文:太田安治/写真:森 浩輔、南 孝幸/モデル:木川田ステラ
ランブレッタ「V125 SPECIAL FIX/FLEX」インプレ・解説(太田安治)
美しいスタイリングと剛性感ある走りが魅力
1970年代にイタリアを代表するスクーターとしてベスパと共に一世を風靡した名門ブランド・ランブレッタ。2017年のミラノショーで電撃復活して以来、現在は50cc、125cc、200ccの3タイプをラインアップ、それぞれ固定フェンダー仕様と可動フェンダー仕様がある。今回の試乗車は125cc可動フェンダーの「FLEX」だ。
まずこのランブレッタ、オーストリアのKISKA(キスカ)デザイン社が手がけたという美しいフォルムが目を惹く。長いボディ後部や角形ヘッドライトは往年のランブレッタを想わせ、新しさとレトロ感を巧みに融合させている。
エンジンは約10馬力の4ストローク単気筒ということもあって、走行性能は穏やかなものかと予想していたが、実際に走り出してみるとなかなかスポーティ。約4000回転という高めの回転で遠心クラッチが繋がり始めるのでスタートダッシュに不満はないし、全開加速では最大トルクを発生する7000回転台を使って力強く速度を乗せていく。
車重が134kgとこのクラスでは重めなので、キビキビ走る、とまでは言わないが、市街地で交通の流れに乗るには充分な動力性能。原付二種の法定速度、60km/hも余裕でクリア、タンデムでも非力さは感じない。
試乗してみて印象的だったのがダイレクト感のあるハンドリング。通常のスクーターはメインフレームが足の下を通っているレイアウトで、乗り降りしやすい反面、剛性を得にくく、フレームが捻れてフロントとリアがバラバラに動くネガ要素もある。
一方、このランブレッタはプレス成形のスチール鋼板とパイプフレームを組み合わせたモノコック構造で、高い捻れ剛性と曲げ剛性を確保。ブレーキを握ったまま寝かし込んでも不安な挙動は出ず、意地悪くクイックに切り返してみても捻れによる揺り戻しが来ない。
前後12インチの小径ホイールゆえ、大きめの段差ではさすがにバタ付くものの、すぐに収束するので不安はない。想像しにくいかもしれないが、乗り味はスクーターというより、まるでロードスポーツのようなフィーリング。ヨーロッパには石畳の道も多いが、この操縦性なら安心して走れるはずだ。なお、125は前後連動ブレーキを採用してストッピングパワーも充分。ドライ路面ではABSの必要性も感じなかった。
優美なスタイリングと高い所有感、スポーティなハンドリング、充実装備と、注目ポイントはいっぱい。ランブレッタには他車にはない個性が光っている。