ヤマハ「FZ-X」の特徴
XSR風ネオレトロスタイル+FZ-FIのメカニズム=「FZ-X」
ヤマハ・モーター・インディアが今年、「Ride Free」をキャッチフレーズにインド国内向けに投入した150ccクラスのニューモデル、それが「FZ-X」だ。
かつて日本などで販売されていた、750cc5バルブ水冷直4エンジンを搭載したクルーザー風のスポーツモデル・FZX750との関連はない。
この連載でも、ホンダのCB150RストリートファイアやスープラGT-R150、スズキのイントルーダー150などを紹介してきた。
そこからも分かるように、東南アジアのスポーツバイク市場の中心は150ccクラス。バイクに乗る若者の人口が非常に多いインドでも、御多分に洩れず150ccクラスは大人気。ヤマハも水冷エンジンを搭載するMTシリーズのMT-15をはじめ、同じく水冷エンジンを積むスーパースポーツのYZF-R15、そして空冷エンジンを搭載したモダンでベーシックなネイキッドであるFZS/FZ-FIシリーズを用意してきた。
そのラインナップを補強するために開発された「FZ-X」は、これまでインド向けには存在していなかった、ネオレトロスタイルのいわゆる「ヘリテイジスポーツ」という位置付け。一目見れば分かるように、そのスタイリングは日本でも販売されているXSR900を想わせる。
フォークブーツやゆったりとしたタックロールシートが目立つレトロなフォルムに、LEDヘッドライトなどの現代的なディテールを融合させた、強い存在感のあるデザインだ。
XSRシリーズにはすでにXSR125と、その排気量拡大版のXSR155が存在している。ならインドでもそのまま販売すればいいようにも思えるが、XSR155はMT-15と、可変バルブ機構・VVAを採用するパワフルな水冷エンジンやデルタボックスフレームなど、メカニズムの基本的な部分が共通。そもそもネイキッドという点でもキャラクターが被っている。
さらにスポーティさを重視した造りで価格的にもやや高い。そこでインドの市場の要求に合わせて、価格をMT-15の8割程度に抑え、扱いやすい性格とされた「FZ-X」が開発されたようだ。
この「FZ-X」のベースとなっているのは、兄貴分であるFZ25と共にインドでは人気の定番モデルとなっているFZS-FI/FZ-FI。その定評のあるメカニズムを活かしながら、外装デザインを変更してイメージを一新したのが「FZ-X」ということになる。
149ccのOHC2バルブ空冷単気筒エンジンは、ヤマハ最新の技術を盛り込んで開発された高効率なブルーコアエンジン。最高出力は18.5PSのMT-15には劣るものの、12.4PSと十分にパワフルで粘り強い特性を備え、インド独自の排ガス規制・BS6もクリア。
また、シングルチャンネルABSを組み合わせたフロントディスクブレーキも装備。正立フロントフォークはインナーチューブ径φ41mm、7段階にプリロードを調整できるリアサスなど、車体もしっかりとした造り。
さらに機能面も充実している。メーターは反転液晶パネルを使ったコンパクトな多機能タイプ、電源ソケットも標準装備。ヘッドライトだけでなくテールランプもウインカーもLED。スマートフォンとBluetooth接続し、着信/メール通知、駐車場案内やメンテナンス時期通知などの情報も伝えてくれる「Y-コネクト」対応モデルを用意し、「FZ-X」のターゲットである若いライダーへもアピールしている。
文:小松信夫
ヤマハ「FZ-X」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2020×785×1115mm |
ホイールベース | 1330mm |
シート高 | 810mm |
車両重量 | 139kg |
エンジン形式 | 空冷4ストOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 149cc |
ボア×ストローク | 57.3×57.9mm |
圧縮比 | 9.6 |
最高出力 | 12.4PS/7250rpm |
最大トルク | 1.4kgf-m/5500rpm |
燃料タンク容量 | 10L |
変速機形式 | 5速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 100/80-17・140/60R17 |
ブレーキ形式(前・後) | φ282mmディスク・φ220mmディスク |