宮崎敬一郎さんが推す2021年の現行モデルとは?
【宮崎敬一郎さんが選んだバイク】
第1位:カワサキ「Z H2 SE」
第2位:ヤマハ「テネレ700」
大事なのはライダーをその気にさせる「魔性」
去年から今年にかけて、国産車では主に大型バイクとしか接していないので、400ccや250ccクラスのマシンは納得いくまで走り込んでいない。唯一、Ninja ZX-25Rの直4は衝撃的だったが、それを活かした「何か」を実感できなかったのが寂しかった。
カワサキの話を出したのは、今回選んだバイクが同じカワサキのZ H2 SEだから。このバイクは近年まれに見る暴れん坊だが、ライダーにテクと経験があればそれを愉しむことも可能…という魔性のバイクだ。
見事なトータルバランスや、扱いやすさを備えた優等生ではない。だが、決してデキが悪いのではなく、伝統的な「カワサキらしさ」を絵に描いたような、男臭い暴れん坊な一面を潜ませているのが魅力なのだ。
SEではないスタンダードもそうだが、過給器付きエンジンという特殊な「色気」はホンモノだ。普通に理性を持って操れば、快適で軽快なスポーツネイキッド。そんな使い方なら誰にでも操れる。ただ、ひとたびコレのパワーをフルに使ってみようとすれば話は変わる。
たぶん、H2シリーズ以外はどんなバイクでも味わえない、爆発的な瞬発力を発揮する。中でも、フロントが軽いZは力を誇示した時の表情が凶悪。コーナーの立ち上がりなんてパワーリフトさせないようにするのが難しいし、コーナリング中でもリフトしかねない。スライドすることだってある。
SEは、そんなZ H2に電制サスを加えたことで、よりスポーティな走りに対応できて快適になった。価格は少し上がったが、まだSSよりは安い。しかも、Z H2の高性能は絵に描いた餅じゃなくて、喰える餅だ。
よくまぁ、こんなバイクを世に出したな、と感心しつつ、その色気にメロメロになりながら一票…といったところだ。
もうひとつ、Z H2とは極端に違うが、ヤマハのテネレ700もすばらしい。
大型アドベンチャーとしては珍しく、電制ライディングアシスト群に頼らず、オフでの扱いやすさ、高い走破性、オンでの快適性、納得できる動力性能と機動力を全部備えている。このジャンルの優秀なデュアルパーパスとしては破格のロープライスも魅力。
使い勝手の良さは、アドベンチャー界の「セロー」といったイメージ。体格さえマッチすれば、まさしく「大きなセロー」として使うこともできそう。こんなビッグオフはなかった。
という理由で、この二台を選んでみた。
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※この記事は月刊『オートバイ』2021年7月号の特集から一部抜粋し、再構成して掲載しています。当特集のスタッフ まとめ:オートバイ編集部/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸、森 浩輔