文:小松信夫
世界的に見れば「XR」は、旧モデルの名称ではない
現在ホンダのオフロードモデルは、多くの国でナンバー付きの街乗り用モデルをはじめ、モトクロスやエンデューロ向けのコンペモデル、ファンバイクまでを含めた市販車、さらにダカールラリー用のワークスマシンまで〝CRF〟という車名になっている。
よく考えたらあんな大きなアドベンチャーツアラー、アフリカツインだってCRF1100Lだ。ついこの間までホンダの4ストオフロードモデルは〝XR〟だったような気がしてて、「アフリカツイン? XRVだろ」とかいう浦島ライダーには、肩身の狭い時代になったなぁ。でも世界を見渡すと、まだまだXRは現役なのです。
そんな現行モデルなXRたちには、前回のヤマハAG200のように長年作り続けられてるモデルもあります。例えばRFVCヘッドの空冷シングルを積んだビッグオフ、XR650Lは今でもアメリカでは売られてますが、そのルーツを辿ると80年代半ば。現行モデルのスタイルも90年代くらいから変わってないような感じですな。
そんな生きる化石パターンではなく、一から新しく誕生するXRもあるようで。そんな例のひとつがXR190Lという訳です(車名は国によってはXR190とも)。このモデルはオーストラリアとかニュージーランド、中南米、東南アジア、アフリカあたりで販売されてます。この販売地域を見て、なんかもう想像が付くと思いますが、XR190LもAG200と同じく「農業バイク」なんですよ。
フロントマスクとか、タンクやシュラウド、サイドカバーのデザインとか、スタイルは先代のCRF250Lに似てて、結構今時のオフ車してます。前後キャリアを装着、フロントフェンダーに大きなマットガードろ、農業バイク感強し。AGも装備してたクラッチロックも付いている。
エンジンはこの手の用途に合わせて、シンプルで壊れそうもなく、粘り強い特性の空冷単気筒。ボア61mm、ストローク63.1mmとややロングストロークで排気量は184.4cc。PGM-FI仕様で、パワーが公表されてるネパール仕様では最高出力15.6HP。始動はセル・キック併用。ボア×ストロークから見て、インドで売ってるロードスポーツ・ホーネット2.0と同じ系列のエンジンのようで。
ホイールサイズはフロント21インチ、リア18インチ。仕向け地によってはフロント19インチ、リア17インチ仕様も存在。正立フロントフォークはアクスルトラベル量161mm、リアはモノサスでこちらのトラベル量は151mm。最低地上高は237mmを確保してて、オフロードでの走破性は結構高そう。
ブレーキもフロントはディスクだし、メカニズム的には手抜きなしのガチのオフロード車ねコレ。農業バイクとはいっても、なかなか楽しそうな感じ。ファンバイクとして、カワサキKLX230とかといい勝負かも?
ライバルであるAG200のシーラカンスぶりからすると、とても現代的な作りのXR190L。価格じゃなくて、ホンダは性能で世界の農業バイク市場で戦おうとしてるのか?
しかし、両車が販売されてるオーストラリアでの価格を比較すると愕然とする。ホームページを見ると、XR190Lが5298〜5599豪州ドル(幅を持って表記されてる)なのに対し、AG200は5949豪州ドル! 実売価格はともかく、少なくともオーストラリアでの定価はXR190Lの方がかなり安い。幅を大きく見ると約650豪ドル差、最新のレートで約5万3000円も違う! これはホンダが世界の農業バイク市場制覇を狙う世界戦略車ってことか…多分違うんだろうな。
文:小松信夫
ホンダXR190L(オーストラリア仕様)の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2103×842×1127mm |
ホイールベース | 1369mm |
シート高 | 823mm |
車両重量 | 137kg |
エンジン形式 | 空冷4スト単気筒 |
総排気量 | 184cc |
ボア×ストローク | 61×63.1mm |
圧縮比 | 9.5 |
燃料タンク容量 | 12L |
変速機形式 | 5速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 2.75-21・110/90-18 |
ブレーキ形式(前・後) | ディスク・ドラム |