ユニークな機構を備えたミドルクラスのクロスオーバー、NC750Xの新型が2021年2月に発売された。スタイリングを一新してエンジンを熟成、フレームも一新したという気合の入ったフルモデルチェンジ、果たしてその走りはどう変わったのか。試乗テストレポートをお送りする。
文:太田安治、木川田ステラ、オートバイ編集部/写真:南 孝幸

ホンダ「NC750X DCT」インプレ・解説(太田安治)

Honda NC750X Dual Clutch Transmission

総排気量:745cc
エンジン形式:水冷4ストOHC4バルブ直列2気筒
シート高:800mm
車両重量:224kg

メーカー希望小売価格:税込99万円
発売日:2021年2月25日

たゆまぬ熟成を重ねて爽快なツアラーに進化

2012年にデビューしたNC700Xの第一印象は、「素晴らしく扱いやすいが操る楽しさは薄い」というものだった。オートバイに爽快さを求める僕にとって、長旅でも疲れないキャラクターが逆に退屈に感じられたのだ。

しかし、2014年の750cc化、2016年のマイナーチェンジでNCのスポーツ性は着実に高まり、今回のフルモデルチェンジでエンジン特性、ハンドリング共に「爽快」さを感じさせる正統派ツアラーへと進化した。

画像1: ホンダ「NC750X DCT」インプレ・解説(太田安治)

もともと低中回転域での扱いやすさを重視したエンジンだけに、DCTとの相性は抜群。発進加速も大幅に力強くなった。4つのライディングモードのうち、「スタンダード」は3000回転ほどで自動的にシフトアップ。

6速・100km/h時は約3200回転で、振動もなく両足の間でコロコロと回っているような軽いフィーリングだ。「スポーツ」は4000回転以上まで引っ張ってシフトアップ。

2速に入るときは少しショックと作動音があるが、3速以上は実に滑らかにシフトチェンジを行ってくれる。DCTをMTモードにして高回転まで回し込んだ際の加速フィーリングも軽やか。レブリミッター作動回転数も7000回転まで引き上げられたため、初期モデルのようにいきなり加速が止まる不自然さも解消された。

意外だったのは「レイン」モードの好感触。スロットルレスポンスが穏やかになり、加えてスタンダードモードよりも低い回転、つまり早め早めにシフトアップをするので、他のモードよりも2気筒エンジンの鼓動感と力強い排気音を長く楽しめる。

レインモードと聞くとウエット路面専用に感じるが、クルージングモードと捉えてもいいと思う。

画像2: ホンダ「NC750X DCT」インプレ・解説(太田安治)

アドベンチャー的なルックスだが、乗り味はロードスポーツ。直進安定性重視のハンドリングで、旋回中はフロントタイヤが想定ラインよりも外側を通るアンダーステア感はあるものの、フロントタイヤの接地状態がしっかり伝わってくるから深いバンク角でも不安はなく、ワインディングロードを駆け抜けるアベレージ速度も想像以上に速い。

NCの大きな特長であるラゲッジボックスは23Lに拡大され、ETC2.0とグリップヒーターも標準装備。シート高は800mmに抑えられ、ハンドル切れ角も35度と充分。DCT仕様で99万円という価格も装備内容を考えれば素直に納得できるもの。旅の相棒として実に従順で頼もしい存在だ。

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