文:山口銀次郎、小松信夫/写真:松川忍
BMW「R18クラシック」インプレ・解説(山口銀次郎)
類を見ない、桁外れのクルージング性能
BMW最大となる、1801ccのフラットツインエンジンを抱えデビューを果たしたR18は、クラシカルな印象を与える車体構成だが、最新でチャレンジングなアイディアが満載されていることで注目を集めているクルーザーとなっている。そんなR18のバリエーションモデルとして用意されたのが、このR18クラシックだ。
シンプルでベーシックなスタンダードタイプのR18に対し、クルーザーとして求められる機能をアップデートしバランスさせたモデルがR18クラシックといえる。
快適性を大幅に向上させ、航続距離を伸ばすことを可能にするウインドスクリーンや、宿泊を伴うトリップでの荷物を搭載することができる左右のサドルバッグなどを標準装備しているポイントが特徴となるだろう。まず、先鋭的かつ強烈なキャラクターに仕立てられたR18クラシックの乗り心地と、クルージング性能について触れたいと思う。
低く長い車体構成は、これまでのクルーザーモデルの中でも抜きんでるインパクトを与えるが、いざ跨り乗車姿勢をとると、シート高の低さからくる極端なほどの足着き性の良さをとてもフレンドリーに感じてしまった。
ダイナミックなキャラクターだが、すんなり馴染めるのもクルーザーならではかもしれない。ゆったりと自由度のある足載せを可能にするフットボードは、バータイプのステップと異なり足を出す際に邪魔になりがちだが、フットボード自体の適度なシェイプと絶妙な配置で、抵抗を感じることは一切なかった。
低くマウントされたエンジンは低重心化を果たすが、左右に張り出したシリンダー&シリンダーヘッドの存在感は大きく、停車時に左右に振ると、張り出した部分に重量物があるかの様な重量感が確かにある。これは、サイドスタンドで深く倒れ込んだ車体を起こす時などに感じることになるだろう。
ただし、それは停車時のみの重量感であり、一旦走り出してしまえば他には類を見ないフラットツインならではの低重心により、路面に吸い着き滑るようなフィーリングを味わうことができるだろう。
また、通常のスポーツモデルと比べるとストレッチリムジンを思わせるほどのロングホイールベースは、低重心化と合わせ抜群の直進安定性を生む。そのドッシリと落ち着き払った群を抜く直進安定性は、クルーザーを超えた存在を思わせる仕上がりに。
R18クラシックのフロントタイヤは、ベーシックモデルの19インチに比べ小径となる16インチのファットタイヤを採用し、見た目に重厚感が増しているようにみえるが、ハンドリングに影響がないどころかタイトなターンをものともしない軽快さを提供する。思わぬ軽快な身の翻しっぷりは、狭い日本の道路事情もドンとこい! といったところ。
強烈な見た目のインパクトを生む巨大なボクサーエンジン、ロー&ロングの車体、艶やかでディープな外装、それら全てをひとつにまとめ上げるエンジンパワーの演出&特性が秀逸である。滑らかで太いトルク、そして心地良いパルス感、それらの出力特性&演出はR18クラシック然り近年のクルーザーに求められる重要なファクターといえる。
ただし、BMWならではの大排気量ボクサーツインが生むジャイロ効果(姿勢を維持しようとする)が、速度を選ばず発揮されているのが他のクルーザーとの違いであり最大の特徴といえる。
ロー&ロングの車体構成が生む直進安定性だけではなく、エンジンが回り続けているだけで発生する強力なジャイロ効果が加わることで、新時代のクルーザーとしての価値を飛躍させたといえよう。