日本が誇る二輪車メーカー4社は世界各地で高い評価を得ている。そして日本市場では正規販売されていない機種が海外では数多く展開されてもいる。この連載では、そんな海外限定ともいえるモデルをフィーチャー。今回はスズキがインドで2021年現在販売している「イントルーダー」だ。

クルーザーモデルの伝統ブランド「イントルーダー」はインドで今、個性を放つ

オートバイやスクーターですら世界規模で販売されるグローバルモデルが全盛の現在、世界第2位の人口を背景にした巨大な単一市場というバックボーンを持つインドは、最後のローカルモデル天国であり続けている。ということで、またもやインドで販売されているちょっと気になるバイク、「イントルーダー」について触れてみたい。
※便宜上、以下の本文中ではインドで販売されるこのイントルーダーを「イントルーダー150」と呼んで進めます。

SUZUKI INTRUDER 
インド仕様車
総排気量:155cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC単気筒
シート高:740mm
車両重量:152kg

写真のカラーは、メタリックマットチタニウムシルバー

イントルーダーといえばスズキのクルーザー。古くは1985年、水冷Vツインを搭載したVS700GLイントルーダーからはじまり、基本的にはオーソドックスなクルーザーとして発展。大は強力な1800ccDOHC水冷V4搭載のイントルーダーC1800Rから、小は125ccの空冷Vツインを積んだイントルーダー125まで、30年を超える歴史の中で、さまざまなスタイル、エンジン、排気量のモデルが存在した。しかし、そんな過去のイントルーダーの系譜とは全く関係のないところで、イントルーダー150は唐突に誕生する。

画像: 写真は、国内で2013年に発売されていたイントルーダークラシック400

写真は、国内で2013年に発売されていたイントルーダークラシック400

特に150ccクラスの人気が高いインド市場で、存在感の強いライトクルーザーが求められた結果、2017年末に「INDIA'S MODERN CRUISER」のキャッチフレーズと共に、イントルーダー150は発売されたのだ。

その車体のディメンションやポジション設定は、前後17インチホイールだったり、シート高が740mmとクルーザーとしては高かったりと純粋なクルーザーとは大きくかけ離れていて、普通のバイクをクルーザー寄りにしたという雰囲気。そしてスタイルも、かつてのイントルーダーたちのようなクラシッククルーザーとは完全に別世界のものだった。

カラー:グラススパークルブラック×キャンディソノマレッド

カバー付きの異形ヘッドライトが目立つフロントマスク、大きく複雑な形状のタンク周りの造形、ややクラシカルなシート形状、単気筒なのに2本出しの存在感のあるマフラーなど、アクが強いというか、個性的というか、どぎついほどに見るものの目を惹く強烈な存在感を放っている。発売から丸3年半を経てそのままデザインに手を加えることなく販売が続いているところを見ると、そういうデザインがインドで求められているということだろう。

ディテールを観察すると、ハイパーネイキッドのB-KINGとか、パフォーマンスクルーザーのブルバードシリーズとか、超ローダウンスタイルのスクーター・ジェンマとか、ちょっと前のスズキの個性的なモデルたちの面影をあちこちに見いだすことができるし、それらを巧みに再構成したデザインだとは思う。

カラー:グラススパークルブラック×メタリックマットチタニウムシルバー

エンジンは、日本でも販売されているロードスポーツ・ジクサー150の155cc空冷シングルがほぼそのまま搭載されている。ホイールも同じキャストホイールでタイヤのサイズもジクサーと共通。前後ディスクブレーキはバイブレ製、フロント正立フォークにリアサスはモノショック…これ、主要なメカニズムはジクサー150のままだ! さすがにシートレールあたりは違ってそうだけど。インドの道路環境での実用性を考えると、低くて長くて重たい伝統的クルーザーよりも、軽快なジクサー150に準じたこの構成が最適ということなのだろう。

画像: 写真は、ジクサー150(国内2021年モデル)

写真は、ジクサー150(国内2021年モデル)

ベストセラーのジクサー150とコンポーネンツの共通化を進めたことで、量産効果も上がって価格も抑えられるのもメリットだ。現地価格(デリーでの価格・インドは地域によって価格が変動する)を見ると、ジクサー150の11万6700ルピー(約17万5000円)に対し、イントルーダー150は12万4400ルピー(約18万6000円)。丸々専用の外装パーツを使っていることを思えば安いといえそうだ。

イントルーダー150がインドで具体的にどれくらい売れているのか知らないけれど、なにせインドの市場規模だから、現在日本で販売されている大抵のオートバイより販売台数は多いと思われる。だからこそジクサーと差別化を図るために、街で見たら二度見するくらいの強烈な「あのスタイル」が必要だった、ということなんじゃないかと思えてくる。

文:小松信夫

画像: 【動画】Suzuki Intruder | BS-6 | 2020 www.youtube.com

【動画】Suzuki Intruder | BS-6 | 2020

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