ホンダCB900F欧州仕様の誕生背景
欧州を販売の重点地域として開発されたCB900F
1969年に発売されたCB750フォアを端緒とする大型バイク市場は、他社が同クラスのモデルを投入することで競争状態となったが、ホンダは同機種に改良を加えたり水平対向4気筒のGL1000を登場させるなどで対抗。アメリカではそれらモデルが受け入れられマーケットシェアを確保できた。
しかし欧州では事情が違った。その理由のひとつに、当時のホンダが行っていたバイクの開発手法が挙げられる。
新作車のアイディアを練る際は主に北米市場を意識して仕様が決められ、これらを基にハンドルやステップを改めて乗車姿勢を変更。塗色を変えて欧州のライダーが好むように仕上げていた。
だが、こうした車両造りは次第に通用しなくなり、1970年代中盤のヨーロッパにおける販売成績は非常に苦しいものとなっていった。
こうした状況を打破するべく欧州の2輪市場を強く刺激するモデルの開発を迫られ、その結果、誕生した旗艦機種が並列6気筒を積むCBX、最高の性能を誇るスーパースポーツがCB900Fだった。
CB900Fがまず1978年末に欧州に送られ、続いて排気量を下げた750が1979年に北米や日本、1980年には欧州で販売を開始。さらに、1981年から北米市場にもCB900Fが出荷されたというCB-Fが歩んできた道程を理解することができよう。
ホンダCB900FZ(1979)欧州仕様
欧州で販売されたCB900Fの最初期モデルは1979年型FZだ。上の写真のように赤基調に青ラインを組み合わせた車体色(ボルドールカラーと呼ばれた)は900専用カラーだったが、日本仕様FZも台数限定で採用した。
空冷DOHC4バルブ並列4気筒は、750に対してボアを2.5mm大きく、ストロークを7mm伸ばした64.5×69mmの内径×行程から、+153.1ccとなる901.8ccの排気量を得た。
ヨーロッパの多くの販売エリアにて最高出力:95PS/9000rpm、最大トルク:7.9kg-m/8000rpmを公称したが、欧州一般仕様のみ同回転数で91PS/7.7kg-mをカタログに記載した。
ホンダCB900FA(1980)欧州仕様
2年目となる1980年型FAで、1981年モデルとして登場した日本仕様CB750FBに導入される装備の一部を先んじて盛り込んでいる。
スポークを反転させてブラック仕上げ塗装とした裏コムスターや、エア加圧式に改めたΦ35mm正立式フロントフォークなどだ。サイドカバーにある車名の下に“BOL D'OR”のロゴが確認できるが、この仕様とした車両を販売した地域が存在する。
ホンダCB900FB(1981)欧州仕様
初代から3年後となる1981年型FBは、前後のピンスライド片押し式ブレーキキャリパーが持つピストンを1→2個に増やすとともに、前後ディスクを長円形の穴が並ぶタイプに換装。
フロントフェンダーの中間部よりやや後方に、オイルクーラーに走行風を導く羽状の突起を与えるなど仕様の見直しを実施。
これらは日本仕様の同年式モデル、CB750FBに通じる変更だったが、エア加圧式フロントフォークのインナーチューブをΦ35→37mmへと大径化するなど、欧州向けモデルならではの改良も受けた。
CB900FZ/FA/FB欧州仕様の主なスペック
《 》内は仕向地による違い
全長×全幅×全高 | 2240《2260》×795×1125mm |
ホイールベース | 1515mm |
最低地上高 | 150mm |
シート高 | 815mm |
車両重量(乾燥) | 232kg |
エンジン形式 | 空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 |
総排気量 | 901.8cc |
ボア×ストローク | 64.5×69.0mm |
圧縮比 | 8.8 |
最高出力 | 95PS・《91PS》/9000rpm |
最大トルク | 7.9kgf・m《7.7kgf・m》/8000rpm |
燃料タンク容量 | 20L |
変速機形式 | 5速リターン |
キャスター角 | 27゜ 30' |
トレール量 | 115mm |
タイヤサイズ(前・後) | 3.25V19・4.00V18 |
ブレーキ形式(前・後) | Φ276mmダブルディスク・Φ296mmシングルディスク |