万円という価格すら割安に感じられるだろう。

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