以下、文・写真:三橋 淳
目指すは雲上のランプの宿……しかし雲行きが怪しい
あれだけ天気が良かったのに、みるみる雲が湧き出てきて、今にも雨が降り出しそうな空模様。ただし、幸運なことに目指す山の頂上が、こちらから見える。
「もしかして天気最後までもつんじゃないですか?」
「もつといいですねぇ!」
目指すは長野県小諸市、標高2000mにある高峰温泉。秘湯マニアの中では人気の宿で、ランプの宿としても有名だ。それも林道の途中にあるという激レアな存在の宿なのだ。
「三橋さん! 宿の前に林道があるんですよ」
「知ってます」
「あれ明日走りましょうよ」
「いや、今から走りますよ」
「往復するんですか?」
「違います。裏から回って林道走って宿に行きましょう」
「言ってる意味がわかりません!」
「いいからついてくればいいんです!」
この高峰温泉は、浅間山の西に東西に走る林道の途中にある。メインは東側の入り口にあるアサマ2000のスキー場入り口から入るのが有名。でもその反対側の湯の丸スキー場からもアプローチできるのだ。
何せUターンが嫌いな男、一度行った道を引き返すなど、そんなルート取りは絶対に許せないワタクシとしましては、裏から回って林道抜けてゴールとしたいのです。その方が林道の距離も長いし、走り切った後に宿に着くなんて、最高じゃないですか。
しかし山に登るワインディングロードを目指す途中でぽつりぽつりよ雨が。不本意だがレインウエアを着用。それにしてもどうしてレインウエアはこうも着るのが嫌なのか? 最後まで粘りたかったが、ずぶ濡れになるよりはマシなんだが。
「そういえばおそらくこのコンビニが最後ですけど、なんか買いますか? 山の上だから何にもないですよ」
「レインウエア着ちゃったからもう面倒臭いです」
「そのまま行きましょう」
幸か不幸か雨はひどくならず、むしろ高度を上げていくと止んでしまった。これはラッキー! と湯の丸スキー場まで登り、そこからいざ林道へ。初めのうちはアスファルトだが、ゲレンデを過ぎたあたりからいよいよ林道が始まった。が、ここにきて一気に気温が降下。レインウエア着てたからさほど寒くないけど、これ相当寒い!
「なんか降ってきましたよ」
「白い!」
「雪だ! ん? ヒョウか?!」
雪ともヒョウとも見分けがつかないけれど、とにかく寒いのだけはよくわかる! ガスってはいないので山は見えるが、荒涼ととした景色がいっそう寒さを誘う。
「なんか吹雪いてきましたね」「もうね、かなり寒い!」なんて言っているうちにみるみる路面に積り出してきた。
「これ、明日降りられないんじゃないの?」
「雪の中ワイディング降りるのいやですねー」
「降りるだけならどうとでもなりますよ」
「それってどういう?」
「だって登りだと滑って登れないけど、下りだったら滑ってもおりますよ」
「いやいや、それ転ぶってことでしょ?」
「降りられるかどうかの話なんで、無事かどうかは知りません」
「えー!」
そんな猛吹雪の中、辿り着いたの高峰温泉! 実はこの林道は何度も走ったことがあるのだけれど、泊まるのは初めて。ちょっとワクワクである。
標高2000m! 高峰温泉のおもてなし
バイクと止めていると宿の方が来て、バイクにカバーかけてくれるというし、スタンドが地面に沈み込まないように板を持ってきてくれた。なんて優しいんだ!
雪とはいえ全身ずぶ濡れになったレインウエアを脱いで中に入ると、外が吹雪であることを忘れるくらいの暖かさ。さっそく部屋に通される。
基本この宿は山小屋のジャンルになるのだけれど、部屋はこじんまりとしているが綺麗だし、それに各部屋トイレがついている! それもウォシュレットが!
「三橋さん、ここはね、お風呂がいいんですよ、野天風呂なんですよ。露天風呂じゃないんですよ」
野天と露天の何が違うのか? 辞書で調べれば意味は同じだった。でも調べると業界の区分けでは露天風呂の中でも、自然の中にある野生的なものを野天風呂というらしい。
で、行ってみると確かにすごい! 森の中にポツンと湯船! これは人気が出るのも納得です。
その後食堂で出されたご飯がこれまた美味しい!
山小屋のジャンルだし、さして期待はしていなかったのだけれど、大満足。
あ、ちなみにランプの宿と言われているけれども、部屋にあるランプは流石に電球でした。